帝国の歴史
「ニクスは帝国の成り立ちについてどれくらい知ってる?」
冷えきっていたお茶を口にして一瞬表情を歪めながらセプテムが尋ねた。
ホーム(拠点)は王国方面だったが、各方面の進捗は気になって情報収集はしていたのでおおよそのところは知っていたが、よく知ってるとは言えないし、それ以上に空白の500年程がある。
「まぁ、人並み程度には」
そう答えるしかなかったのだった。
セプテムはセプテムで困ったように笑うニクスに疑問を覚えたが、
「前置きが少し長くなって悪いけど簡単に話させてくれ。元々帝国方土は……」
「待った待ったー!」
早速話を遮られるセプテム。
「“方土“ってどういう意味?」
わずかの沈黙の後にセプテムが答える。
「すまない。他国の人と話すことが少なくて気付かなかったが、これは帝国の独特の言い方なのかもしれないな。帝国方面の土地のことを“方土“と呼んでいるのだ。または帝国の管理下にある土地を“領土“といい、そうでない地に対して使うこともあり、そこは文脈で判断だ」
ふむふむと頷きながら、
「おーけーおーけー。腰を折って悪かった。続けて」
「ああ。帝国方土は平均的に温度が低く、痩せた地が多かった。それゆえこの地に暮らそうと思う人間は少なかったのだ。しかし“方々“の降臨によって少し風向きが変わった。“方々“の内の一人、後の初代皇帝、シグムンド・ルグリア・ド・オーズを中心にした一派だ。彼が言ったと言われている、『何もない?あるさ、宝の山が。それも俺達の独占だ!』という言葉は帝国の男たちが幼少時に聞かされて一番興奮する台詞です」
ニクスは苦笑する。詳細を知っているわけではないが、確かに帝国を拠点としていたプレイヤーはそういう人種だった。
荒野が多い帝国方土ではあったが、何でも食べる、生命力の強い魔物たちにとってはそれほど苦ではなかったのか、むしろ厳しい環境で生き残るためか強力な魔物が多かった。
帝国を拠点とした真人たちは苦難上等とばかりに彼らに挑み、暴れ回った。持ち帰った素材は彼らの防具となり武器となり、余った分は売り、その金で回復薬を買って更に先へと進むのだ。次第に帝国方土、大聖山の麓に素材を買いに来た者や回復薬を売ろうとする者が集まり集落となった。
そしてよりよい素材を求めて他国から真人たちが集まり始め、集落は村に町にとその規模を大きくしていった。
そんな懐かしさや呆れといった様々な感情が入り混じったニクスの表情にセプテムの視線は引き寄せられてしまう。
「魔物狩りを通して物が集まり人が集まり拡大していった拠点は砦となりました。それが帝国の町です。だんだんと前線は伸びて行きましたが、ある日“方々“が一斉に消え去ってしまいます。悔しいことに、“方々“の力なしでは前線を維持することもかなわず後退を余儀なくされました。今帝国の領土と言えるのは最盛期の三分の二といったところでしょう」
悔しそうに表情を歪めるセプテムであったが、ニクスはむしろ感心していたのである。
真人つまりプレイヤーと現地人であったNPCとでは圧倒的な力量差がある。正確にはプレイヤーに与えられる恩恵が大きすぎるのだ。クラスによる能力補正にスキル補正。スキルの熟練度補正といった複数の補正がかかる。ちなみにスキルは現地人でも覚えられる。ただし真人たちクラス持ちに比べて習得難易度は非常に高い。
そんなわけであるので、真人たちがいなくなった後も領土を守っているだけでもたいしたものなのだ。事実、王国は最盛期の半分以上の地を失っている。王国は真人の力に頼り過ぎていたということだろう。
「とここまでが前置きになるそして今帝国が抱えている問題は最近になって起きたものだ」
こんばんは、いつもご覧いただきありがとうございます。そしてBM、評価を頂き嬉しく思っております。
全然雪が降らなかったのですが、1月も半ばを過ぎていよいよ積もりました。運転などに差し支えがあるのは嫌なんですが、全く積もってないのも味気ないっていう我が儘なことを思うんですよ。
庭に雑草が生えるし、後々虫が沸いたりと嫌なこともありますしね。
とまれ雪も積もり温度が下がりましたので皆様におかれましても風邪などひかれませぬようお気をつけて。




