帰途 1
ニクスはタキタテの背にまたがり、プルーヴィへの帰途についていた。無論一度訪れており、【転移】すれば一瞬で帰ることができる。それにも関わらずタキタテと帰っているのは、ニクスの浮かべる苦悶の表情と無関係ではないだろう。
……タキタテはものすごい嬉んでいたが。
黒曜の森の90%以上を構成していた“黒曜樹“。年中葉が落ちず、その枝葉を広く伸ばすため、森の中では地面に光が届かないこともその名の一因であるが、木の幹もまた黒々としていた。しなりが少なく使い道は限られるが、加工することができればであるが、木肌が美しく、光沢のある黒になり漆塗りにもにた気品がうまれることで家財として需要が高かった。
事実ニクスは、怪獣大決戦により倒れはしたものの、比較的無事な原木を枝葉を打ち払って異次元倉庫に突っ込んでいる。
常時漆黒に包まれた森の中に魔物が潜み、帝国の人間でも森の中で木材を切り出すのは難しいだろう。だが帝国にとって貴重な財産にはちがいないのだ。
帝国の人間に加工が出来るとは思えないので木材として他国に売るしかないだろうが。
黒曜樹はここにしかないわけではない。
だが、現状人の領域が最も広い帝国が真っ先に黒曜樹に出会った形である。
だがそれもすでに壊滅している。
全てをニクスの責任とするのは流石に酷であろうが、報告をするには頭が痛いのは仕方がなかった。
すでに原因は取り除いたため、行きほど慌てる必要はないにせよ、早く帰還して報告して安心させてあげるにこしたことはない。
それでもタキタテと一緒に帰っているのはどう報告したものか悩んでいるのもあるが、やはり気鬱だったからだ。
危機に直面していた帝国にとって間近の危機を取り除いてくれたことに感謝こそすれ文句を言うつもりはない。まだ黒曜樹の価値を知らないこともあるが。
だがニクスはなまじその価値を知るが故に苛まれていたのである。
不安な心を静めるためか、手が無意識にタキタテを撫でる。“もふリエ“のシステム外スキル、手ブラ(手漉きブラッシング)であり、熟練度が高い者ならブラッシングする方もされる方も大・満・足!というものである。柔かな毛並みが指と指の隙間をくぐり抜けていく。本当なら喉元を撫でて上げたいのだが、流石に騎乗中は危ない(【結界】と【人馬一体】により落ちることはない)のでやめる。代わりに?ニクスはその身を横に、俯せるように頬を押し付ける。
ただの馬なら負担が大きいどころか走行の邪魔になるそんな体勢もタキタテにはなんの妨げにはならない。
「……タキタテ、あなたものすっごい強かったのね」
脇腹の辺りに手をまわすと、暖かいもふもふの内側にしなやかな筋肉の抵抗がある。普段ゴロゴロしていておっきなねこのような気でいたがやはり虎は虎(の魔物)なのだ。
一方でタキタテは竜を相手に勝ったつもりにはなれない。短時間の制限ありで全力を出してなんとか凌げていたと自覚していた。正直油断していたのだ。自分より強い相手がいなかったから。タキタテは鍛え直さないとダメだなと考えており、自分が強いなどとは思っていない。
……さわさわ。タキタテの身体を優しく撫でていた手が止まり、力なく垂れ下がる。精神的にひどく
疲れたところにやわやわと温かくもふーな毛並みに対抗出来るはずがなかった。
タキタテは歩みを少し緩めた。
ご覧いただきありがとうございます。
報告の方でも上げましたが、書いている途中で内容が消えてしまい、書き直し中です。同じ内容のはずなのに文量が減っている不思議。かなり短いですが一旦投稿します。




