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第3話 彼女の事情

雪村さんが出ていったあと俺と小宮山さんが二人きりになってしまった。

はあ、とても気まずいんですけど、この雰囲気。

あっ、雰囲気というと小宮山さんは、この事務所に入ったばかりなのになぜかもう何年も舞台の世界にいる、ベテランのような、どちらかといえば俺よりも雪村さんに似通った雰囲気をもっている。

それが、俺と同期なはずなのになぜか敬語を使ってしまうのと自然と話しかけにくくさせている。

まあ、俺は人と話すこと自体苦手なので問題はないんだけどね!

そんなことを思っていると小宮山さんが


「えっと、これからあなたはどうするの?」


あっ、これは彼女の方も彼女の方で多分何か喋らないとと思って絞り出した感じですね。


「特に予定はないので帰りますね。」


「あら、そうですか。じゃあ。またいつか」


なんか、そっけない感じになってしまった気がする…

まあ、これが俺のコミュ力なので仕方ない。

そんなことを思いながら、家に帰ろうとしていると、俺の前に彼女の手から一枚のチラシが渡される。


「なんですか?」


「え?知らないの?確か、EXGが主催する新人の舞台俳優とか女優さんの親睦会みたいなものよ。どうやら、あなた

にわたすつもりだったらしいけど。名前書いてるし。」


「いや、知らない知らないですよ。雪村さん、俺にどうでもいいことだけ言って、肝心なこと言い忘れているのかよ。」


「本当に面白くて不思議な人ね。雪村さん。あっ、でもあなたはもっと不思議というか、なんというか。訳がわからないって感じかしら。」


やっぱり、あんたも俺のこと訳わからんと思ってたんですかいな。まあ、そんな風に思われるのは毎度のことなので


「な、何もそこまで言わなくても。まあ、確かに俺は他の人に理解されない人間なのかもしれないけど、それでも必死に前を向いていきているんですよ!だけど、これは社会に溶け込まない俺が悪い訳じゃな人いんですよ、俺を受け入れない社会が悪いんです!」


とまあ、こんな感じでういつもの持ち前の持論で返すと


「いや、別にそこまできつく言ったつもりはないのだけれど。まあ、いいか。あと、別に私に敬語使わなくていいわよ。同期なんだし」


「それはそうだけれども、なんかお前と話していると、大先輩の俳優と話しいてるみたいで自然と敬語をつかってしまうんだよ。」


「やっぱり、あなたは変な人ね。」


まあ、実を言うと、俺はあなたもすごい不思議な人だと思うんですけどね。

そして俺自身も自分を変わっていることは自覚してるけど。

心の中でそう返事をするが彼女にはもちろん届かない。

すると彼女はさっきの言葉の続きを口にする。

その言葉は俺を驚かせるには十分で、俺は、今まで誰にも言われたことのない初めての自分に対する評価にたじろいでしまった。

彼女、小宮山咲良は俺を不思議だ、そして変だというのと同時にこう言葉を続けたのだ


「そして、とても恐ろしい人ね。」


と。


そして、俺は初めてかけたられた恐ろしいという言葉に


「まあ、そうかもな」


としか返すことができなかった。

だが、言葉を発した当の本人は大して気にしていないらしいので、話題を戻す。


「そういや、さっきの話だけど、俺も行くのか?その親睦会とやらに」


「ええ、このチラシが配られているということはあなたも行くのよ?絶対に。」



「マジですか。こういうのは苦手な事この上ないんですけど。だから行かなくてもいいっすか?めんどくさいし」


できれば、チラシを見なかったことにしてばっくれてしまいたんですけど。そんなことできる訳なく


「私も得意なわけではないのだけれども強制的に行かされるのだからあなたもいきなさい。というかあなたを無理矢理にでも連れて行かないと多分私がチーフに怒られるのだけれども。」


「いや、なんでだよ。もしかして、この人俺をチーフにその親睦会に連れてけみたいな事いわれてるのか?』


「ええ。というかそうじゃなかったらあなたに親睦会の存在を知らせることもしないわよ。」


「やっぱりそうなのかよ」


ならば迷惑をかけるわけにも行かない。それは,人に迷惑をかけない,そしてだれにも迷惑をかけられないという俺の信念に反することだから。

だから俺は素直に


「わかったよ行けばいいんだろ?行けば」


「ええ。できればその投げやりな全てを悟ってます私見たいな喋り方を改めてから。」


「まあ、それは無理だ、諦めろ」


「はあ、あなたと同期としてうまくやっていける自信が全くもって湧いてこないのだけれども」


「そりゃあそうだ。今まで18年間生きてきて他人と上手く関係を築けた事ないからな!」


特に高校時代はなかなかひどかったな


「そんな胸を張って言えることではないでしょう。まあ、なんでもいいけど今週の日曜日ならしいから。

あと,ちなみに同じ事務所の同期の場合,一緒に入っていく慣例になっているらしいから一緒にくるようにとも言われているから絶対に一人で行かずに入り口か近くで待っておくこと。わかった?」


「ああ。わかった。」


「では,また今度。」


「ああ。」


「それと改めてこれからよろしく。」


そう言いながら彼女から手が差し伸べられる


「そうだな。こちらこそよろしく」


俺もその手を握り返す。

その後、俺たちは部屋を出て別々の道を歩く。

そこにはもう言葉はない。

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