ふらぐさん、訪れる
某有名作品にほぼ同名の技があり、読んでいたことで無意識に使っていたと思われるので修正致します。
【刺突術:阿修羅・砕】(高速の突きを無数に繰り出し、相手の防具を削り取る)
↓
【刺突術:阿修羅・穿】(本来点でしかない突きを無数に、無尽に放ち面で制圧する)
「ふぁ~、退屈だなぁ。何か起こらないかなぁ」
今日のやるべきことをやってしまったニクスはお手製のハンモックにその身を預けて、ゆらゆら揺れる頼りなさを楽しんでいた。
結界によって外界からの紫外線や、熱虫などを遮り、内側からは【属性魔法(氷)】による冷却した空気が出ていかないようにしてあるので、体温によりじわじわと温度が上がっていくとは言え、遥かに快適な空間が出来上がっていた。
「ニクス様、確か以前教えて頂いた言葉で“ふらぐ“とか言うのではありませんでしたか?」
ぴっちりとしたスキニーなスーツ風の格好のメェテルは暑そうにも関わらず汗一つかかずにニクスの傍に侍っている。
ニクスは何もイジメているわけではない。
「メェテルも一緒にどう?」
と聞いたところ、
「ニクス様に余計な負担をかけては執事としてのなおれ。しかも結界の中が温まるのが早くなってしまいますので」
と固辞されてしまった。
いたたまれないので、かき氷を錬金術で作って差し出せば、
「ありがとうございます。大事に取っておきますね」
いや、食えよ。かき氷を取っておくってなんだよとニクスは心の中でつっこむ。
まぁ、あげたものをどうしようと勝手なんだけどさ。濃い碧色のシロップがかけられたかき氷は異常に細かく削られていて、口溶けはいいが同時に溶けやすい。作った側からすればおいしく食べて欲しいものだ。
最も苦労というか、手間は一切かかっていないのだが、気分の問題だ。
かつて、真夏の暑い時期に、かき氷を食べなきゃ(結界で快適なため、気分的な衝動)でいつでも最高のかき氷を作れる用にしようとしたことがあったのだ。
魔法師のスキル【属性魔法(水):アクアウォール】で空中に水の壁を張り、【属性魔法(氷):フリージング】で凍結させる。
それを[剣聖]のスキル【剣術(刺突):阿修羅・穿】(本来点でしかない突きを無数に、無尽に放ち面で制圧する)を使い、きめ細かく削るという工程を記録してあるのだ。尚、獲物はアイスピック。
実のところシロップのほうが手間がかかるのだが、それも異次元倉庫の中で出番を今か今かと待っている。
GAAAAA!
くつろいでいたニクスは突然の衝撃波で揺らされハンモックをひっくり返されて落ちる。
「…たたたたた。何?タキタテの【咆哮】よね?」
お尻をさすりながらニクスが言う。
「…ふらぐ、来ちゃったみたいですね?」