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月下のお茶会 フローレア

 ポンポンっと空からテーブルや椅子が飛び出してくる。

貴族が使うような物ではないが、丁寧に作られたのであろうことはわかる。手触りは滑らかで座るということをよく考えて微妙な曲線を描いたりしているようなのだ。


 そのまま飾っても良さそうな綺麗な刺繍のクッションが敷かれていて、何でできているのか、薄い生地にも関わらず優しく受け止めてくれそうだった。


 目の前がいきなり真っ白になり、少女は悲鳴を上げそうになるのを必死で堪える。そんなことをしてしまえば見張りの…監視の兵士が飛び込んできた夢のような出来事は泡のように消えてしまうだろうから。なお、ニクスも幽霊を想像してちょっとビビってた。


 それは一枚の厚い、しかしただの布切れだった。くるくると回りながら下降している。中心から外に向かって生地が波打ち、ニクスはピザ生地を指先で伸ばしているのを思い浮かべた。


 テーブルの上にふぅわりと降りると、波だった生地が一瞬バラの花のように形作られるが、それも一瞬のことで慣性で2回転ほどした布切れ、テーブルクロスは端をわずかに逆回転させてピタリととまった。


 少女はほぅと息をつき、ニクスはというと、こんな演出機能はないし、頼んでもないよ!と内心でつっこむ。


 その間もポットやらカップやらが忙しげに空を飛び、お茶会の準備がなされていくのは幻想的な光景だった。


 カップの中には綺麗な透き通った碧色の液体が注がれている。が、湯気は上がっていない。寒くはない季節だったが、夜に外で飲むのなら温かい方がいいだろう。ましてやカップなのだからなおさらだろう。


「ゴメン、これは冷たい方がおいしいんだ。飲んでも目が冴えるということもないし」


 つまり、カフェインフリーである。

ニクスの無作法も少女は咎めない。


 ニクスは率先して、茶菓子のクッキーとカップの飲み物に手をつける。


“毒はない“ということを示すためだ。

最も少女は気にした風もなく口にしていたが。


「これ、おいしいですね。最後にちょっと苦みがあるのに、嫌じゃなくって、むしろ口の中にスッキリとした余韻を残していくっていうか」


 ニクスはちょっと自由過ぎるだろと思った。


「名前をまだ聞いてなかったね。私の名前は知ってると思うけどヴィオレータ・ヴェルテニクスだ。教えてくれる?」


 少女はニッコリ笑って答えた。


「フローレアと申します。ヴィオレータ様」


 

 ちょっと短いですが。

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