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「ここが冒険者ギルド……。マルクィート王国のところよりだいぶ大きいの……」


「そりゃそうだろう。なんせセルギア帝国は冒険者の国として有名なんだからな。うちらの研究機関が無駄にでかかったのと同じだろう」


さっそく冒険者ギルドにやってきた俺とルル。まずやることはマルクィート王国からセルギア帝国への移動申請。あのマルクィート王国ギルドマスターのジジィがやけを起こしてなければまず問題はないとは思うが、認められない事態になったら笑えない。


「拠点移動の申請ですね。かしこまりました」


手短かに移動したことを受付の女性に話すとすんなりと通してもらえた。おそらくでかいところだけあって田舎からこっちにやってくる輩は多いのだろう。

それにしてもこの受付の姉ちゃんすげぇ可愛いな。名前は確かセルフィさんだっけ? めちゃくちゃタイプだ。特に胸元が。


「なんか視線がいやらしいの。下心丸見えなの。変態なの」


「やかましい。肩から引きずり降ろすぞ」


俺の情熱的な眼差しと変態の視線を同一視するとは。これだから駄猫は困る。


「おい兄ちゃん。あんたどこから来たんだ?」


後ろ向きに作業しているセルフィさんのムチムチしたなお尻を眺めていると隣の男が話しかけてきた。正直男は興味ないんだが、それを無視するほど冷酷な人間ではないので一応返事をする。


「マルクィート王国だが」


「マルクィートか。もしかしてあんた魔術師なのかい」


「ええ、もちろん。もしかしてパーティの勧誘でも?」


「へへ。まぁそんなところだ。あんたからはデキそうな匂いがするからな。俺の勘は当たるんだぜ」


いやはや。随分と見る目のある人間のようだ。男をよく見ると、肌はよく日に焼けていて服の上からでもその膨らんだ筋肉が見て取れる。なるほど。歴戦の冒険者というわけか。俺の実力を見抜けていてもおかしくはない。


「そうなのか。まぁ俺としても足を引っ張らない仲間がいれば組んでやってもいいとは思っていたんだ。あんたがそうなのかは分からないがね」


「言うねぇ兄ちゃん。名前は何て言うんだ?」


「ライカ=エルモート」


「ライカか。いい名前だ。俺はジョセフ、Bランクの剣士だ。よろしくな」


俺たちはここで握手を交わした。Bランクと言えばベテランの粋の冒険者だ。仲良くしておいて損はないだろう。


「ライカ=エルモートさん。こちらへ」


するとセリフィさんの呼ぶ声が聞こえた。おそらく手続きが終わったのだろう。


「ライカ=エルモートさん、セルギア帝国冒険者ギルドへようこそ。手続きは無事終わりましたよ」


「そうか、ありがとう」


無事こちらのギルドへ移ることができたようだ。さてそうなると途端にわくわくしてくる。

冒険者と言えば秘境を探検したり、巨大な怪物を討伐したりとスリルに満ちた生活が待ち受けている。そして俺にかかればそれは後世に語り継がれるような英雄譚が生まれてしまうだろう。

実に愉快ではないか。さっそく隣のジョセフのおっちゃんと一緒に冒険にしゃれ込みたいところだ。


「いえいえとんでもないです。それではライカさん、“Fランク”冒険者として、これからの冒険者稼業頑張ってくださいね」


ん? 今なんて?


「ちょっと待て。セルフィさん。今俺が何だって?」


「いえ、“Fランク”冒険者としてこれからのお仕事に励んでくださいと……」


Fランクだと!? どういうことだ!? この大天才魔術師である俺がなぜFランクからスタートせねばならないのだ!?


「ちょっとセルフィさん。何で俺がFランク? 人をおちょくってない?」


「そんなことはありませんよ。ライカさんは紛れもなくFランクです」


「でも実力者はそれに応じたランクに割り当てられるはずでは?」


「そうですけどライカさんはどうやら登録時に執り行われる適性試験を受験しておりませんので」


あのクソジジィ!!

そんな試験があるなんて聞いてねぇぞ!!


「えっと適性試験って今できないの?」


「登録時でないと無理ですね。次の試験は来月になりますのでそれまでお待ちいただくしか」


きっとあのジジィはほくそ笑んでいるに違いない。くそったれ!


するとポンッと肩に手が置かれた。


「ライカと言ったか。さっきの話冗談だと思って忘れてくれや」


おい、ジョセフ!俺がFランクと聞いてから急に態度が変わったぞ!

さっきまでの人を見抜く目がどうたらはどうした!?


「ぷぷっ。学院だったらFと言えば落第って意味なの」


そしてもう反対側の肩には口うるさい毛むくじゃら。お前はそのFランクの従魔ということになるんだぞ?


しかし来月まで待てば昇格試験があるんだ。俺ならば当然Aになるだろうからとりあえずそれまでの金を稼ぐべきだろう。

何だかんだ部屋とか買って懐もひもじくなってきたからな。


「……セルフィさん、さっそくだが依頼を受けたいんだけど」


「それでしたら向こうの掲示板に一覧がございますので選んでください。あっ、F・ラ・ン・ク・の人はF・ラ・ン・ク・の任務しか受けられませんよ」


Fランクという言葉を強調させにこりと笑うセルフィさん。この人意外に腹黒いのか?

まぁおっぱい大きいからいいけど。


気分を入れ替え言われた掲示板を見る。するとそこには薬草の採取なり、隣町までのおつかいなりくだらない任務ばかり並んでいた。

いくら初心者に経験を積ませるからと言っても馬鹿にしすぎだろ。子どもでもできるぞこんなもん。


「あなた、この赤ちゃんのお守りなんてどう?これやればあなたの性格も少しは柔らかくなると思うの」


「確かにな。お前がいればガキの玩具に困らなさそうだ」


冒険者、さっそくだが辞めたくなってきたな。

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