女の戦い
プルーヴィの街の領主邸の一室、テーブルを囲んで6脚の椅子が配されている。相変わらず殺風景で調度品一つない部屋だったが、それはお国柄のせいというよりはその部屋の用途のためである。6人が席を囲んでわずかに余裕のある、逆を言えば後2人も入れば息苦しいその部屋は秘匿性の高い内容を話すために作られており、絵画などが飾られていないのは仕掛けなどがないことを明らかにするためである。
静まり返っているその部屋にコンコンコンコンっと音が鳴る。
「ニクス様をお連れしました」
軽やかなそんな声がして、
「うむ、入ってもらえ」
対照的な重低音が響いたのである。
扉が左右に分かれていき、会議室の中に居た面々は息を呑む。
金の意匠の入った淡い藤色のワンピースはスリットが深い、いわゆるチャイナドレスに似た服であり、隙間から覗く、未成熟だが健康的な肢体は眩しい。恥ずかしいのか正面から背けられた顔も頬が赤みを帯びているが、薄く基を活かす程度の化粧しかしていない。
丁寧に梳かされた髪は光沢が出て美しく
何故かツインテールだった。
ニクスが恥ずかしそうにしていたのはツインテールが子供っぽかったからだ。容姿としては似合っているのだが、一度は社会に出た経験もある菫の魂が拒絶していた。
どうにも場違いで仕方ないのだが、案内した侍女は自信に満ちたいい表情をしていたのである。
事態は急を要しているはずだったが、領主邸につれていかれたニクスはまず怪我がないことを確認された後、ひん剥かれて浴場へと放り込まれた。そして侍女たちに3人がかりで磨かれたのだが、
「凄い!肌が白ーい。ウエスト細っ(ムニムニ)」
「セプテム殿下とはどんな関係なんですか?やっぱり筋肉質な身体より女の子らしいほうがお好みなのでしょうか?」
「肌の、水の弾き方が全然違う!これが若さか(ガクッ)」
終始そんな扱いであり、帝国の女性の遠慮のなさは尋常ではなかった。あんなに疲れのとれなかった、むしろ疲れた入浴は初めてだった。
というか戦いスキーで腹筋も鍛えられまくっているわりには女性らしさも追求するというのは矛盾ではないか。
いや、そうではない。戦士として生きるからこそ切り捨てた女性としての別の可能性に憧れずにはいられなかったのだ。
そんなわけだからお風呂から上がってからも人形扱いでいろいろな服を着せ替えさせられたのである。尚、チャイナドレスのようなこの服は帝国では割と一般的だったりする。
……蹴りやすいので。
靴は鉄板入りが当然といった感じであり、ニクスのためにまともな靴を探すのに手間がかかったのは秘密にされている。侍女3人はただ着せ替えを楽しんでいたわけではなく、普通の靴を探しに他の者たちが出ている間の時間稼ぎでもあったのだ。
……本来の役目を忘れて楽しんでいたのも事実だが。
そんな侍女たちの労力の結晶がおめかししたニクスであり、彼女らの自信作への自負であった。恥ずかしさから顔を背けていても、頬の染まり具合が隠せておらず、その場に居合わせた者たちになんとも言えない甘酸っぱい思いをした。
「ゴホンゴホン、ニクス、その、報告を頼めるかな?」
一番付き合いの長いセプテムがそう言うしかなかった。




