事の発端
小説投稿初めてです。なのでおかしな文などがあるかもしれませんがご了承ください。作者、遅筆です。
「30歳の誕生日まで童貞を貫くと魔法使いになれる。」
そんな噂を耳にしたことはないだろうか?
そんなバカな、あり得ない、と言う人は多い。
俺、和田満も最初にその話を聞いた時にはあり得ないと思った。
だが、心のどこかで期待していたのだろう。何せ俺は当時29歳の誕生日を迎えた直後。もちろん、童貞だ。
だから、俺はすぐさまネットで「30歳 童貞」と調べてみた。
するとどうだろう。
実際に魔法使いになった、魔法を使える、空を飛べる、火を出すことが出来るなどと言った情報が目に飛び込んできた。
当時、俺はものすごく期待した。だから、それからの約1年間女性と触れないようにした。
そして迎えた30歳の誕生日。
俺が魔法使いになる日。
俺は母ちゃんにケーキのろうそくに火はつけないようにいっておく。自分の魔法でつけるためだ。
ちなみに、母ちゃんと同棲しているのはマザコンだからではないぞ! 2年前、親父が突如姿を消したからだ。
俺は、親父は適当で軽い感じのやつだったからいずれはいなくなるだろうとは思っていた。
だが意外にショックだったのはなぜだろうか?俺は奴を好いていたのか?まぁ、親父もオタク気味だったからよく話はしたし、3年前に一度だけ二人でコミケにも行った。
それでもいなくなって悲しいと思うほどではなかったはずだ。
ただ気になったのは親父にしては真面目な雰囲気だったな、いなくなる前は。せめてもの償いのつもりだったのか……?
おっと、少し話がそれた。まぁ、とにかく親父は意外にも格好良かったため、母ちゃんはゾッコン。だから、親父がいなくなってかなりショックだったのだろう。俺が止めなければ自殺なんてことも多々あった。だから同棲している。
そして、俺は30歳になった。目の前には火の付いていないろうそくのささったケーキ。
「見てろよ、母ちゃん」
母ちゃんにそう言い、ろうそくをじっと見つめ念じる。
ボッ! という音とともにろうそくに火がつき、母ちゃんが「わぁ」と感嘆の声を上げる……わけなかった。
所詮はネット。ましてや魔法使いになれるなどという現実味のない事。真実なわけなかった。俺は落胆した。母ちゃんからは白い目で見られた。
しばらくすると、悲しい、恥ずかしいという感情の他に新たな感情が生まれる。それは――怒りだった。




