閑話 馴れ初め
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一日当たりのPVが初めて1000を超えましたので感謝のおまけ投稿。
本編あくしろよ?
……。
タキタテはそもそも真っ白な体で生まれてきた。
“白虎“
読み方は“びゃっこ“ではなく、“はくこ“。
紛らわしい。百魔の王に次する虎という意味で名付けられたとのことだ。まぁとってつけたようなセンスである。
しかし、その強さに嘘はない。
白虎族は魔物の中でも恐ろしい身体性能を誇る。
タキタテはその中でも群を抜いていた。親はいなかったが、同族を群れが養った子だった。その頃の名前はもう覚えていなかったが。
まだ一月も立たないうちに、自ら狩りをこなせるようになり、半年で“百魔の王 空獅子“を倒してしまった。
空を飛ぶ、というちょっと反則な魔物だったのに、急降下に合わせたカウンター、“マッハねこパン☆“でKOしたのだ。
そこでタキタテは初めての進化をした。
普通であれば毛並みの柔らかい、ホワイトショートヘアードタイガーという種族になるのだが、タキタテは“黒纏虎“と呼ばれる名の通り真っ黒な体になった。
進化した固体は一目置かれる群れの中で疎まれ、群れを出るように言われた。
だがそれでもタキタテを慕うものが連れだったので孤独ではなかった。
ついてきた仲間を守ることで成長を加速させる。進化を経て身体能力を遥かに増したタキタテはより一層先へと進む。すなわち進化である。
“黒鐵虎“
濡れているかのような黒地の体に白い縁取りを入れたような姿は、無駄のない体躯と相まって美しくすらあった。
仲間たちもホワイトショートヘアードタイガーとなり、気づく。自分たちとタキタテの間にある圧倒的な差に。
そして彼らは別れることとなる。彼らはいずれ足手まといになることを恐れたのだ。
もしかすると、元々の群れでもそれをわかっていたが故の判断だったのかもしれない。
タキタテはさらに進化をした。
“暁暗虎“
体の半分が濃厚な紺、もう半分が輝くような銀白、瞳の色が紅と金という派手仕様だ。
元来生物とは背景に溶け込める体色のほうが襲うにせよ、身を守るにせよ好都合である。
その目立つ体は自然界において異常だった。
隠れたりする必要がない。タキタテが追いかければ逃げきれるものはなく、寝ているとしても襲いかかるものはいない。
まさに生物ピラミッドの頂点に立ったと言って差し支えなかった。
だが同時にひどくつまらなかった。
飢えることはなかったが、満たされることもなかった。
暇つぶしに自分の能力を試そうとすれば半日の間全力で走り続けられた。おそらくもう半日でもいけるだろうと思ったところで飽きた。
自分と同種の虎種の魔物の群れに会いに行ってみれば恐れられた。
酷く退屈で夢でも見ている方がマシとばかりに惰眠を貪っていたある日のこと、右腕に違和感を感じて目を開けると、
人間が腕を抱きまくらにしていた。
小さい、ーーーと言ってもタキタテにとってはどの人間も小さいーーー自分の半身と同じか、人間の方が綺麗な色の毛をしていた。
思わず見とれてしまい、ハッとする。自分以外の生物にここまで接近を許したことに対する未知の恐怖だった。その身じろぎに
「うぅん」
と声を発して、両手で動かないように押さえ込みながら手のひらに頬を押し付けてきた。
「んへへ~テイハンパツ~」
と意味不明なことをいいながらスリスリと顔を擦り寄せる。
何となく起こさないようにと腕を動かさないようにしてしまったタキタテ。
居心地は不思議と悪くなかった。
翌日右前足がちょっと痺れていたけれど。