Twitter企画[幼女]x[夏]
夏と言ったら何を思い浮かべる?
花火?お祭り?
海?スイカ?
他にも思い浮かぶは多々あると思う。
だが!
この夏、5歳児の妹と行くのは・・・
「山」
なぜこんな事になったんだ・・
俺は、海に行ってかわいい女の子達の水着姿を見たかった・・・
だが、妹は海よりも山で昆虫採集を選んだ。
事の発端は夏休み開始から数日のこと
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「お兄ちゃん!一緒に山に行こうよ!」
めんどくさい、第一なぜ山なんだ。
海でもプールでも無く山。
「おぉ、妹よ。お兄ちゃんも行きたいのは山々なんだが、山々なんだが!あいにく忙しくてな」
山だけに
もちろん忙しくなんて無い。
強いて言うなら何もしないと言うことに徹しているから忙しいのだ。
こんなダメダメなお兄ちゃんを許してくれ。
そして恨むなら母親を恨んでくれ、
「え~、何もしてないじゃん!なのに忙しいの!?」
うっ
何もしてないという痛いところを突かれた。
せめて、何かしているふりでもしないといけなかったのか。
「お兄ちゃんはな、生きることに忙しいんだ。だから忙しい。」
大事なことだから二度言いました。
相手は5歳児。
それっぽいことを言っておけば勝手に理解してくれるだろう。
だが、俺は5歳児の頭を侮っていた。
「そっかー、じゃあお母さんに一緒に行ってもらうしか無いね・・・」
そういって、駆け足で母親のところへ行った。
このときは一難去ったな。
と思って、再びテレビに向き合う。
だが、後ろから全力のグーパンチを食らった。
「イッてぇ!!何すんだよ・・・」
振り向いた先に居たのは、優しい笑顔、だがどこか殺意のようなモノ感じられる姉とその陰に隠れて俺を見て笑っている妹。
血の気が引いた気がした。
姉の姿を見たことですべてを察した。
妹は確かに親のところへ行ったのだと思う、そして母の言われるがまま姉のところへ行き一周回って戻ってきたと
一難去ってまた一難とはこの事か。
「ねぇ、あんた今暇よね??一緒に行けるわよね?いけないなんて言わせないわよ?」
俺に拒否する権限など一切無い。
恐怖政権そのものである。
「う、ウィッス。言ってきます、オネエサマ・・・」
つまり俺が妹と山に来たのは
俺が断り、母のところでも断られ、姉を引き連れて俺のところに戻ってきた。
女は強し、何が男女平等だ!
こんなに日常でも不平等が隠されてやがる!
だが、思っていたって解決するわけでは無い。
これ以上姉を刺激したくないのですぐさま汚れても良い服に着替え、押し入れに埋まる数年前の虫かご、虫取り網を掘り出してきた。
なんやかんや良いながらちょっと楽しみになってきてしまった。
いかんいかん、あくまで妹の保護者として行くことになるので、楽しんでてその間に妹に危険があった!なんてことになったら俺の生命が危うい。
「妹よ、お兄ちゃんはいつでも行くことが可能なんだがお前準備はしたのか?」
その格好はただの普段着。
一応聴いてはみたものの明らかに準備などしている気がしない。
「ううん、まだー!今から準備するー!」
やはり、そして駆け足で姉のところへ行くと
「おねーちゃん、お着替え手伝ってー?」
「はいはーい、じゃあ向こうのお部屋で着替えましょうか。」
当たり前なのだが、俺と対応が違いすぎる。
それから5分ほど立ってやっと準備ができたらしかった。
半袖半ズボン、麦わら帽子。
鞄には虫除けスプレー、絆創膏。
首には虫かごが掛かっており、虫網もしっかりと持っている。
「よし、じゃあ行くか。防犯ブザーは持ったか?」
何かあったら困るから妹が出掛けるときはいつも確認をしている。
「忘れてた!ママー!防犯ブザーどこー??」
「はいはーい、ちょっと待ってねー。」
母は本当に忙しいらしく防犯ブザーは代わりに姉が持ってきた。
「はい、どうぞ。気をつけて行ってらっしゃい。」
姉に見送られながら出発をした。
山までの道中、そう言えば水分とか持ってきてなかったので、コンビニでミネラルウォーターを2本、それとタオルを買いました。
1人分なら全然痛くないのだが、2人分となるとちょっとだけ高かった。
それだけで体調を崩す可能性が少なくなるなら安いモノだ。
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実は山で何をするかを言われたわけじゃ無いのだが、真っ先に虫取り網を取りに行ってしまった俺を見て妹も虫取りをしたくなったようだ。
山に行くことになった理由は妹。
虫取りになった理由は俺だった!
まぁそれはそれだ。
俺たちが来た森はクヌギの木が多く生い茂る森。
蝉の鳴く声もすごくうるさい。
特徴的な鳴き声のツクツクボウシもいる。
だが、今重要なことに気がついてしまった。
現在時刻は、10時30分。
こんな時間に、たとえばクワガタとかカブトとかが居るのか?
俺の幼少期の記憶の通りならあまり居ない。
だが、今更どうにもならない。
罠とかを仕掛ければ良かったのだが、あいにくそんなモノ用意していない。
と、なると探すのは樹液。
発行していて甘酸っぱい強烈な臭いがするので、多分分かるであろう。
「おい、妹よ。甘酸っぱい臭いがして白っぽい所のある木を探してくれ。」
妹に樹液のある気を探せといっても樹液って何?みたいになりそうだからわかりやすいように詳細に説明をした。
すると、妹が
「あれ!」
といって気を指さした。
たしかに白く樹液の出てる木がある。
だが、高すぎる。
「すまん、アレは流石に高過ぎだ。もうちょっと低いところにある奴無いか?」
「探してくるー!!」
そういって森の中を一人で走って行ってしまった。
やべぇ!なんかあったらいけない!と思って俺も走った。
だが、堕落した今日までの人生が仇となり、体力が無い。
さすが妹は若いだけあって、すごく体力がある。
って俺もそんなに歳いったって訳じゃ無いけど・・・
そんなことを考えている暇など無かった。
ヤバイ。見失った。
待て待て待て待ていくら何でも早すぎる。
森に来てまだ数分しかたってないぞ!?
今は走って体力がつき、片腹がすごく痛む。
どうやって見つける?
眼で探そうにもすでに見失ってどこに行ったか分からない。
他の方法、他の・・・。
足跡・・・とかは?
そう思って確実に一緒に居たときの所まで戻って足跡を確認する。
そこから足跡を追う。
足跡を追い続け、数分。
足跡は木があるたびに木の目の前まで向かっていた。
そしてそこからランダムな方向に向かっている。
足跡は、はじめの方は歩幅が広く、後になるにつれて歩幅が狭くなっていた。
つまり、はじめの時は元気が有り余り走り回って探したのであろう。
後半の歩幅の短いのは、走り疲れて歩きながら探したのだろうと思う。
「もう少しで見つかりそうだな。」
相手は5歳児なので、疲れ果ててしまったらどこかで休んでいるだろう。
性格だけは姉譲りなので、不安になって泣くなんて事は無い。
まぁ、こういうときはいっそ大声で泣いていて欲しい。
その方が見つけやすいから。
そしてさらに足跡を追い続けるとちゃんと妹が居た。
やはり疲れ果てていたようで、切り株の上にちょこんと座っている。
「おい、いきなりはしってっちゃだめじゃねぇか。」
「ごめんなさい。それよりね!お兄ちゃんの言ってた木いっぱいあったよ!」
もう反省の気持ちは無いらしく、ここまでの道中で見つけた樹液のあるクヌギのことを話してくれた。
「じゃあ、戻りながらその木を教えてくれないか?」
「うん!」
そう言って、また妹が走り出しそうだったので、その手をとっさの判断でつかんだ。
「走っちゃだめ。また居場所わかんなくなるからせめてこれ持ってて」
注意するとともに姉から渡されて渡し忘れていた防犯ブザーを手渡す。
これでもし、万が一にでもまた居なくなってしまったときにはわかりやすくなるだろう。
「もし、迷子になったらそのブザーのひもを引っ張ってね?」
妹は”うん!”と言うと、大事そうに首からぶら下げる虫かごにくくりつけた。
「じゃあ、戻ろうか。」
もう、見失わないように元に戻るまでの途中は妹と手をつないで戻っていった。
道中、妹の言うとおり樹液の出ている木がたくさんあった。
蟻がたくさんたかっている木や、蜂が止まっていて危険な木もあった。
だが一つだけ、昆虫がたくさん止まっている木があった。
これだけたくさんの木があってたった一つだけ。
オオクワガタ、ノコギリクワガタ、カブトムシと、この一本だけにたくさんの虫が止まっていた。
近年どんどん減って言っていると言われるがまさかこんなにも減っているとはな・・・
その木もクヌギなんだが、ものすごく太かった。
樹齢100年言ってるんじゃ無いか?
っていうくらいに。
周りの木よりも異彩を放っていた、この森の長なんじゃ無いか?
なんて、そんな夢物語は無いだろう。
虫を捕りたかったが、正直虫を捕って帰ったってどうせリリースするのだからとって弱らせるのはいけない。
だから写真だけ撮った。
本当にその木以外に昆虫の居る木は無かった。
ちゃんと虫を捕まえるというなら朝早くから来て罠を仕掛けないとだめなんだろうなと感じさせられた。
それ以外はこれと言って特筆することは無い無かった。
何も無いとは良いことなのだ。
難なく、最初の一まで戻ってきたのは良いのだが、
「もう飽きた!帰ろっ!」
などと抜かしぬかしおった。
現在時刻を確認すると11時。
30分も森の中を歩いていたようだ。
その大半が妹捜索だったのだが、そりゃあ飽きるわ。
なんとなくで森に行きたい!となってたらそりゃな。
と、言うわけで森での昆虫採集(妹捜索)は終わった。
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ファミレス前。
「お兄ちゃん!なにか食べて帰ろ?」
俺は財布の中身を確認する。
かろうじて一人分払えるくらいしか入っていない。
「無理だ、お兄ちゃんのお財布の中には一人分しか入ってないから二人で食べて帰ることはできないぞ?」
いつもは泣くことの無い妹が、ここぞ!と言わんばかりに泣き始めてしまった。
周りの通行人の冷たい眼。
こいつ、さては狙ってやったな?
仕方が無い。俺は何も食えないのだが、妹の分だけおごって帰ってきた。
しっかりレシートをもらって。
家に帰るなり、俺の方を見て
「おにいちゃん!今日はありがとう!」
おにいちゃんはその笑顔だけで満足だよ。
と、言いたいところだが、現実はそんなに甘くは無い。
ちゃんと後々に全額母親に請求しました。
レシートはちゃんととっておくモノだな。
いつもは捨ててしまいがちだが、こういうときには役に立つ。
ぜひとも今度どこかに行くことになるなら今度こそは海に行きたい。
そう願う俺なのであった。