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金の瞳

「勢いで手をとってしまいましたけど、どうやって、その、ことを進めるんですか?出来たらその、血が流れない方向でお願い出来ませんか?」


 言いづらそうにしていたフローレアが何とか言葉にしたのはそんな我が儘だった。


「戦いは嫌い?」

 

 何となく尋ねてしまったニクスだった。


「痛いのは嫌です。きっと誰だって一緒だと思うんです」


 返事を聞いて少し口角が上がるも、フローレアに暴力を振るっていたようであるスタットのせいでもあるのだろうと思えば怒りも沸く。


 だが、彼女の願いは無血革命である。

基本的にうまくいかないもののはずだ。

それでも彼女が願ったのは他人のための小さな我が儘。何とか形にしてあげたいとニクスは思った。


 荒々しく離塔を昇足音が響き始める。

フローレアの部屋の前で足音は一旦止むも、ノックもせずに扉を押し開けて来たのはスタットだった。


「何も口出しをしないことを条件に審問の場に参道させてやったが、口を挟むどころかその女を呼び寄せたのはお前だったのかフローレア!僕に恥をかかせやがって!」


 ツカツカとフローレアへと歩みよるスタットは腕を振り上げる。

その腕には革製と思われる鞭が握られている。


「キャッ」


 頭を抱えるように屈み、背を向けるフローレア。

空気を裂く音がして振り下ろされた鞭はしかし、フローレアに新たな傷をつけることはなかった。


 間に割り込んだニクスの左腕に黒々とした痣を刻み、真っ赤な血が白い肌を伝う。

骨までは達していないものの、流石に満足に動かすには支障があった。


 部屋の入口からはぞろぞろと全身を鎧で覆った者達が現れ出す。


「見ろ!何が真人だ!しょせんはお伽話の存在に過ぎない!鞭の一つもくれてやれば血を流すではないかっ行けっ!あれに手を叩かせるな妖しの術さえ使わせなければ恐れるに足らないぞ」


 流石にそう広くない部屋の中で2、3人ずつ襲いかかり、





    次の瞬間には地面に転がっていた。

男達の武器も鎧もなくなって、足枷となって身動きを封じている。


「言い忘れていたが、私はプレ…、真人の中では最弱だった。私に血を流させた程度で他の皆を推し量るのはナンセンスだ。」


「矢だ、矢を放て!距離をとって攻撃するんだ!」


 後続の兵士たちが矢をつがえ放つ。

ニクスはかわそうと思えば出来ないことはないが、背後にはフローレアがいる。わざとそういう狙いで射ていると思われ、兵士たちもスタットの命令で嫌々動いているようではなさそうだ。


「【錬金術】“No17 雨矢夢也うやむや“口に出さなくてもよかったか。というか7本程度に使うものじゃないんだけど」


 振り刺さるはずの矢は虚空に消える。


「馬鹿な!手は微動だにしていないはず…なんだその瞳はぁっ」


 しりもちをついて後ずさるスタットはニクスの目を指差しており、


    ニクスの右目では黄金の複雑な模様がゆっくりと回転していた。


ズルをするのが当たり前だと思わないように戒めとして感謝を形にするようにしているんだけど、お前みたいに形に捕われる者にも有効でね。私を殺したければ一瞬でこの首を切り取るくらいのことはやってのけないと、この通り…」


 ニクスの左目にも模様が浮かび、


「…完治。」


 流れた血は固まり一見して判断はつかないが、ニクスが淀みなく腕を動かすのを見れば疑う余地はない。


「…化け物め!」


 スタットが呟く。


「今頃気づいたのか?私の(心の)師が言っていた。『何かを使役して戦う者は自身が最強である必要性はない』とな。それに反対するつもりはないが、魔物が自分より弱い者に使役されると思うのか?お前は、家の家族を使えば四国統一も夢ではないと言っていたよなぁ?」


 ちなみに中段はハッタリも入っている。タキタテは出会った時からニクスより圧倒的に強い。


「鞭っていう武器は想定外だったけど、それももう通じない。」


 言葉もなく、ニクスの右目に金の光が走ると、スタットの右手から鞭は消え、スタットの足と腕が革製の拘束具で固められる。


 それどころか、弓を構えていた者達も皆降参する前に武装解除、拘束されている。


「フローレア、前哨戦はこれで充分か?」


 ニクスは振り返り尋ねてギョッとする。


「ダメです!全然ダメです!!私は血を流さないでと言いました。それはニクス様もです。ごめんなさい、ありがとう」


 ニクスの左腕に手を当ててほろほろと涙するフローレアがいた。


「すぐ治るから大丈夫」


 そう言いかけてやめた。


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