表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

ブリッドヘン国地方都市コリガン①

断罪悪役令嬢ロウェナとカブ頭キアランは、無計画にも程があったので、路上にて取り敢えず今後の方向性を考えることにした。


「さて、こんな路上でしかも王都外れで作戦会議をしていたら追っ手がかかるかもしれないので、早めにどこへまず行くかを決めたいのですが、何分とりあえず世界を見たいと思ったものの、決めきれていないのです。後今の経済状況も...」


ロウェナは自分の資産状況が今後一年は慎ましく生きられる程度ではあったが隠しつつキアランに相談を持ちかけた。


「私の懐事情ならお気になさらず。ロウェナ女史はすごい方ですね。普通私みたいな異形の頭をしたものには順応までかなりの時間を要するものですが...。時折拒絶や質問攻めをしてくる方もいますが、依によって相談を持ちかけますか...」


半ば呆れた様子でキアランは答える。彼はまだ受け止められていないようだ。


 ロウェナ自身、生まれてこの方異形の頭など見たこともないが、種族が違う人々が世界にはいると本で読んだことがある。そういう人々は自分たちとは違う生活を営んでおり我々の前には姿を現さないものだと思っていた。しかし、本で見たものはエルフやドワーフ、妖精といったもので、このような頭をした種族は本ですら見たことがなかった。


 それでも、一度同行を許可した以上、会話相手として不足ない方であるので深くは気にしないことにした。それよりもまず優先すべきは寝食の確保であったからだ。


「...まあ追々なんでしょうね。それでは、ロウェナ女史は世界に行きたいと思った時、思い浮かんだことはなんですか?町の名前でなくても風景とか物とか人も良いんですよ。思いつく限り教えていただけますか。」


「そうですね。実は私、ずっと市民の生活を過ごしてみたいと思っておりましたの!祭りというのも参加したいですし、食堂というものに興味がありますわ!あとは、海です!本でしか知識がありませんの!あとはそうですわね、雪国や砂漠にも興味がありましてよ!色々出ますわ〜」


キアランは、嬉しそうに?頷き、

「ではまずは街まで行ってみましょうか。ご存知の街があるのであれば、転移術を使っていきましょう。」


私はその言葉に驚いた。転移術は高位術者、神官級でしか使えないからだ。ちなみに私は使える。


「キアランさんは一体何者ですの?私も一応使えますので私がやりますわ.」


「私は世界の調整者ですからこれくらいは朝飯前ですよ。それよりもほら日が暮れないうちにさっさとこの路上から安全な場所に行きましょう」


彼の持ちネタなのかなんだかはぐらかされた気がする。怪しい男に転移術を任せる訳にはいかないので、転移術式は私がかくことになった。


私は、一度だけ王太子と訪れたことがある隣国の地方都市コリガンへ向かうことにした。あそこは治安が良く、何より親戚が1人嫁いでいたからだ。


転移術式を書いている時、私はふと、キアランの顔をじっと見つめてこの方はこの頭のままでいいのかなと思った。あの街でももちろん人間以外はいないからだ。いや私の知識では人間以外の種族などどの国のどの街にもいないのだが...。


「転移術式発動!目標、地方都市コリガンの郊外へ!」私とキアランの足元に書いたワープホールが徐々に開く。キアランは「ほほうこれは久々の感覚」といっておりやはり見栄で使えなかったんじゃないかと思った。


コリガンの郊外に転移した。いきなり現れるのは目立つからだ。数百メートル歩けばコリガンの端の砦門にかかるが、何分私は身分証を取り上げられていたので、誰か通りがかった人に事情をうまく話してついて行こうと思った。


待っている間、私は貴族然とした格好だったので着替えることにした。キアランには悪いが見張りとして立ってもらっている。バッグに入れた下女の服を取り出し着替えた。

これで一見私とはわかるまい。


そして、一番大事なものが、挟みを取り出し、肩から一気にハサミをかけた。長い黒髪とはこれでお別れである。長年付き合ってきた髪とお別れするのはかなり辛かった。涙が出てきてしまって、キアランを少し待たせてしまった。色も変え、金髪に、紫の目も一般的な茶色へ魔法で変えた。


キアランの待っているところへ戻ると、そこには長身の若い男が立っていた。おずおずと、あのここに様子のおかしい方がいなかったか聞いた。


「おや、ロウェナ女史、随分と見違えましたね。髪をお切りになっても美しさは変わりませんよ。私のことはお分かりにならないで?顔を少し魔法で誤魔化したんです。だって目立つでしょう?」


カブの頭は普通の男性の顔になっていた。こうしてみると御者の格好をした貴族のようである。


「あ、それはそうと遠くに商隊が見えますよ。あの方々に相談しましょう。」


商隊は別の街から商品を持ってきてこの街で売るようで快く我々の同行を許してくれた。私たちは地方都市コリガンに入ることができた。


私の映えある第一都市目である。自由を感じることができた。これからのことなど今は考えず、その嬉しさに感動した。


街は地方都市であるものの活気付いており、衛兵も見回っているので治安や衛生状態は良さそうだった。


商隊の人は商人ギルドで登録をするそうで、入り口でお別れとなったが、何かあったら連絡してほしいといわれ、彼らの隊長、ハルンさんの住所を教えて貰った。いい人達である。私とキアランはとりあえず宿を取って翌日知り合いの元へ向かおうという話になった。


宿を見つけて泊まろうとしたが、ここでも身分証明書は必要だった。どうしたら良いか聞いたところ、ギルドで確認して欲しいとのことだった。私は本でしかギルドを学ばなかったが、失踪者や身元不明人でもギルドが身分を保証してくれるのは良い制度だと改めて実感できた。


 商人ギルド、医工業ギルド、冒険者ギルドの3つがこの街にはあったが、私が登録できそうなのは冒険者ギルドであった。キアランはすでに登録を済ませていたとのことだったので、要件の推薦人はすぐに充足できた。キアランに感謝である。あとは銀貨2枚で済むとのことだったのですんなりと登録することができた。


 キアランには推薦人のお礼も兼ねて、夕食をご馳走した。そこで今後の予定やこれまでの事情について話した。エールで乾杯しこの地方の郷土料理をつまむ。串にささった白身魚の揚げ物と、短冊にきったジャガイモを揚げたものがサワークリームとともに添えられていた。どうやってたべるのだろう。宮廷で食べるものには一口で食べるものが多く、大皿で運ばれた物を食べることはなかったから食べ方がわからない。キアランが素手でつかんで食べたので私もそれにならう。ほくほくして塩気がエールによくあい、とてもおいしかった。キアランの口は相変わらず落書きのように大きな一本弧だったが、いつのまにか食事がきえている。


食事が一段落したころ、私が訪ねる。


「キアランさんは、こんな感じの旅ですが本当によろしいですか。ここでの滞在もどれくらいになるかわかりませんし。」


「結構ですよ。久々に市井の生活が楽しめますね。貴方はまだ卵から飛び出してきたばかりのヒヨコみたいなものですからここで少し社会を知った方が良いですよ。こんな夜に男と2人で食事だなんて、全く...」


「あはは...そうですね。私も気が抜けていたのかもしれません。ですが私強いので、大丈夫ですわ!」


腕こぶしを作って見せるが、人間姿のキアランはため息をつく一方だ。


そんなこんなで夜が耽る。時折変なことを言うが彼とはうまくやっていけそうだ。とりあえず宿まで戻り、明日は母方の親戚モーデット伯爵夫人の元を尋ねることとした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ