翔ぶが如く 前編
南から北々西へ、帝国方土を二分するように一条の残像が走っていた。それはすぐに消えてしまうものの、飛行機雲に似ていた。
最も実際には舐めるように地を翔けていたのだが。
もちろんそれはニクスである。ただし、その姿は馬上、もとい虎上にあり、彼女自身はこれといって何もしていない。戦士系列の分岐派生職[騎士]の【騎乗】スキル、その上位互換である[上級騎士]の【人馬一体】スキルによりタキタテとニクスは最早文字通り一体となって翔けていたのだ。
幸い、虎で魔物であっても【人馬一体】は無事に働いた。ただだらりと乗っているようにしか見えないが、ニクスは殆どタキタテの負担になっていないし、ニクスもまた疲労がほとんどない。
それに加えて、タキタテとニクスを覆うように結界を纏っている。風圧を外から中に通さないように指定してあると同時に、結界の形状を流線型にしてあり、向かい風は左右に、そして上へと逃がしている。これにより、発生したダウンフォースにより、踏み込んだタキタテの蹴る力が身体を浮かび上がらせるのを防ぎ、前進することに無駄なく力が働くのだ。
風を切る感覚がないことは少し残念であったが、ニクスを乗せて走るタキタテは非常に満足げである。
一方でニクス、結界により、内から外へと“ニクス自身“を通さないようにしている。すらりとした腿で鞍を挟み込む必要もない。むしろ鞍自体ついておらず、長毛の体毛は高級品の絨毯のようで、座り心地は最高、気を抜くと眠ってしまいそうであり、同時に眠ってしまったとて問題はない。テンプレである、馬車に乗ってお尻が痛いということとも無縁であり、それが当たり前だと思っているが、文明が失われ最高級のマジックアイテムとして長久の時を越えたものを除き技術の失われた馬車が普通となっている。
そうしないのは、ひとえに友人同士で旅行に出かけ、運転手以外眠ってしまうのに似て、良しとできなかったからだ。加えて、タキタテに対して怒っていたにも関わらず、乗せてもらわずにはいられず、どことなく気まずかったからで、スッキリとしない内心にふて腐れていたのだ。
事はセプテムのいた屋敷を出た時による。
こんばんは、ご覧いただきありがとうございます。
先週末には投稿予定だったのですが、24日まで急ぎの予定がリアルで入り、時間がとれず、短くなりますが、前後半に分けて投稿です。
申し訳ありませんが、ご容赦くださいませ。
それでは春の訪れが感じられそうになってきましたが、体調にお気をつけて。




