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リース・アプ・レスティン王宮筆頭魔術師

宿に戻ると、エルナちゃんが私の存在を見つけ、手を振った。

「ロヴィさん!ロヴィさんにお客様がきていますよ!」


誰だろう。今の私には知り合いはいない。


宿の食堂へいくと、そこには見慣れたローブの男がいた。


「リース先生...?」私はこの男を知っている。絶対この場にいてはいけない人物だ。


「ロウェナ様...!?やはりここにおられましたか、オーラがこのあたりだと思いましてね!ご無事で良かった。あのくそアバズレと耄碌じじいから追放されたと聞いたときは、あいつらを呪い殺してやろうかと思いましたよ!ああ、美しい黒髪を切ってしまって、さぞお辛かったでしょう?ボロボロになられて、よく頑張りましたね..!その隣にいる男はだれです!怪しいですね!ロウェナ様、そいつから早く離れて!さ、こっちに!」


リース・アプ・レスティン王宮筆頭魔術師。彼は15歳の若さで魔術師試験に受かり、18歳で王宮付き魔術師となった魔法の天才である。彼の出した簡素版魔法転移円陣の公式は当時の魔術学会の歴史を100年早めたと言われている。私は后教育の際、彼から魔術を教わった。10歳年上のお兄さんができたようだった。


暗緑色の切りっぱなしのショートカットヘア、白斑の眼鏡からは切れ長の強い魔力をもっているだろう緑の眼が光っている。この場には場違いな美貌をもっていても、この食堂で彼のことを振り返るものはいない。強力な認識阻害の魔術を自身にかけているからだ。


(ロウェナ)「リース先生、落ち着いて下さい!今の私はロヴィと呼んで下さい。あと、もう貴族ではないので様付けは不要ですわ。この方は、父の、勘当されてしまいましたけど、古い友人ですわ。悪い方ではありませんのよ。私はこの通り無事ですわ。ご安心なさって。」


(キアラン)「リース殿、初めまして、ロヴィ女史の旅の同行をしております。私は世界の調整者が1人、衡国中書令閣下にお仕えいたします中書舎人、位は従四品、キアラン・ターンルートと申します。今は休暇中ですがね。お父上から道先案内人を頼まれておりますので。」


(リース)「怪しい。こいつ何者だ?私の鑑定眼をもってしてももやがかかっている。内在する魔法量もオーラと合っていない。こいつは絶対やばいですよ!世界の調整者とかわけわからないことをいいだすし!」


キアランは初対面の人にとっては確かにちょっと怪しいかもしれないなと思いつつ、リース先生のもとにいって耳打ちをする。「先生に教わったおかげでそんじょそこらの近衛兵程度では勝てないのはご存じでしょう?」


(ロウェナ)「キアランさん、こちらは、リース・アプ・レスティン様ですわ。ペンフォード王国の王宮筆頭魔術師をされている方で、私の家庭教師でもありましたのよ。」


キアランとリース先生は握手をするが、互いに目が笑っていないような気がする。がっちりと手を離さない。


(ロウェナ)「それはそうと、リース先生はどうしてここへ..?お仕事はどうされたのですか?」


リースは指をパチンとならした。あたりの空気が水中にかかったようにもやがかかる。おそらく盗聴防止の魔法をかけたのだろう。高度な術式だ。


(リース)「ロウェナ様、あなたが国外追放...された後、聖女が王宮に上がり込んできて私達に、美肌の薬を作れだの、食べても太らない薬を作れだの、挙げ句の果てには、学会中にもかかわらず乗り込んできて魔術を教えろだの、教会の力を盾に、好きかってしているんですよ。陛下や王子は、その態度をたしなめたりせずに好きかってさせてやれというし、もうやってられませんよ。仕事をやめてきました!」


私は倒れそうになった。リース先生という国の宝になんていうことを...リース先生は昔から自由な人だった。王宮魔術師になったのも、ベッドがふかふかで物をこわしても王宮が責任を取る。というからだった。そんな先生だから扱いには気をつけるべきなのに。先生も先生だが...。


(リース)「私がお仕えするのはロウェナ様だけと決めておりますからね。またお会いできて嬉しい限りです。これで身分差はなくなりましたしね!親の七光り野郎は変なところでつまづく呪いでもかけるとします。さ、ロウェナ様こんなところ嫌になったでしょう?私と一緒に私の別邸でゆっくりとまた暮らしましょう。私とあなたなら魔術を極められますよ!さあ魔術の深淵へ!高みへ!」


(ロウェナ)「あの、リース先生、私はここでの暮らしを続けようと思いますの。ずっと貴族の堅苦しさには嫌気がさしておりまして、解放された今は世界を見ようとキアランさんと回っておりますの。今のところこの街には滞在して市井に慣れようとしていますの。ですので、嬉しいお誘いで大変光栄ですが、お断りいたしますわ。いつか別邸にはお邪魔させて下さいませ。」


リース先生はキアランをにらみつけた。


(リース)「仕方ないですね。では何をされてたんです?そんな大きいかごをもって。こんな夜更けまで!」


(リース)「……それで、こんな夜更けまで籠を抱えていたわけですか」

私は今までの経緯を話した。


リース先生は腕を組み、私と籠、そしてキアランを順に見た。理解したというより、測っている目だ。


(リース)「薬草採取に、下層街の診療所、医工業ギルドの価格操作……ずいぶん厄介な火種に、首を突っ込みましたね、ロウェ――ロヴィ」


わざと名前を言い直すあたり、察しがいい。


「ですが」

私は一歩前に出た。

「先生なら、お分かりでしょう? これは偶然でも、感情論でもありませんわ」


リース先生は小さく鼻で笑った。

「ええ。だからこそ、私は乗り気じゃない」


その言葉に、空気がわずかに張り詰める。


(リース)「医工業ギルドは教会と癒着しています。鉱山も絡めば、国家案件です。そこに、国外追放された元王族と、身元不詳の調整者が突っ込む?悪いですが、勝算より破滅の絵しか浮かびませんね」


キアランがなにかをいおうとした瞬間、私は手で制した。


「先生。では、質問を一つ」

「このまま放置した場合、下層街の鉱毒症はどうなりますの?」


リース先生は、即答しなかった。


(リース)「……慢性化します。三年もすれば、労働者の死亡率が跳ね上がる。子供は育たない。五年で鉱山は人手不足。十年で街は衰退、教会は救えなかったと言い、誰も責任を取らないでしょうね」


私は静かにうなずいた。

「では、先生、何もしないという選択は、魔術師として正しいのですか?」


彼は眼鏡を外し、布で拭いた。 それは、彼が本気で考えるときの癖だった。


「……あなたは、本当に厄介なところだけ、昔のままですね」

そう言って、ため息。

「いいでしょう。条件付きです」


私は、ほっとした。


「一つ、あなたはは前に出ない。名前も、所属も、公式には一切使わない」

「二つ、殺さない。潰すなら制度でやる。呪いも事故も却下です」

リース先生は、私をまっすぐ見た。

「三つ、あなたが撤退を決めたら、私は即座に手を引きます」


「英雄ごっこに付き合う気はありません。あなたが生きて旅を続けることが最優先です」


私は、少し驚いた。

――条件は、すべて私を守るものだった。「……それで、先生は何をしてくださるのです?」


問いかけると、彼は指を鳴らした。

「鉱毒の成分分析、水系魔術による拡散経路の特定、それから――」

彼は、にやりと笑う。

「写本の術の改良版を教えましょう。一度写した帳簿を、改ざん不能な形で複製する術式です。ギルドが否定しても、魔術的真正性が証明されるものですよ。」


キアランが、珍しく感嘆の息を吐いた。「それは……強力ですね」


(リース)「でしょう? 私が本気で関わるなら、このくらいは」


私は、深く一礼した。「ありがとうございます、先生。無理はさせません。」


「ええ。だから条件を付けたんです」

リース先生は肩をすくめる。

「あなたは街を直す人で、私は少し歪んだ計測器」

「使い方を誤れば、壊れるのはあなたですからね」

エルナちゃんは、この国の法律だと働いても大丈夫な年齢です。(エレナ×→エルナ○)

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