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引き継ぎ

「……んんん」


 と悩ましげな声を上げていきなりパチッと目が開く。案外目が大きいんだな、と一緒に住んでいても知らないことがあるんだなと思う。であればタキタテのこともメェテルが言うようにわかってないこともあるのかもしれない。


 目に続いて口もあんぐりと開けていたメェテルはようやく現状を把握できたのか、一転目を細めて顔を埋めてグリグリしてきた。柔らかな髪が顔を撫でていく。


「ううん、メェテル、くすぐったいってば。おはよ、体は何ともない?」


 一旦身を離して身体を起こしたメェテルは進化したことはまだわかってないのだろう、少し不思議そうに顔を傾けた後、


「……そういえば身体が何だか重いような」


 普通、進化を経れば、身体能力が上がり、身体は軽く感じるもので何か異常があるのではと思うところだが、この時ばかりはニクスは納得した。

髪、【人化】していなければ全身の体毛が伸びていたからだ。そして何より目の前で形を変えるたゆんである。


 上半身を起こしたことで揺れたそれは間違いなく昨晩より大きい。中身は子供なのに……むぐぐ。憎々しげに谷間を覗き込むニクスであった。


「どこを成長させてんだぁああ!」


 そんな声が牧場に響いた。




 とりあえず着替える二人。八つ当たり気味にバッサバッサと脱ぎ捨てるニクスとそれを拾って畳むメェテル。その光景は見かけ通りの大人と子供のようだった。


「それで、他に不具合はない?」


 ニクスが尋ね、


「バランスがちょっとおかしい以外は特に……あ!クラスが執事から執事スチュアートになってます!それで新しいスキル、【代行】を取得したようです」


「それはどういうものなんだ?」


 少し興奮を隠せない様子でニクスが食いつく。特殊なクラスのため、ニクスも知らないスキルだったのだ。


「えっと、主人の許可を前提にスキルを譲渡して貰うスキル…?ニクス様、牧場の仕事のいくらかを私にお任せくださいませんか?」


 しばらくの沈黙の後ニクスは首を横に振った。


「勘違いしないでね。メェテルのことを信じてないわけじゃない。ただ私はルーチンワークを通して皆の健康管理とかもしてるから自分でやりたいんだ」


「……ニクス様、どうやらこのスキルはニクス様から奪うというわけではないようです。もしもの時のために私にも教えておくくらいはダメですか?」


「メェテル。メェテルに言われてさ、ちょっと考えたんだ。私は錬金術に驕ってた。繰り返しの日々に飽きがあったんだと思う。だから王国での出会いは楽しかった、それは事実で否定できない。でもメェテルたちをないがしろにしてるつもりはなかったんだ。メェテル、新しいことをしようと思うんだ。まだ知らないことを。帝国は寒く、尚武の国だ。そこには必ずあるであろうものがある。」


 メェテルは手を組み人差し指を唇に当てて考えていた。こうやってるとちゃんとしっかり者の秘書風なんだよな、とニクス失礼なことを考えている。降参したメェテルに、


「酒だ。新しい酒作りを覚えて牧場の食生活を更に充実させる。だからメェテル、牧場を任せてもいいかな?」


 「はいっ!お任せください!ニクス様も思うようになさってきてください。」


 獣舎の掃除用のスキルなどをメェテルに教えた。錬金術は特殊なようでニクスのように自在にというわけにはいかなかったが、必要な作業分は教えることが出来たのだった。


「それじゃ行ってくる」


 牧場の面々に見送られてニクスは帝国へと【転移】した。


 

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