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第7回小説家になろうラジオ大賞byごはん

これが最初の舞踏会になるならば、君となんか踊りたくない。





 奇病が流行り。なぜか男児ばかり致死率が高いその病で、私の兄も弟も、回復薬の完成を待たずして、その命ははかないものとなった。


 何とか生き残った高魔力保持者の継承権が繰り上がり、未来の王として、従兄いとこが王太子殿下となられたのはごく自然な事だった。


 それが数年前の話。


 彼は私の元婚約者だった。



 こんな時だからこそ、どこの国も横とのつながりを強固にするため、王族同士の結婚が必要不可欠となり。


 彼との婚約解消後、王女だった私は他国への輿入こしいれが早々に決まり。


 王太子から若くして王になった彼は政治的なバランスを取るため、複数の妃をめとる事となった。



 心労がたたった父王まで生き絶え、長きに渡りふくし、かなり遅れていた私のデビュタント。


 久方ぶりに開かれる、貴族向けの大規模な舞踏会は半年後。


 私はこの国の王女として、先んじてひそやかな舞踏会に参加した。


 これが終われば、私は本格的に異国へ移り住む事となる。




 王たる彼がいるところ、どこでも、立派な社交場だ。二人だけのためにかなでられるワルツに合わせ、デビュタントのダンスを踊る。



 二人きりの舞踏会で、私は彼にはじめて、わがままを口にした。



「一度でいいから、あなたの口から『大嫌い』と聞いてみたかったの」



 婚約していた時は、うるさいくらいの「大好き」を毎日のように浴びせられていた。あの頃をとてもなつかしく思う。



「その場合、痛み分けで先に君が『今でも愛してる』と僕に向かって言うハメになるぞ」



「……冗談、ですよね?」


「一度でいいから聞いてみたかったんだ。頼む、後生ごしょうだ。嘘でいいから」



 うん。愛してるどころか、私の方から好きだとか、好意のたぐいを口にした覚えはない。正しくは、言えなかった。


 周りの空気感で、この人とは結婚出来ないだろうなと、途中から薄々感じ取っていた。


 でも流石に面と向かって「嫌い」と言われたら、気持ちに踏ん切りがつくと思う。



「あなたを、愛しています。今でも──」



 ゆっくりと私のひたいに自身のオデコを合わせ、それはそれは優しい声で「だいきらい」と甘く口にした彼は、とても幸せそうに微笑ほほえんでいて。


 私の胸の苦しみは100倍に膨れ上がった。




 好きだという感情だけでは、どうにもならない事もあると理解してしまえるくらい、お互い歳を重ねていた。


 それでも。婚約を解消した日に言われた言葉は、ずっと、忘れられなかった。




 きっと彼とはこれが最後の舞踏会。


 今度こそ、「かならず君をむかえに行く」とは言われなかった。



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切ない。そしてロマンチック(涙)
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