閑話 研究者の悩み
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ーーーとある研究者の主筆より。
今日、“モー“と呼ばれている魔物だが、どうやら正式な呼び名ではないようだ。
私が古い書物を散見してきたところ、ある魔物が度々出てくるのだが、その魔物の特徴・特性が“モー“に酷似しており、呼び名が変わったまま伝わったのではないかと仮定していたのだ。
【鑑定】と呼ばれるスキルがある。
対象の詳細を知ることの出来るスキルであるが、その対象の差によって【道具鑑定】【植物鑑定】、そして【魔物鑑定】といった幾つかに分けられるようだ。
私が疑問に思っているのは、かつて“方々“がおられた時、今より多くの【魔物鑑定】持ちがおられたはずである。それにも関わらず、“方々“がおられた時代、“ロストサーガ“の中期から呼称が変わっていることだ。なぜ正式な名前がわかっていながら異名の方が一般的になっているのか。
そしてこれはどうも王国のみのことらしい。とは言え“モー“がいる領土といない領土があるので、鵜呑みには出来ない。
研究が滞っていた私は久しぶりに自室を出て食事を摂りにいった。タイミング良く、施設内の食堂で知り合いと顔を合わせた私はいろいろな話を聞かされ、引きこもっていた間に様々なことが起こっていたのだと知る。中でも王が変わるのだと言うことも気づいていなかったことに驚き、呆れられた。なんでももうすぐ新しい王の即位披露があるのだという。
まがりなりにも、王立の研究所にいるのだ、流石に新王の御即位を知らぬ存ぜぬと言うわけにはいくまい。
先の王はまるで興味もないようで、感知せずという態度だったのである意味ありがたかったが、新王の意向によっては研究所は拡小、自分なんかの研究は役立たずとして放逐されるかもしれない。
ハァ。せめてこの疑問くらいは解決しておきたいものだ。
そしてお披露目の日、想像もしていなかった言葉に普段は冷めている自分の心までが沸騰したようだった。お伽話の中の存在が現実になったというのだ。
新王の意思表示にも沸き立つものがあったが、“方々“の降臨にもっていかれたのは仕方ないだろう。その日は興奮で寝付けなかった。
子供か!と思わなくもあいが、自分の中にもこんなところが
あるというのは悪くはなかった。
なんて思ったのも始めだけだった。“方々“がそこら中を歩いていた
時代ならともかく、たった一人の重要人物と自分が関わり合うわけがないのだ。
そんな考えが裏切られようとはこの時の私には知るよしもなかった。




