第4話 その夜
「ああ,やってしまった。。。ついにやってしまった。。。俺の誰とも関わらないというアイディンティティが崩壊してしまう!!!ああ,はずかしい。。。」
平坂家の家のリビングに響き渡る悲痛な叫び声。もちろん声の主は俺以外いるわけもなく,そして俺の周りに誰かがいるわけでもなく,そんな状況で叫んでいる自分がとても虚しく思いながらも叫ぶことをやめられないでいると,扉が開いて俺の妹,平坂歌恋が入ってくる。
ちなみにこいつ,俺の妹なのに俺とは全くにつかず,友達も多く,社交的,そして男子ウケも良い女子高校生である。
あと,ちなみに俺は自分で言うのもなんだがそこそこ勉強ができるが,こいつは勉強は得意ではない。と言うかアホだ。
っとまあ,こんな感じの歌恋だが,兄に対しては結構冷たいのやら優しいのやらわけのわからんことが多い。
だが,今現在のように俺がうるさくしていたりすると
「おにいちゃん,うるさいよ。どしたの?そんなに叫んで」
一応理由を聞いてくれるだけだいぶんと優しくはあるのだが,やっぱりお兄ちゃんに対してつめたくありません?
だが,親が共働きで自宅にいる時は二人でいることが多く夏恋は俺の唯一の理解者であると言える。
なので俺は素のままで
「いや,仕事とはいえ,初日から初めて会う人と喋って,握手をするなんてもう…俺のスピリットが崩壊してしまう…もうほんと嫌なことこの上ない。そして,何よりつかれたー!」
「もう,何が言いたいのかわけわかんないよ。とりあえずお疲れ様。」
「本当に疲れた。マジでもう2度とこんな体験したくない。」
「はいはい。でもお兄ちゃん役者になったんだからこれからこんなことばっかでしょ」
「はっ,そうだった…ただ俺は舞台にでたいだけなのに…ほんとめんどくさいなあ。」
「もう,本当に屁理屈と文句しか言わないんだらお兄ちゃんは〜舞台の先輩とかお友達とかにおんなじような口調で喋ったりしないか心配だよ〜文句とか屁理屈とか喋っていいのは,本当に信頼できる人と歌恋だけだからね♪」
とこんな感じでウインクのサービスまでついてくる。
それはもう,めちゃくちゃ可愛いすぎて妹なのに,告ってしまいそうになる。
おっと,これはいけない。つい本音が出てしまいそうになった。
それにしても明日,明後日は休みだけども今週末日曜日にはまた今日以上に大勢の人と出会って,話さないといかないのか。
もう本当に舞台一人ではできないのかな?と本気で思ってしまうそのころ俺でした。
「まあ,これからたくさんいい人と素敵な出会いができるといいね!本当に信頼できる人とも歌恋としては綺麗な人とお兄ちゃんとの恋にも期待期待!」
「綺麗な女の人はいっぱいいるかもしれんが ,俺とその人が恋するなんてことだけはないな。そもそも俺がモテるなんてことがないし,それに,俺には歌恋がいるしな」
「お兄ちゃん…流石にこの歳でシスコンはないよ…まあ,歌恋だから許してあげるけど」
「お,おう,流石にこの歳でシスコンはまずかったか」
「そりゃね。じゃあ,もう遅いから歌恋寝るよ」
「ああ。じゃあおやすみ」
「うん,おやすみ」
そう言って歌恋は自分の部屋に戻る。
時計を見れば時間はもう夜一時前になっていた。
「はあ,俺ももうそろそろ寝るか」
そんなことを思いながらソファに寝っ転がっていたら微睡みが訪れる。
そして気がついたら,そのまま寝てしまっていたらしい
そのままなにごともなくだらだらと休日を過ごし,親睦会当日を迎えることになった。