羨望JEALOUSNESS 秘密の人 2
飲み会の前日は、なかなか眠れなかった。
恥ずかしい話だけど、頭の中で「酔った優斗さんの姿」を妄想していると
気持ちが落ち着かなかった。
酔うとどうなるのだろうか。
酒はその人の本心を暴くと言われている。
優斗さんは変わらないかもしれない。
『僕、実はお酒強いんです』
いや、もしかしたら
優斗さんの真面目な部分が出て、説教し続けるかもしれない。
『榛名くん。だらしない生活していたらいけません!』
・・・いい。
逆に、いつもの優斗さんとは変わってエロくなるかも。
『僕、ちょっと熱くなってきちゃって・・・脱いでもいいですか?』
そんな風になったら、俺の家に連れてきて
今度こそ最後まで・・・
という妄想を繰り広げながら、迎えた飲み会。
俺のグラスが空になることはなかった。
なぜなら・・・
「ほら飲めって、榛名!酒のうまさを味わえ!!」
店長が次々に酒を注ぐからだ。
どうやらこの人は酒が入ると、いつも以上に豪快になるらしい。
女って、怖い。
隣では西さんがちびちび酒を飲んでいた。
「よかった」
「え?」
「お前が参加してくれたから、俺が解放される」
「解放って・・・」
「酔っ払いの集まりだからな。みんな酒癖悪いぞ」
そう言いながら、満足そうにする西さん。
その間にも、俺のグラスに酒が注がれる。
「なにしてんだよ、飲み放題なんだから飲んで元とれ、元!」
「はあ・・・」
「ねぇ、榛名っち~」
店長に押されている間に、三船さんが俺にくっついてくる。
無駄に大きな胸が腕に押し付けられる。
「ねえ榛名っち~、男の人って、どうして浮気するのかなぁ?」
「・・・知らないです」
「拓くんってば、女の子と二人でご飯食べに行ったんだよ」
誰だよ、拓くんって。
そもそも異性と食事に行っただけで浮気扱い?
彼氏だとしたら、可哀想だなその人。
「利樹くんは同僚の女の子とふたりきりで夢の国に行ったんだよ。酷いでしょ~?」
だから誰だ、利樹くんって。
というかその二人が彼氏なら、浮気してるのは三船さんの方じゃないか?
そんなことはどうでもいいんだけど、
身体を押し付けてくるのはやめてほしい。
三船さんを好きな男なら喜ぶのかもしれないけど、生憎俺は――
「楽しいですね~、こういうの」
ハッとして声のした方を見ると、
優斗さんがニコニコしながら俺たちを見ていた。
ただその顔は、店長と三船さん同様、
茹で上がったかのように、真っ赤だった。