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リリアナ王女とアマリーの対決

 リリアナ王女が竜に咥えられた話は瞬く間に広がったが、同時にピッチィが竜珠を光らせた話もあっという間に広がり、南ノ国の人々は彼女を好奇の目で見た。

 野原から戻るなりエルベ城の医務室に運びこまれたアマリーは、幸いたいした怪我もなく、周囲をーー取り分け国王を安堵させた。


 祝典のために南を訪れていた二人の王女のうち、自国へと帰るために先にエルベ城を発ったのは、西ノ国のリリアナ王女の一行だった。

 南ノ国からのたくさんの贈り物を馬車に積み、行きの道中で痛い目にあった彼らはその時よりも多くの兵たちを引き連れ、帰国に挑んだ。

 エルベ城の正面玄関には見送りに来てくれた人々で溢れ、賑やかだった。

 前日に泣き過ぎてまだ腫れが残る残念な顔で、アマリーは馬車まで歩いた。

 オデンと歩く彼女の少し後ろにジュールとエヴァがいた。

 ジュールは硬い表情のままだった。


「お元気で」


 それは酷く簡素な別れの台詞だった。

 ジュールの隣に立っていたエヴァは、ぎこちなく笑みを浮かべて挨拶をしてくれた。


「中ノ国にもいつか遊びにいらして」

「ありがとう。エヴァ様」


 社交辞令かもしれないが、エヴァの挨拶の方が記憶に残るものだった。

 エヴァは突然ジュールのアマリーに対する態度が冷たくなったことに気づき、その隙を逃してなるものかと、ジュールの腕に自分の手を絡め、甘えるように立っていた。

 並んで立つその姿にアマリーは傷ついたが、最早引き下がるしかない立場であることを十分認識していた。

 馬車の扉が閉まる音を聞いた瞬間、アマリーはジュールと自分の関係は全て終わったと思った。歓声の中、アマリーはただ西ノ国に帰ることだけを考え、己を保った。




 西ノ国の王都までの道中を、どう過ごしたかをアマリーは殆ど覚えていなかった。

 上の空で馬車に揺られていたように思う。

 リリアナ王女を演じるならば、この時の彼女こそが最も本物の王女に近かっただろう。

 何かあったに違いない、とカーラは感じ取ってはいたが、敢えて自分からは尋ねなかった。アマリーが話したい時が来たらそうすれば良い。その時が来なければそれまでで、一線を画すことは侍女と主人の立ち位置だと理解していた。





「よく戻った!! お帰り、リリアナ!」


 西ノ国の王宮に帰着すると、国王自ら馬車停めの前に立ち、アマリーを出迎えた。

 一行が王宮に入るなり、国王や重臣たちの前で簡易な報告が行われた。この場でオデンは南ノ国の王都へのお誘いを辞退した決断について、イリア王太子による叱責を受けた。

 正式な帰国報告はオデンが後日に行うことになっていたため、アマリーはその場で添え物のように傍にいるだけだった。


 先に王宮を後にするオデンにアマリーは廊下で追いすがり、気になっていたことを尋ねた。


「オデン、貴方はーージェヴォールの森で私を襲ったのが、近衛騎士のアーネストだと知っていたの?」


 オデンは目尻を下げ、少し情けない顔になった。


「申し訳ありません。兵から聞き、知っておりました」

「ーー私は、扇子を千本も持っていたかしら……?」


 ふっ、とオデンは顔を綻ばせた。


「お持ちではないでしょうね」


 しばし二人の間を沈黙が流れる。

 本当に聞きたいことは扇子の数などではない。だが核心に触れる勇気がアマリーにはなかった。

 アマリーは言いにくそうに口を開いた。


「オデン、貴方は私が、」

「私は、貴女が大好きになりましたよ」


 えっ、と目を丸くするアマリーの前で、オデンは子供のような無邪気な笑顔を披露した。そうして彼はすぐに頭を下げ、顔を上げるとそのままアマリーの前を立ち去って行った。

 足を庇うぎこちないその後ろ姿を見つめながら、アマリーは思った。

 オデンは途中でアマリーが本物のリリアナではない、と気がついていたのかもしれない。



 オデンと別れるとアマリーは国王とイリア王太子の前に呼ばれた。

 狭いその部屋は、王族が私的に使う一室で、薄い緑地に白い小花と葉のついた小枝模様の壁紙が落ち着いた雰囲気を醸し出してはいたが、アマリーは緊張と気詰まりでいっぱいだった。

 国王たちは西ノ国を発ってから、南ノ国で起きたこと一切合切を聞きたがり、事細かに報告するのは容易ではなかった。アマリーが話す全てを部屋の隅の席についた速記官が記録しており、後にリリアナ王女に手渡されるのだろうと思われた。


 とりわけアーネストによる襲撃事件については微に入り細に入り質問をされたが、逆にアマリーが尋ねる権利はないようだった。

 話がマチューの入手したデッサン画に及ぶと、国王たちは青ざめたが、どうやら事なきを得たらしいと知るや、大仰に胸を撫で下ろしていた。

 捜査の過程で国王はリリアナとアーネストの関係を既に知っていたが、絵の緻密な描写をアマリーが敢えて伝えると大層なショックを受けたようで、葬儀の最中のような暗い表情を浮かべていた。

 アマリーは滞在中に経験した全てを話したが、最後の一日、ピッチィが竜珠を光らせてからジュールとの間に起きた出来事は、何も話さなかった。

 その為西ノ国はリリアナ王女が南ノ国の王太子に気に入られたと信じた。

 報酬の一億バレンはすぐに支払われることになったが、それが二億になることはないだろうとアマリーは既に分かっていた。……ジュールをあれほど怒らせてしまったのだから。

 ただ一つ国王にとって完全に計算外だったのは、アマリーが王太子とあまりに頻繁に接触してしまった点だった。




 アマリーが西ノ国の王宮に戻ったその夜。

 二人の女性がひっそりと使用人用の入り口から王宮へと足を踏み入れた。

 滑るような足取りで廊下を抜け、階段を上っていく彼女たちが向かったのは、リリアナ王女の寝室だった。


「リリアナ様が戻られました! さぁ、起きて」


 身体を揺さぶられてアマリーは自分がいつのまにか寝ていたことに気づいた。

 本物の王女と入れ替わるために、寝間着から動きやすい簡素なドレスに着替え、寝台の上に腰掛けて寝ずに待っていたつもりだったのに、とうやら寝てしまっていたらしい。

 瞬時に覚醒するとアマリーは隣で同じく軽くいびきを立てているカーラを起こし、寝室の扉へと向かった。

 レーベンス夫人が急き立てる中、アマリーとカーラは寝室を後にして廊下を歩かされた。

 廊下に敷かれた絨毯は分厚く、早歩きをしても何の足音もしない。

 少し進んだ所で来た道を振り返ると、開かれたままだった王女の寝室に人影がよぎり、すぐ後に扉が閉められた。


(リリアナ王女が戻ったんだ……)


 誰に言われずとも分かった。


「ほら、立ち止まらないで。早く来なさい」


 手を振って急かすレーベンス夫人を無視し、アマリーは閉まったばかりの扉を見つめた。


「リリアナ様と少しお話しさせて頂けませんか?」

「出来ません! リリアナ様のご負担となります。それにお二人を会わせるなと陛下からも言われております」


 リリアナは体調がやっと元に戻ったばかりだったし、何より国王にとっては繊細な王女だった。


「さぁ、外で馬車を待たせているのですよ。立っていないで、早く行きましょう」


 ようやくアマリーは扉から目を離し、用済みだとばかりにさっさとアマリーたちを王宮から放り出したがっているレーベンス夫人を見た。ーー彼女もこれが仕事なのだ。仕方がない。

 だがそうと分かってはいても、渇いた笑いが込み上げる。


「馬車が待っている……?」


 だから、何なのだ。

 アマリーは足を前に出し、元来た道を戻り始めた。苛立った声が後ろから上がるが、気にしない。

 おそらく今を逃したら、リリアナ王女とは会う機会がないだろう。

 寝室の扉に手を掛けた瞬間、レーベンス夫人がアマリーの肘を掴み、抑えた。


「何をする気です!」

「お離し、無礼者」


 ピシャリと肘を払うと、レーベンス夫人は固まった。リリアナ本人に命じられたかのような錯覚に陥ったのだ。

 扉を開けると素早く中に入り、後ろ手ですぐに錠を降ろす。五月蝿い夫人に邪魔されたくない。

 すると寝室の中にいた一人の女性がパッとこちらを振り返った。驚いたように目を見開き、振り返るその顔は近距離で見つめても、あまりにも自分と瓜二つだーー誰に言われずとも分かる。リリアナだ。……リリアナ王女が今、目の前に立っていた。

 水色の簡素なドレスを着て、その上にヴェールを羽織って目立たぬ格好をしている。

 二人は五歩分ほどの距離で、お互いを食い入るように見つめて立ち尽くしていた。

 前髪のクセから睫毛のカール、少し赤みを帯びた唇の色艶まで、二人は瓜二つだった。

 アマリーは僅かの後に我に返り、ドレスの裾を摘むと膝を折って挨拶をした。


「アマリー・ファバンクと申します。リリアナ様の身代わりをさせて頂きました」


 リリアナの唇がようやくのようにゆっくりと開き、まるで歌うような柔らかで言葉を紡いだ。


「まぁ、驚いたわ。そっくりね。ふふふ」


 アマリーは面食らった。そこで笑われるとは思っていなかった。

 だが少し面倒そうに発せられた次の言葉は、さらに理解不能だった。


「でも許すわ。よろしくてよ。お前なら似ているもの」


 リリアナはそう言うと、被っていたヴェールを脱ぎ、手近にあった椅子に腰を下ろした。

 寝室の奥にいたリリアナ王女の乳母が早歩きでやってくると、アマリーとリリアナの間に身体を割り込ませる。彼女はとても不安そうな顔をしていた。


「あの、……リリアナ様に、何か……?」

「お渡ししないといけないものがあったんです」


 アマリーは乳母を避けるようにして歩き、リリアナの目の前に立った。ふと彼女が腰掛ける椅子に目が止まり、心の中であっと声を上げる。

 黄色と緑の糸を使ったゴブラン織りのその椅子に、見覚えがあった。リリアナはこの部屋で、まさにこの椅子に座ってアーネストに絵を描かせたのだろう。


(どうしてーー? なぜ、そんなことを?)


 手を伸ばせば触れるほどの距離にいるその王女の考えが、全く分からない。

 自分とまるで容貌が同じその女性の思考と行動が、理解出来ない。

 乳母が前に出るともうアマリーと話す気はなくなったのか、リリアナは二人に背を向けて窓の方を見るとでもなく、そのやや虚ろな視線を投げた。そうしてテーブルの上に置かれていた陶器の入れ物に手を伸ばすと、その蓋を開け何やらクリームのようなものを手の甲に塗り始めた。

 コホン、とリリアナが小さな咳をする。空気に消え入りそうな微かなその咳に、乳母は狼狽えた。


「リリアナ様! どこかまだ痛みますか? 吐き気は?」


 その言葉に気分が悪くなったのは、アマリーの方だった。

 竜の咆哮を遠くで聞いた気がした。

 バタバタと大粒の雨が馬車の屋根を叩く音が、耳にこだまする。

 オデンの足から溢れた鮮血の赤が、はっきりと脳裏に蘇る。

 アーネストの手で馬へと無理やり引き摺られた時に、踏みつけた柔らかな何かーーあれはきっと、死んだ兵士の身体だったと今になって気づく。

 そして、暗い森の中に響いたアーネストの叫び声。

 アマリーは堪らず口を開き、リリアナの名を呼んだ。


「ジェヴォールの森で賊が私を攫おうとしたのをご存知ですか?」

「知っているわ」


 答えたリリアナの声は少し硬い。


「私を攫おうとしたのは、アーネストという名の近衛騎士でした」


 リリアナの顔色が目に見えて変わり、彼女は辛そうに顔を歪めて目を逸らした。

 だがアマリーは構わず進めた。


「驚くべきことに、アーネストは貴女と恋人だったと言っていました。本当ですか?」


 ずっと、リリアナ本人に対して直接聞きたいと思っていた質問だった。

 だがリリアナは答えず、代わりに乳母が震える声で、何を話すのだ、もうやめてくれと口を挟む。


「ーーそれともアーネストの妄言でしたか?」


 アマリーが尋ねてもリリアナは視線を落としたままで、答えようとはしない。

 だが答えないということは、肯定しているも同義だとアマリーは思った。


「私はみんなに嘘をつきました。でも貴女にだけは真実をお話ししたいんです。ーーアーネストは貴女の恋人でしたか?」


 リリアナは辛そうに顔を背けた。

 その拍子に白い首筋にある黒子がアマリーの視線に飛び込む。

 一瞬アマリーの息が止まり、鳥肌が立つ。


(この黒子……、これだわ。マチューが前に言っていたやつじゃないの)


 対峙する二人は互いに震え、顔立ちこそそっくりだったが、溢れ出る感情は全く異なるものだった。

 胸のうちに激しく渦巻く感情を、この時アマリーは怒りだと自覚した。

 答えを催促するように、リリアナの名を再度呼びかける。


「やめて……もう、結構よ」


 リリアナは不安そうな目をアマリーに向け、怯えた表情のままかたまっていた。だがアマリーはそこで終わるのを許さなかった。

 リリアナは知るべきなのだ。何が起きて、何を起こしたのかを。


「王女の隊列を襲うという愚かで不名誉極まりない行為の結果、たくさんの死傷者が出ました」

「おやめ下さい! 何のつもりですか!」


 庇おうとする乳母には目もくれず、アマリーは一歩更に踏み出し、リリアナの目を覗きこむ。


「アーネストは貴女が攫うよう頼んだと言っていましたよ?」


 リリアナの白い頰が一気に青ざめた。

 その細い指で、小刻みに震える口元を覆う。

 ーー貴方と結ばれるために、二人きりになりたい。

 ーー物語の王女のように、私を強引にお城から連れ出して頂戴。

 初恋の熱に浮かされ、アーネストに縋って訴えたのは、確かに自分だった。

 リリアナは震える頭を椅子の背に押し付けた。その様子を見て、アマリーの脳裏にはマチューに見せられたあの絵が蘇る。

 この椅子の上で身を寄せ合っていた二人の姿だ。


「リリアナ様。この椅子の上で、胸を出して……アーネストに描かせた絵があったでしょう?」


 虚をつかれたように見開かれた青い瞳が、アマリーに向けられる。

 離宮で眺めていたスケッチブックの絵だ、とリリアナはすぐに分かったが、口には出さなかった。


「なぜ、それを……?」

「リリアナ様、それを知りたいのは私の方です。なぜあんな絵が、南ノ国にあったんですか?」


 リリアナは急に寒気でもしたように身体をブルブルと震わせ、己を両腕で抱きしめた。


「あ、アガットよ……! あの子がっ! 全てアガットがけしかけたせいよ!」


 アガットって誰よ、と思ったがいちいち問い返したりはしなかった。


「いいえ、貴女のせいですよ」

「リリアナ様は何も悪くありません! 分不相応にも、あの近衛騎士が純粋なリリアナ様を誑かしただけなのです!」


 乳母はリリアナの背をさすり、険しい形相でアマリーを睨む。

 アマリーは複雑な心境でリリアナを見下ろした。

 ジェヴォールの森で隊列を襲った男の本当の動機は、きっと公には明かされることはないだろう。掘り起こすにはあまりに不都合な真実だからだ。

 だが少なくともリリアナ本人は知るべきだと思った。


(私は、きっととても残酷なことをしている)


 そう自覚しながらも、アマリーは続けた。

 ポケットに手を入れ、取り出したのは一つの指輪。


「アーネストは私を攫おうとした際、二つの物をくれました。一つはこの指輪です」


 目を見開いて顔を上げるリリアナの前に、アマリーは指輪を差し出し、見せた。

 渡された後処分に困ったが捨てることは出来なかった。本当の持ち主は自分ではないからだ。どうすべきかは、リリアナが決めることだ。


「もう一つ、彼は私に口づけをくれました」


 リリアナの目が瞬く。返事に窮したのかもしれない。


「でもそれは、お渡ししようがありません。ですので、お伝えするに留めておきます」


 リリアナは顔を歪ませると両手でそれを覆った。

 どうすべきだったというのか。


「お前が……お前が代役などやるからいけないのよ! 過ちがあったとすれば、本当はそこではないの?」


 アマリーは咄嗟に答えられなかった。

 今そこを指摘されるとは予想していなかったが、或いは一理あるかもしれない、とも感じた。


「そうですね。私も非難を免れるものではありません」


 リリアナからしてみれば、アマリーはただ報酬に目が眩んだ汚い従姉妹でしかなかった。

 可哀想なのは自分とアーネストだった。


「私は、だって……道具なのよ! 王女という、国家の為の道具よ!」


 だから仕方がなかったのだ、とリリアナは思った。自分は王女という宿命に従っただけだ、と。アガットに言われて一度は自分の心のまま、流れに逆らってはみたが、王女という宿命はそれを許してはくれなかったのだ。

 対するアマリーは力なく囁いた。


「道具だったのは私の方よ……」


 コトリ、と指輪を机の上に置くと、アマリーはリリアナに背を向けた。扉のノブに手を掛けながら、例え似ていても、この王女と分かり合う日は絶対に来ないだろう、と悟った。





 久しぶり戻ったファバンク邸は妙に閑散としていた。

 暗い廊下を歩き、アマリーは異変に気付いた。

 屋敷の廊下を所狭しと飾り立てていた、数々の馬の絵画が、なくなっていた。

 カーラとアマリーはほぼ同時に顔を見合わせ、急いで大回廊へと駆けた。


「三代目だわ! 第三代目のファバンク侯が復活している!」


 屋敷を席巻していた馬の絵が元の人物画に戻ったことに二人が驚いていると、踊り場から侯爵夫人が声を上げた。


「アマリー! 帰ったのね」


 アマリーはドレスの裾をたくし上げると、大急ぎで階段を上った。


「お母様! ただいま」


 侯爵夫人はアマリーの頰を両手で挟むようにして、何度も娘の無事を確認した。


「馬の絵は、どうしたの? 一枚も見当たらないわ」

「お父様はようやく目を覚ましたのよ」


 踊り場から顔を上げると、上階の手すりの側に立ち止まる侯爵の姿が目に入った。 侯爵はおずおずと口を開いた。


「お帰り、アマリー」


 何といえば良いのか考えてしまったアマリーに、侯爵夫人は教えた。ジェヴォールの森で馬車が襲われたことを知ると、侯爵は王宮へと駆け参じ、アマリーを返してくれと国王に懇願したのだという。


「でももう、あなたは国境を越えてしまっていて、不可能だと言われたの」


 そんなことがあったのか、とアマリーは意外な気持ちで侯爵を見上げた。侯爵は沈んだ声を絞り出した。


「私が間違っていた。……本当にすまなかった……」









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