帝国民
「ともかく、より詳細な情報が欲しい。できれば帝国方土の地図も」
この世界においては四国は協力しあっており、攻め合うことはほぼない。であれば地図の、国の地理情報はそこまで機密扱いではないものの、やはりおおっぴらに見せるものではない。
しかし、セプテムは机上に最も大きい地図を躊躇なく広げたのである。
「今我々がいるのがここだ」
そう言ってセプテムが指指したのは帝国方土の南部、テュッシレイジだ。セプテムへと顔を向けたニクスは無言で頷く。牧場にあった地図は最新ではなかったものの、どうやら間違っていないようだ。
ーーーだが、
「何というかその、妙な配置だな」
地図の全体図を見てニクスが思わずつぶやいてしまう。
王国は段階を踏んで開拓していった名残が見てとれる。
しかし、帝国はそうではない。帝都と2つの都市があり、それぞれから四方八方にバラけるように村や町が散立しているのだ。
「……帝国の民は自由だからな。元々は各地に散らばった者たちが好き勝手作った拠点で村というほどのものでもなかったのが、力のある者の拠点が大きくなって村、町となっていった。」
苦笑いしつつ、セプテムが応える。
「初代皇帝の残した言葉があって、“我々は魔物によって日々住家を終われている。とは言えそんな魔物を狩って日々の生計を立てているのもまた我らである。されば、互いに命を奪い合う関係ではあるが、同時に共存せねばならない。無駄に命を奪ってはならぬ。奪った命を無駄にしてはならぬ“と。それゆえにそれぞれの拠点はある程度離して作られています。正直、魔物の住み拠の中にポツンと村や町をつくる神経は理解しがたい。だが不思議と悪くもないと思うのだ」
そう続けるセプテムは満更でもない表情をしていた。
「話を戻そう。今回の事件の発端は“都市プルーヴィ“の周辺の町、村からの救援による」
セプテムが帝国領土、未開地と接する北西部を指差す。
「救援要請の順番は?」
ここまでおとなしく話を聞いていたニクスが尋ねる。
「まずは“アマドゥヴィエル“、続いて“トーレウ“、“パースネイジ“と“フラゴン“がほぼ同時で“ローレリズム“が最後だ。要請を受けたプルーヴィがあまりの事態に帝都ニーウ゛に早馬を寄越した」
セプテムが地図を指差しながら説明する地は北部の未開地との最前線だった。
「地質なんかで変わるかもしれないけど、順番と位置関係からしたらここか?」
ニクスがトントン、っと地図の一点を指す。
「ーーー黒曜の森。
不活期であっても色濃い葉が落ちない木々が生い茂り、光が地面に届くことがないことからそう呼ばれている。そして、“方々“が去られてより、帝国が越えられない未開地との境界線だ。ニクスもやはりその結論に至ったか。私も腕利きの斥候を放ったが未だに戻っていないのだ」
最後の方は眉間にシワを寄せてセプテムは苦々しげにそう言った。
「ここからの距離は?」
「……馬で単騎駆けで一日、魔物に襲われなければ、だ。」
それは与えられた猶予をもってして絶望的な状況であったが、
「……ついでに支援物資を届けるとして、まぁ、何とかなるかな?」
セプテムは驚くことになる。
「届けるのまでしてくれるのか?」
「え?だって私が届けるのが一番手間がかからないでしょ?」
異次元倉庫からの出し入れ、重さの無視と間違いないことであった。
「プルーヴィまで持っていけばなんとかできるよね?ああ、でも差配できる人がいないとダメかな?誰かに一筆書いてもらえる?」
流石に見知らぬ少女が、
「ちわー、救援物資届けに来ましたー」
と言うわけにはいかないのだ。
「なら私も一緒に行けないか?人任せにするには些か不安だ」
……やはりセプテムも帝国の人間なようだ。言葉とは裏腹に、ニクスについていったほうが面白そうだ、とばかりの表情だった。
いつもご覧いただきありがとうございます。リアルが忙しくて更新頻度が低く、申し訳ありません。
評価が500ptを越え、閑話を入れようと思いつつも、キリのいいところまで書いてからの方がいいかな?と思ってたら600pt近くなってる!?
BM、評価ありがとうございます。
あんまり夜間にPV数が多いと心配になってしまいますwどうかお身体に気をつけてくださいね。




