修業
そういえばなぜ修業ができるんだろうと思わなかっただろうか。
その意見はごもっともで、俺たちが寝ている部屋は奴隷の扱いとは思えないほど広い。でもあくまで生活するためだけの部屋なので修業なんてできない。どこで修業しているのか。それは、押入れの中だ。
どうして押し入れの中なのかというと俺の第二の能力が関係してくる。それは空間魔法である。修業すればワープもできるようになるのだが、まだできない。今は空間を捻じ曲げて押入れを超広い訓練室にできるぐらいだ。そう、だから押し入れなのだ。なにもやましい気持ちがあったわけではない。一番見つからない場所が押入れだっただけだ。
「ゼス~!やろうぜ~!」
この声は間違いない。エインだ。
「お前は今日ティーンとだろう。俺はフィールとやるからだーめ。」
エインは毎日俺と修業をやりたがる。エインとの修業は完全に肉弾戦になるから疲れるんだよな。
「なんだぁ?私に負けるのが怖いのかなぁ?そーかそーか、ならしゃあねぇな。」
...わかりやすい挑発だ。これに乗るのも癪だが仕方ない。お仕置きしてやるか。
「勝ったことないくせによく言うぜ。いいだろう。相手してやるよ。今日は気絶もしくは相手に『まいった』といわせたほうが勝ちでいいな。」
「そーこなくっちゃ!」
そういってエインは駆け足で訓練場に向かった。
「ごめんなフィール。3分だけ待っててくれ。あとティーン。今日はエインとの修業はできないかもしれない。すまんな。」
フィールとティーンに一言詫びを入れ、俺も訓練場に向かう。
「待つのはいいんですけど、3分しかいらないんですか?いくらゼスが強いとはいえエインも修業のおかげで結構強くなっていると思いますけど。」
「ゼス。どういうこと?」
フィールとティーンが不思議そうにこちらを見ている。あぁなんてかわいいんだ。
「見てればわかるよ。お前たちも見ておいてくれ。俺の新技を。」
「じゃあさっそく始めるぞ!フィール!掛け声よろしく!」
「それでは・・・はじめ!」
フィールの掛け声で勝負が始まった。
「はぁぁぁぁっっ!」
いつも通りエインが突っ込んでくる。俺はいつもならよけて反撃する。
だが今回は違う。今回は真正面から受けまくる。しかし身体強化されているエインの攻撃を受けるだけだとさすがに死んでしまうのでガードをしながらうまいこと受け流す。
「そろそろ本気出すよ‼」
エインがにやついている。本気だぁ?今のこれは本気じゃないだと?
するとエインの攻撃スピードが一段と早くなる。どんどん早くなり五発に一発はもろに攻撃を受けてしまう。
「ぐはっ!。だいぶ強くなったな。」
「そんな余裕ぶっこいてて大丈夫かぁ‼?」
さすがにこの速さは想定外だ。かくしてやがったな、こいつ。
「ゼス・・・」
「ッ…」
フィールとティーンが心配そうに見ている。
あぁ。あいつらに心配されちまってるじゃねぇか。俺もまだまだだな。
「そろそろ3分か。」
「あぁ?何言って…」
と、その時。ガクンッ…エインの動きが止まり、
・・・ドサッ
そのままエインは倒れた。
「何が起きたのですか・・・?」
「ゼス。なに、した?」