月下のお茶会 フローレア6
「…懺悔を聞いてもらえますか?」
胸の前で手を合わせたフローレアは薄く目を閉じて、俯き加減でそう言った。
「うん、いいよ」
対するニクスの返答は軽かったが、その口調は裏腹に生真面目だったので、
「ありがとうございます。今まで誰にも言えませんでしたが、誰かに聞いて欲しかった」
表情は青白く、睫毛が震える様子にニクスは二人を包む結界を張る。声が内から外に漏れないように。
「ニクス様も察しておられるようですが、確かに私も先王様の血を引いていますが、母は王妃様の側仕えに過ぎず、母と二人こちらの離れで暮らすようにと言い付けられました。当時の私は意味も分からず、ただ母といられることを喜んでいましたわ」
わずかに嬉しそうに、寂しさを交えた笑みを浮かべる。
「父…先王様は私たちを気遣かってくれていました。いつだったか、王妃様の声で私たちの元に通うのはお止めくださいと叫ぶのが聞こえました。『この王国で私に行けないところはない』とおっしゃって幾度となく足をお運びになられました。先王様はいつも謝ってばかりで、母はそんな先王様を慰めて日ごろの疲れを癒してもらおうと尽くす。どちらもお互いを思っていらっしゃるのがよく分かる光景でした。私にも専任の教師をつけてくださったり、自らご本をお持ちくださったり。恐れ多い事でした」
一旦息を整えて続きを話し始めるフローレア。
「私は幼い頃に読んだ、初代様と真人の方々の物語が大好きで先王様におねだりをして初代様の本を求めては母が血相を変えることが幾度と繰り返されたものです。ふふふ。陛下は王妃様と先王様との間に生まれた異母兄にあたります。ただ、その、恥ずかしいことですが、陛下を持ち上げて蜜を吸おうとする貴族と関わりだしたそうです。そして陛下の当時の教師が、私の方がよほどしっかりしている、と言うようなことを言ってしまったらしく、それ以降敵視されるようになりました」




