第17話 救出戦―銃撃戦
倉庫の中で、ユーリとファングは互いに距離を保ったまま対峙していた。
崩れかけた棚や柱を盾にしながら、視線だけで相手の動きを探る。
張りつめた空気。
わずかな物音すら、命取りになりかねない静けさ。
――次の瞬間。
ほぼ同時に、二人は飛び出した。
ピシュン! ピシュン!
赤い光が倉庫内を切り裂き、火花が散る。
ユーリは左側の棚へ、ファングは右手の柱へと身を滑り込ませた。
一瞬の沈黙。
互いに呼吸を整えながら、次の一手を探る。
ユーリは足元に落ちていた木片を拾い、さりげなく右方向へ投げた。
ピシュン!
即座に反応し、ファングが木片を撃ち抜く。
その隙を逃さず、ユーリは左から飛び出した。
ピシュン! ピシュン!
柱を狙った連射に、ファングが舌打ちしながら位置を変える。
反撃のレーザーが棚を焼き、焦げた匂いが立ち込めた。
(……互角、か)
ユーリは歯を食いしばる。
立ち止まれば終わる。相手の腕は、それほどまでに正確だった。
「強いな」
闇の向こうから、ファングの声が響く。
「まさか、俺とここまでやり合える奴がいるとはな」
「それはこっちの台詞だ」
ユーリは短く答えながら、別の棚へと移動する。
次の瞬間、さっきまでいた場所をレーザーが撃ち抜いた。
間一髪。
(命中率が異常だ……狙ってる暇がない。
ほとんど予測撃ち……)
牽制と回避を繰り返すうち、時間だけが過ぎていく。
何度撃っても、決定打は生まれない。
やがて、ユーリはふと腰のポーチに手を伸ばした。
予備のエネルギーパック。
残り――一つ。
(……まずいな)
撃つ頻度を落とし、無駄撃ちを避ける。
その変化を、ファングが見逃すはずもなかった。
「……ほう?」
低い笑い声。
「撃つのを躊躇し始めたな。もう弾切れか?」
ファングの体には、まだ大量の予備パックが揺れている。
「違う」
ユーリは冷静を装って言った。
「お前こそ、そんな撃ち方してたら先に尽きるぞ」
――ブラフ。
だが、ファングは肩をすくめて笑った。
「そうかもなぁ! だが、俺には余裕がある!」
その直後、連射。
容赦のないレーザーがユーリを追い詰める。
ユーリは倉庫内を駆け回りながら、必死に周囲を見渡した。
その時、壁際に取り付けられた金属製の反射鏡が目に入る。
(……使える)
胸の奥で、わずかな光が灯った。
ファングの視界から外れた一瞬を突き、鏡を外す。
角度を計算し、静かに立てかける。
(四十五度……)
さらにもう一つ。
三十五度に調整。
(これで……)
最後の一枚を設置した時、ユーリは壁際まで追い詰められていた。
背中は壁。
逃げ場はない。
「もう終わりだ」
ファングがゆっくりと近づく。
「観念しろ」
ユーリは装填された最後のパックを確かめ、静かに息を吐いた。
(この配置なら……いける)
「ますます撃たなくなったな?」
嘲るような声とともに、牽制のレーザーが足元をかすめる。
「ああ、その通りだ」
ユーリは正直に言った。
「残り三発」
「ははっ! なら終わりだ!」
だが次の瞬間、ユーリはファングではなく、壁に銃を向けた。
「……?」
引き金。
ピシュン!
「無駄撃ちしやがって!
血迷ったか?」
レーザーは壁の鏡に当たり、反射し、次の鏡へ――
倉庫内を大きく回り込んで、背後からファングを襲った。
「……っ!?」
気づいた時には遅い。
衝撃。
パーソナルシールドが光り、ファングがよろめく。
その隙を逃さず、ユーリは次弾でレーザーガンを撃ち抜いた。
爆発音。
焼け焦げた手から、武器が落ちる。
「くそ……!」
ユーリは銃を下ろし、拳を握った。
一歩、踏み込む。
渾身の一撃が顎を捉え、ファングはそのまま崩れ落ちた。
気絶。
ユーリはナノパッチを貼り、応急処置だけ済ませてオートロープで拘束する。
「……捕縛完了」
壁に背を預け、深く息を吐いた。
「強かったな、こいつ……本当に」
その時、倉庫の扉が開く。
「ユーリ!」
セリナの声。
顔を上げた瞬間、ユーリは立ち上がり、彼女を抱き寄せていた。
「こっちは終わった」
耳元で、低く囁く。
「無事か?」
「ええ。工場の制御は解除したわ」
それでも、ユーリはすぐに腕を離さなかった。
少しだけ、確かめるように強く抱きしめる。
「……ユーリ?」
セリナが、不思議そうに聞く。
「……」
答えず、ただ温もりを感じる。
(無事で……よかった)
やがて、そっと手を放す。
「行くぞ」
「……うん」
二人は並んで、倉庫を後にした。
次の戦いへ向かうために。
互角同士の戦い、最後は冷静なユーリの知力勝ち。
でもやっぱり限界の戦いだったみたいでセリナを抱いたら離せない感じですね。
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