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牧場の錬金術師 ~地雷職を極めた私はゲームだった世界に無双転生~  作者: 夢辺 流離
プロローグ ~ 怠惰なる牧場の一日 家族紹介~
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錬金術

「不思議、ってメェテルは何回も見てるでしょ?」


 とニクスが首を傾げて言えば、


「見たことがあるからって納得できるものじゃないですよー。むしろ見ているからこそどうなってるんだろうって気になります」


 フレンチトーストをジッと見ながら自分の手を合わせ、これまた首を傾げるメェテル。


 ニクスは苦笑せざるを得ない。

確かにそうだ。自分がメェテルの立場だったら同じように思うに違いなかったからだ。


 朝食と呼ばれた実質昼食を例として考えれば、何もなかった皿の上にいきなりフレンチトーストが現れ、しかも出来立てよろしくなのだ。

親しい仲でなければ、そもそもどこから出したのか、と食べるのを敬遠したとしてもおかしくはない。


「大丈夫よ。ちゃんと作ったんだから。さっき採ってきた卵と牛乳、保存してある糖液と小麦粉なんかがちゃんと減っているはずよ」


 言葉にはいろいろと矛盾があった。

ちゃんと作ったと言う割には減っているはずなどと。


「いえ、ニクス様のことを疑うことなんてありえません。そこは問題ないのですが調理の過程はどこにいったのでしょう?」


 綺麗なメェテルの子供っぽい仕草にギャップ萌えをしているニクスだったが、このままだとメェテルのしょくじが冷めてしまいそうだったので、


「メェテル、食べながら聞いて頂戴」


 と食事を勧めながら大雑把に説明することにする。メェテルには当牧場の主であるニクスの執事として支えてもらっているのだ。知っておいてもらった方がいざという時の判断材料になるかもしれない。


「私が[錬金術師]だってことはメェテルも知っているわよね?」


 メェテルが頷く気配がする。真剣に私の言うことを聞いてくれるのはありがたいが、ご飯冷めちゃうよ?早よ食べな?


「[錬金術師]として覚えるのはたった二つ。【記録】と【再生】。【記録】スキルを発動させて、オフにするまでの行動を記録し、【再生】スキルで瞬間発動できる、たったそれだけなの。」


 実際はそれほど簡単ではないし、いろいろと制限もあるが、そこまで話す必要はないだろう。


「今回でいえば、強力粉と砂糖、塩、水に生地種を混ぜて発酵、次の種にする分をとっておいてガス抜きして再度発酵。成型して焼成。ここまでがパンを作る過程ね」


 パパパっと言うと、メェテルは目をパチパチとさせている。


「出来上がったパンを【属性魔法:フリージング】で瞬間冷凍の後自然解凍、卵液につけて一晩おいて、フライパンで焼く。まぁこれだけのことを“やったこと“にしたってわけよ」


 ニクスの言ったことを考えているのだろう。指を折って何か数えたりしている様子が伺える。


「あれ?でも調理時間とか全くかかってないですよね?それにフライパンなんかも準備してなかったですし。」


 そんな疑問が発せられる。


「材料に、調理の過程で必要になる、薪なんかがあれば設備などは要らないの」


 初めに設備がいるのに、一度【記録】してしまえば必要なくなるという初心者泣かせの仕様なのだ。


 この世界・・・・の“錬金術“は私の知っているソレとは別物だった。


 錬金術と言えば、卑金属を貴金属に変えようとした試みのことだが、この世界ではもっと俗物的な、『どうやって金を稼ぐか』を煮詰めていった結果の産物であるらしい。


 『安く買い、高く売る』これが基本であり、行商などはその典型的なものと言える。


 だが、町から町へ移動し売り買いを重ねるのもなかなかの苦労で、容易ではない。


そこで、『安く買い、加工して、高く売る』これで価値を増すことができれば回ったりしなくとも利益が出せるはずだ。


 そして『より稼ぐにはどうしたらいいか』を更に深く突き詰めた結果が“錬金術“である。安く買おうにも限界はあり、高く売ろうにも高すぎれば買ってもらえない。


『ならば同じ値段で売れるものを手間暇かけずに作ろう』


 わからなくもないが、常軌を逸したアイディアである。


語呂が悪いということで“錬金術れんきんじゅつ“と言っているが“錬金術れんかねじゅつ“と言う方がより体を表している。


 それはさておき、ニクスがあまり錬金術について話したくないのはそういうところからだ。現実に意識を戻したニクスは、こちらに向けられるメェテルの尊敬の眼差しに胸が痛かった。


「私もできるようになりませんかね?」


 そんな発言に驚き、顔を上げるとメェテルの表情は真剣だった。


 そんなことを言われると思ってなくて驚かされたが、ちょっと嬉しくもあった。多分メェテルは私の代わりを勤められるようになろうとしてそう言ったのだから。


「これまでメェテルができるようになったら、私が要らなくなって放り出されちゃうよ」


 みんなニクスのことが好きすぎて甘々なのだ。


「そ、そんなことはありませんっ!」


 メェテルにしては珍しい慌てた声が発せられた。


「冗談だよ」


「そんな冗談は嫌いです」


プイッとそっぽを向くメェテル。


「ごめんってばぁー」


「知りません!」


 しばらくメェテルは機嫌が悪かった。

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