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違和感と第六感

 どうも帝国において別荘とは魔物を対象とした“狩り“を行うための各地での拠点を意味するらしい。自分の外見を最大限に利用して町民から聞き出した成果である。


「戦闘民族め」


 町の中でも大きめの屋敷の門の前に立ったニクスが零す。


 王国は国民を守るため、外見より強固さを重視した造りが際だっていたが、帝国はと言えば、家なんかは雨風を防げれば十分、その分を剣や防具に費やし、住む人間こそが門であり門番であると言った具合だ。


「何者かが屋敷に侵入しました!」


「何だとっ!?久しぶりの獲物だ!早い者がちだぞ!」


 と屋敷の主が枕元ならぬ手元にもって寝ている剣を片手に率先するのもおかしくはない、そんなお国柄なのである。


 どういうことかといえば、


  つまり門番などいないのである。


 非常にウェルカムな門を前にニクスが思わず言ってしまったのも無理はなかったのかも知れない。しかし面倒な者がいないとなれば好都合、とばかりに堂々と門をくぐるニクスもニクスだった。まがりなりにも皇族の施設である。先触れを出して面会の許可を得るのが普通であり、それも貴族やお抱えの商人などの場合である。平民が簡単に出向ける場所ではない。


「ふんふふん、ふっふんふっふーふん♪ぬ?」


 軽やかに鼻唄混じりで歩いていたニクスは足を止める。

それは違和感。

スキルでもなんでもない根拠のないものだが、ニクスは侮ってはいなかった。むしろ非常に重視していたと言っても過言ではない。


 これまでの経験と無意識で五感が感じ取っている情報が紡ぎ出す推測に従い、


     【生命探知】


 を間をおかず発動する。熟練度の十分の一mを半径とする、球状の範囲内の生物の反応を感じとるスキルであり、熟練度の上昇に応じてカスタマイズも可能になり、今は人間限定にしている。多数もとい無数のスキルをもっているニクスは総じてスキルの熟練度が低いものも多いのだが、【生命探知】はカンストの9999であり、おおよそ1kmを半径とする半球状の空間内を知るところとなる。情報収集がてらの散策で【自動地図化】によってテュッシレイジの町の形状も掴めている。二つの情報を重ね合わせて見れば……、


 この屋敷には圧倒的に人がいないのだ。


 人のいない家屋はすぐに傷むと言われる。ましてや皇族の所有する地とあれば尚更異常だ。

なるほど、人がいるかどうかはなんとなく感じられるものだ。スキルを使用していなくとも感じとっていたのだろう。


 屋敷の奥の2階に二人分の反応があるだけだった。いくら屋敷に無頓着といえ、屋敷の規模から言えばあまりにも少なすぎた。当初皇族の別荘があると知れた時の、高揚感はすでになく、わけがわからなくなったニクス。


「……うん、本人に聞けばいいか」


 早々に考えることを放棄して、向かうのは奥塔。人気がないのをいいことにまっすぐ行ってもよかったが敢えて外を行き、目当ての塔の壁面を【縦横無沈】で歩いて登る。


  つまり、完全にニクスの趣味だ。





ーーーそして話は本章冒頭へと至る。

 



 やっと章頭へと繋がりました!

話の組立を間違ったと思わないでもない……ごめんなさい。もっかい読み直してくれても……いいのよ?

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