異形頭との出会い
話が被ってたら教えてください。消します。カブだけに。ハピエンです。異形頭が出てきます。戦争紛争表現後程でます。
断罪の日、空は異常に澄んでいた。
雲ひとつない青空の下、ペンフォード王国侯爵令嬢ロウェナ・アッシュクロフトは、王太子アルアリック・ペンドレイクの婚約者として、国中の貴族が会する野外舞踏会の会場の真ん中で毅然と立っていた。
目の前にいましますのは、この国で最も尊い存在である方と、最も信仰される存在である方――国王陛下と、聖女リネット・ダウンソング子爵令嬢。
陛下の側に控える近衛侍従の口によって重く宣告される、聖女に対する覚えのない罪状の数々。そして、学園にいた時に何かとつけて聖女と自分を比べてきた同級生たちから発せられる突拍子もない証言の数々。周りの貴族たちからの視線は段々と痛いものになってきた。
婚約者からのエスコートは会場に到着した時からない。紳士となるべき方はわざとらしい泣き真似をする聖女に胸を貸しているようだ。早くこの時間をなんでも良いから終わらせたい。
「よって、王太子との婚約は破棄され、ロウェナ・アッシュクロフトは、全ての地位と名誉を剥奪される――」
会場は凍りつき、沈黙がホールに響く。
だが、ロウェナの胸には、驚きも怒りもなく、静かに思う。
(ようやく、世界を見に行けますわ)
彼女ーロウェナ・アッシュクロフトは、生まれて18年弱、物心ついた時から自分が物語でよく見る悪役令嬢だと気づいていた。アッシュクロフト家に特徴的な黒髪と透き通る白い雪のような肌、スラリとした手足、母親譲りの強い魔力を持つ紫の瞳、王妃を多数輩出した王国屈指の高貴な家柄、そして彼女自身の類稀なる才覚。6歳で王太子と婚約し、王妃教育を受け、12歳で王立学園に入学した日から、自分の運命は決まっていたのだと思う。
王立学園での彼女は常に次期王妃として他者の手本となる振る舞いを心がけていた。王太子アルアリックとの絆は、義務感と幼少期の友情に支えられたもので、恋愛感情ではなかった。しかし、その平穏は、15歳で受けた聖女試験によって少しずつ崩れ始める。
教会が主催する聖女試験は、4年に1度14歳以上の女性が受けられる。普通、聖女でなければ聖具は赤く光り、聖女の素質があれば青く光る。王妃となるには聖女でなくともよいが、建国神話により受けなければならなかった。
かつて土地で悪さをしていた魔王を打ち倒したのは、教会の加護を受けた勇者。癒やしの力を持つ聖女とともに魔王を鎮め、その土地でペンドレイク家として新たな王国をつくりあげた。それがこの国の建国の歴史。
王都で開催されたのは、ロウェナが15歳の頃、ロウェナの手にした聖具は沈黙を保ち、古い祭具だけが微かに反応していた。この反応は今まで示されたことがなかった。同日に、14歳であった傍系子爵家の長女リネット・ダウンソングが強い青の光がでたことで、ロウェナは教会から異端の烙印を押されることとなった。
その後、その子爵家の長女リネット・ダウンソングが聖女として王立学園に編入した。初めは、王家と教会の親密さを示すため、私と王太子との行動を共にしているものだと思った。しかし、王太子の彼女を見る目付きは私へのものとは違っていた。段々、私の見えないところで2人は親密になっていった。
学園の中庭で、二人が密やかに親密な時間を過ごすのを目にした日から、疑いは確証に変わった。聖女が王太子の背中に手を回し、ーーーーーーキスをしていた。
確かにリネットは可愛らしい。庇護欲を掻き立てる子リスのような顔に、ふわふわの綿菓子のような柔らかい雰囲気。しかし、時折鋭く見られていると感じるのは、もしかすると自分のせいかもしれない。
いつからか、ロウェナへの嫌がらせが始まった。
周囲の生徒から聞こえてきたのは、「聖女に私が嫉妬して嫌がらせをしている」というもの。
聖女に話しかけようとしたが、周囲にはいつも、王太子のほかに、宰相の息子や留学中の皇子、王宮武官の息子たちが集い、彼女に話しかける隙はなかった。
自分が悪役令嬢だとは、前から薄々気づいていた。
ロウェナには、同格の家柄を持つ歳の近い令嬢がおらず、心を許せるような友人がいなかったため、本が友達だった。特に冒険譚が好きだった。いつもそこに出てくるのは主人公の剣士とお姫様を分つ悪役令嬢。それが自分の境遇や容姿にぴったり当てはまったのだ。
幼い子供にありがちな思い込みには過ぎないが、彼女は他に比較対象がいないので、自分も現実世界では悪役令嬢になるのだと信じるに足る強い前例となっていた。
この後2人の為に何が起こるかは本で予習済みだった。そう思うと、この後起こる展開は自分さえいなくなれば全てが大団円になるのだろうと思い、自分から悪役令嬢のように振る舞うようになった。自由に外を見てみたかったという思いを隠しながら、王妃という立場が嫌だったのかもしれない。もちろん自分の逃げ道を確保するのは忘れずに。
........
舞踏会の宣告から一昼夜。
国外追放を受け、家からも勘当され、放り出された私の前に現れたのは、父の古い友人だという人物――黒衣のローブに包まれた御者だった。
流石に国外追放といえどもと侯爵令嬢なので馬車で王都の外れまで連れて行かされるのだ。
街の外れまでの持ち物は最低限のものだった。しかし私は、実のところこんなこともあろうかと、魔法で自分の資産はバッグに収納して置いてある。過去の自分に感謝である。
王都の外れの門まで辿り着き、御者に礼を済ます。御者は、馬車から徐に降りると、私に丁寧にお辞儀をした。
「……やれやれ」
御者は肩をすくめ、皮肉めいた声を零す。
「君、これから暇になるだろ?」
私は御者が話しかけてきたことに少し驚いた。
「ええ。ですから」
少し間を置き、
「旅に出たいの。誰にも秘密ですけどね」
私はなぜこの御者に言ったのか自分でもよくわからなかったが、くすりと笑って答えた。御者は長い沈黙の後、ぽつりと呟いた。
「ふむ。世界の秩序を乱す者にしては、面白い顔だ」
「え?」
「その旅、私も一緒に同行させていただけませんか?申し遅れました、私、この世界の調整者が1人、衡国中書令閣下にお仕えいたします中書舎人、位は従四品、キアラン・ターンルートと申します。お嬢様とは、お父様、勘当されてしまっていますが古くからの友人の縁でここまでの御者兼行先案内人をお願いされました。どうぞ、キアランと呼んでいだけますと幸いです。」
御者、キアランさんは丁寧な口調で恭しく私に頭を下げた。私はなんだかわからないけど、頷くしかなかった。
そしたら、御者、キアランは、深く被っていたフードを外した。
そこには、カブがあった。正確にいうと、190cmはあろうかという長身に、白い野菜のカブが細長い首から繋がっていて、そこに子供が書いたような大きい黒丸が2つと、その下ににっこり笑ってるかのような弧を描いた黒線が引かれていた。目と口?なのか、声は口から発せられてはいなかった。
「えっ、か、かぶ?!」
「左様、私の頭はカブです。初めてみた方には、少々面白く思われるかと。」
私は大変驚いた。それと同時に笑いが込み上げてきて、いままでの緊張もあったのか、10分ほど大笑いしてしまった。少し失礼かもしれないが、これは耐えられなかった。
「...コホン、大変失礼しました。初対面の紳士の前で大笑いをしてしまって...これは決して...」
「いえ、気にしていませんよ。皆様最初はそんな感じです。言うなれば、持ちネタというやつですので」
「ご無礼を...しかし貴方とは仲良くやれそうです!これから私は世界を見るたびに出ようと、無計画に言っているのですが、それでも同行されたいというわけですか?」
「調整者の同僚から少し休めと言われているもので、休暇をいただいているんですよ。女性の一人旅は物騒なこともあるでしょう?私もついていかせてくれませんかね。」
私はなるほどと思った。少し鑑定したが、彼が私を手籠にしようなどとは思わないだろう。
また自分は小隊程度であれば襲われても勝てる自信があった。何よりとても丁寧な貴族然とした紳士であった。私はやっぱりこの混乱で少し疲れていたのかもしれない。いつもならしない選択をこの時してしまった。
彼を同行者として認めたのだ。
「なるほど!私の名はロウェナと申します。すでに勘当された身ですからどのようにでもお呼びください。これからよろしくお願いします。」
その日から、二人の旅は始まった。
街で繰り広げられる群像劇、海を越え山を越え、教会の在り方や貧富の格差を目の当たりにし、風の国ヴェントリア都市連合国が誇る世界一の大学、 アイオリス学術同盟 で学びながら、ロウェナはすべてを、目に、耳に、心に記録した。
やがて、彼女の記事は王国を揺らし、断罪した者たちの足元から、世界は崩れ始める。
これは――悪役令嬢が、異形頭に溺愛されながら、自由と知を手に入れる物語。
初投稿です。現実世界ならケルト→12世紀になったよ、あたりです。




