羨望JEALOUSNESS 秘密の人 3
なに、この笑顔は。
嫉妬しているわけでもなさそうだから、
単純に、三船さんに胸を押し付けられている俺を見て、笑っているってことか。
それはそれで面白くない。
「そろそろか」
ふと、西さんがつぶやく。
すると、それまで笑っていた優斗さんが、ガクンとうなだれる。
そしてそのまま、倒れてしまった。
「ゆ・・・マネージャー!」
「大丈夫。マネージャー、酒が入るといつもああだから」
「え?」
「ひとしきり笑った後に、ああやって力尽きる」
力尽きる?
良く見ると、苦しそうな表情はない。
むしろ、すーすーと寝息が聞こえる。
「あ、おい優斗!お前また寝やがって」
店長が力づくで優斗さんを起こす。
そして揺らすも、優斗さんが起きる気配はなかった。
その様子を見ていると、突然三船さんが大声で泣き始める。
「ねえ、あたしって、っう、あたしの魅力って、どこぉ~」
「知らないです」
「ひどーい、榛名っち!もしかして、な、ないのぉ~」
「・・・・・・」
面倒になって、西さんを見る。
「泣き上戸ってやつ。落ち着いたら俺が駅まで送るから」
「はあ・・・」
「マネージャーは店長が送っていくから、気にするな」
「・・・・・・」
いや、気にするなと言われても・・・
俺は立ち上がって、マネージャーのところへ行く。
「店長」
「なんだ?」
「俺がマネージャー、介抱します。俺の家で」
「なんだと?」
突然、店長に胸倉を掴まれる。
「お前、優斗を襲う気じゃねぇだろうな!」
「・・・それは、ないとは言い切れません」
「ないとは言い切れない?」
「俺だって男だから。好きな人が無防備でいたら、我慢できないかもしれません」
西さんたちに聞こえないように、小声で言う。
すると、店長はしばらく考えて、手の力を緩めていった。
「・・・好きにしろ。ただ、こいつが傷つくことはするな」
「わかってます」
店長からの許可が出たので、
俺は優斗さんの肩を担いだ。
「よし、じゃあ三船!一緒に帰ってやる」
「店長~、ホント?よかったぁ」
今度は三船さんが店長に抱きつく。
その影で、西さんがホッとしているのが見えた。
・・・三船さんを送るの、嫌だったんだろうな。
飲み会はその時点で、お開きとなった。