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混沌

 接しているうちにだんだんと帝国が気に入り始めていたニクス。

門番の兵士を通じて、寒冷化問題に困っているのを感じて、ついついこぼれた自分の発言に恥じらい、【無間むけん】を本能的に発動させてその場をすり抜けていた。


 元々は自由気まま、好き放題に生きたかっただけだ。

それがどうか、今はいろいろなものに縛られているのに気分は悪くなく、むしろ……。


「あ、この街を治めている人の場所とか聞いておけばよかった。まぁ、セプテムを連れて来て聞けばいいかな。」


 流石にもう一度あの門番と顔を合わせるのは遠慮したかったのである。


 それにプルーヴィの街に入ってから妙に視線を感じるのだ。ジロジロと直接自分を見ている者はいない。


 だが確実に周囲から探られているのが分かる。

そしてニクスもまた、プルーヴィの街を歩いていると違和感がある。帝都と合わせて三都市と呼ばれるプルーヴィだが、王国基準で言えば街と言う方が近い。さすがにテュッシレイジよりは発達しているし、人口も多いが。


「なるほど、身体が上下しないんだ」


 滑るように身体を前へと進める市民たち。それは買い物籠を持ったお姉さんですら、である。

帝国の前線都市、または攻略都市と呼ばれる未開地と接する地に住まう者たちである、帝国民の中でも生え抜きの武人が集っているのだ。


 であれば、足を高く上げて歩くニクスを見て、


「あの子はなんだ?親とはぐれたのか?」


「あれは他国から来た子か!?」


「かわいい、まさか妖精!?」



「「「俺が(私が)守らないと!」」」


 などと見る人見る人に思われていたのだとは気づくよしもなかった。


 人目を避けるように路地の入り組んだ方へと向かうニクスと慌てる周囲の帝国民。


 視線を全て振りきったと思った瞬間に【転移】したニクス。

 一方で消えた少女に戸惑い、神隠しだ、人攫いだと騒ぐ人々。プルーヴィは混乱に見舞われた。


 

 そうとは知らず、テュッシレイジへと【転移】したニクス、跳んだ先はセプテムの寝起きしていた部屋である。滞在していた時間が一番長くイメージに残っていたから、と言うのが建て前で面倒臭いからというのが本音だ。




「くぁwせdrftgyふじこ!“#$%%&’に“ゃああぁあああ」


 セプテムの部屋に姿を見せるや否や、瞳に金色の輝きを纏わせ再び【転移】するニクス。


「……なんだか私が覗きをしたみたいじゃないか……?」


 テュッシレイジの門番たちに詰め寄られ質問詰めにされ、ようやく解放されたセプテムは身支度を整える最中であり上半身裸の状態で一人ごちたのであった。



 

 次にニクスが咄嗟に【転移】した先は安心安定のホームである牧場だった。

菫だったころから異性とは縁がなく、あまり免疫のなかったニクスは脳裏にチラついたセプテムの半裸に顔を赤面させていた。ブンブンと頭を振ったところでいっこうに朱が引く様子はない。


「ニクス様、どうかなさいました?」


 テイムした魔物と人間の間にはつながりが生じるため、ニクスが帰還したことに気づいた魔物たちは持ち場を放棄して集いつつあった。たまたま知覚で作業していたメェテルが目にしたのはニクスが頭を左右に振っているところだ。


「ニクス様!」


 慌てて駆け寄るメェテル、上気して熱い顔は赤く、見られるのが恥ずかしいニクスは、


「なんでもないっ」


 とどう考えてもなんでもなくない様子で慌てて再度逃げるように【転移】した。

ゲームであった頃は発動すれば基本安全設計で同じ結果が生じるであろう【転移】、慌てて駆けながら思考は乱れきった状態ではうまくいかず、


「なっ」


 体勢を崩したまま、セプテムにのしかかるように跳んだのであった。


「何事ですっ!?ま、まぁ!」


 転移した際に運動エネルギーは失われており、体重も軽いニクスであったがさすがに倒れ込んだ音と、衝撃で倒れた調度品の音などで騒がしく飛び込んできたマーサが見たものはセプテムを押し倒すニクスの姿であった。


「ち、ちがっ」


 慌てているニクスに余裕があるはずもなく、セプテムに抱き着いた格好のまま【転移】する。


 プルーヴィの雑踏である。


「居たぞ!さっきの少女だ!」


「あの野郎が人攫いか、帝国でよくもそんな真似をしやがったな」


「……むしろ、あの女の子の方が押し倒してない?」


 中には冷静な者もいるようであったが、おおむね殺気だっていた。

原因はニクスであるが、ここで察しろと言うのはさすがに無理であった。


「ねぇ、ニクス。君、何をしたの?」


 冷や汗をかきながらセプテムがなんとか尋ねるが応える暇などあるはずもない。

慌てて身を起こすとニクスの手を掴み駆け出したのだった。


「野郎!まだ逃げる気か、往生際の悪い」


「野郎ぶっ殺してやる」


ひどく物騒な声が聞こえてくる。

プルーヴィに来たことはそれほどなかったが、そこは皇子である。主だった建物から現在地を推測すると一点を目指して駆け出した。プルーヴィの領主の屋敷だ。

何がどうなっているかわからないが、そこまで行けば事態の改善が図れる……はずだ


     と思っていたがそれを遮るように目の前に小隊が現れる。


「何事だ!」


 中心の、おそらくはリーダーと思われる体格のいい男が苛立ったように声をあげる。

その間にニクスたちを追いかけていた市民たちが追いついてくる。


「ソイツらを捕まえてくれ!人攫いだ」


 ギョッとしたのはニクスとセプテム。

さっぱりと事態が掴めず、ニクスの方を見たセプテムにニクスも顔を横に振り、知らないと伝える。


「あにぃ?この帝国でそのような不届きって……セプテム、セプテムなのか!?」 


「……兄さん」

 牧場のメンバー(タキタテを除く)は皆ショボン。

メェテルはニクスに何かあったら人間たち許すまじと息巻いている。


 つまり、ニクスを中心としてどこもかもカオス。

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