第1話 出会い
四月桜が咲き乱れる季節の大阪。たくさんの舞台俳優、女優の人たちが所属する事務所EXGのチーフ室の前。幸運にも大学入学前の春休みに流れで受けた事務所のオーディションみたいなものに受かり、これから俺もこの事務所に所属する新人俳優の一人となる。EXGは主に、舞台を中心に活動していく人、そしてモデル活動を中心に活動していく人などでチームに分かれていて、それぞれのチームにチーフという、グループリーダー見たいな人がいる。だからこれから、世話になるチーフさんに挨拶をする。そんなところだ。はあ、これはめんどくさい。そもそも人とコミュニケーションをとること自体あんまりすきじゃないんだよなあ。これまで孤独で生きてきたし中学、高校でもずっと一人でいたし。だが、舞台に出て他の人と一つのものを作り上げていくのだから、これからはそうはいかないことも増えていくのかもしれない。いや、きっと増えていくな。それでも、俺はできるだけこれからも孤独で生きていきたい。だがまあ、ここは無難に過ごすしかないか。これから助けてもらうこともあるだろうし。そして何より、こっちから飛び込んでいった世界だし。
というわけでドアをノックすると中から声が聞こえる。
「はい。どうぞ。」
「し、失礼します。今日からこの事務所に配属させてもらうことになりました、平坂翔です。よろしくお願いします。」
はあ、やっぱり緊張するな。それにしてもなんかこの人どこかで見たことあるような…
「おう!あっちなみに俺はチーフじゃないぞ〜。俺の名前は雪村龍矢。EXG所属の舞台俳優!ここのチーフ室に来るってことは多分俺と同じ舞台俳優になったんだろうな。ほうほう、楽しみな奴がきたな〜」
いや、ほんと僕のさっきまでの緊張返してくださいよ…だけど今、俺の前にいる人がとんでもない大物であることには違いない。何せ目の前にいるこの人は何本もの舞台に出ているし、何かの舞台俳優の賞を取るくらい有名かつ、実力派の舞台俳優なのだ。
やっぱり大型の事務所は有名な俳優、女優さんがいるんだな…今更だが、本当に場違いのところに来た感が半端ないのだが…
「本当に僕みたいな新参者がこの事務所入っていいんですか?」
「さあ、でもあれだよ合格したんだからはいっていいってことじゃね?あ、それに最初はみんな初心者だし。」
「だったらいいんですけれどね…」
不安しかないんだけど。
「まあ、とにかく当たって砕けろだ!がんばれ〜」
今世界で一番やる気のない励ましの言葉を聞いた気がするんだがそれは…ま、いいか。
それにしても、この人想像以上にフレンドリーな人だなあと俺が勝手に抱いていた雪村龍矢のイメージとは懸け離れているのに驚きながら適当に会話をしていると、時間が経っていく。
「おっ、そろそろ次の舞台の打ち合わせの時間だな〜おれちょっと行ってくるわ。」
「あっそうですか。まあ、俺が応援するまでもないと思いますけど一応頑張ってください。」
「おう!どんとまかせんしゃい!いずれはお前とも一緒に舞台やれたらいいな!」
「はあ、まあ可能性低いですけど…」
「いいや、案外そんなこともねえぞ、お前と同期にはすごい才能のある奴がいるからなあ。特に…あ、噂をすれば」
「えっ…」
その瞬間扉を開けて入ってきたのは髪をストレートにおろしたとんでもない美人だった。
マジでここは天国かよ。誰かわからないけどいきなりこんな美人に会えるなんて