第16話 救出戦―情報戦
倉庫。
ユーリが、一人残る。
「……さて」
レーザーガンを構える。
「一対一で勝負だ」
暗闇から、それに答えるような男の声。
「……俺の名は、ファング」
お互いが敵の位置を把握しようと神経をとがらせている。
声の発生元を正確に予測しながら。
「お前、強いな」
ファングが笑う。
「だが――
俺の方が、強い」
「それは、どうかな」
ユーリが冷たく言う。
二人が殺気をぶつけ合う。
双方の銃を握る手が汗ばむ。
静寂。
緊張。
そして――
同時に、動く。
ピシュン! ピシュン!
レーザーが交錯する。
銃撃戦が――始まった。
・ ・ ・
セリナが廊下を走る。
全速力で。
息が切れる。
でも――止まれない。
「……っ」
前方の隔壁が開く。
そのまま突っ込む。
ガシャン!
隔壁が閉まり始める。
「……!」
セリナが飛び込み、
ギリギリで通過する。
「はぁ……はぁ……」
呼吸を整える。
端末からソフィの声。
「お嬢様、次です!
右に曲がって、三つの隔壁を通過してください!」
「分かった!」
セリナが右に曲がる。
また走る。
一つ目――開いてる。通過。
二つ目――開いてる。通過。
三つ目――開いてる。
突っ込む。
ガシャン!
急に閉まり始める。
「……!」
速い。
(間に合わない……!)
セリナがスライディング。
地面に滑り込む。
隔壁が――頭上を通過する。
ギリギリで通過成功。
「はぁっ……!」
起き上がる。
「お嬢様! 大丈夫ですか!?」
「大丈夫……!」
セリナが答える。
「ソフィ、さっきのは……?」
「敵が対策してきました……!
隔壁の閉鎖速度を速めています!」
悔しそうな声。
「でも、負けません!
次、行きます!」
前方の隔壁が開く。
突っ込む。
その時、天井から――何かが降りてくる。
固定自動銃座。
銃口がセリナを捉える。
「……!」
ピシュン!
セリナが身を屈める。
レーザーが頭上をかすめる。
「くっ……!」
タレットが再び狙う。
「ソフィ!」
「分かってます!」
ソフィが端末を操作。
タレットが停止する。
「今です! お嬢様、走って!」
セリナが全速力で駆け抜ける。
タレットの下を通過。
だが――すぐに再起動。
ピシュン! ピシュン!
「……!」
背中からレーザーが襲い掛かる。
セリナがジグザグに走り、回避した。
「ソフィ!」
「くっ……!
私が停止させても、敵がすぐ起動を……!」
ソフィが歯を食いしばる。
物陰に隠れるセリナ。
タレットが容赦なく撃ち込む。
(ソフィとオラクルが……
お互いに阻止し合ってる……!)
「ソフィ、次のタイミングを教えて!」
「はい!
3秒後にタレットを停止させます!
その間に走ってください!」
「了解!」
「3……2……1……今!」
タレットが停止。
セリナが飛び出す。
射程外へ走り抜ける。
また隔壁。
開いている。
通過――しようとした瞬間。
ガシャン!
急に閉まる。
(また!)
飛び込む。
ギリギリで――服の裾が挟まれる。
「……!」
引っ張る。
ビリッ。
服が破れるが、それでも通過成功。
「はぁ……はぁ……」
息が荒い。
「お嬢様、あと少しです!
前方50メートル先がコントロールルームです!」
「分かった……!」
再び走る。
重厚な金属の扉が見える。
ついに到着。
「ソフィ、扉を!」
「はい! 今、開けます!」
ソフィが端末操作。
画面にコードが流れる。
『ロック解除中……』
だがすぐに、
『アクセス拒否』
「……!」
ソフィが驚く。
「多重ロック……!?」
解除しても、すぐにオラクルが掛け直す。
解除。
再ロック。
解除。
再ロック。
「くっ……!」
セリナが周囲を見る。
このままでは時間がかかる。
その時――
天井のダクトに気づく。
「……あれ……?」
人が通れそうな大きさ。
(もしかして……)
棚が近くにある。
「……やってみる……!」
よじ登る。
「お嬢様!? 何を……!?」
「ソフィ、そのまま解除を続けて!
私は別のルートで入る!」
棚の上から手を伸ばす。
ダクトに届く。
「……よし」
腕に力を込め、ダクトへよじ登った。
暗い。狭い。
痛い。汚れる。
でも――
(ユーリ……
私、頑張る……
見ててね……)
進む。
光が見える。
ダクトの出口。
その下が――コントロールルーム。
オラクルが端末を操作している。
「ふふ……
この侍女、なかなかやるわね……」
指が猛スピードで動く。
「でも――私には勝てないわ」
画面に、
『強制シャットアウト』
ソフィの端末が停止。
「えっ……!?
そんな……!」
オラクルが高笑いする。
「あはは! やったわ!
侍女め、私の勝ちよ!」
『アクセス権奪取完了』
「ふふ……
これで、もう誰も――」
ガシャン!
ダクトが勢いよく開き、
セリナが――飛び降りた。
オラクルの背後に着地。
レーザーガンを脳天に突きつける。
「……!?」
「動かないで。
動いたら、撃つわ」
「……っ
お前……いつの間に……!」
「あなたがソフィとの戦いに夢中な間にね」
銃を押し付ける。手をゆっくりと端末から離して
頭の後ろに当てた。
「ハッキングには勝ったかもしれないけど――
私には勝てなかったわね」
オートロープ発射。
オラクルを拘束し、手すりに手錠で固定。
「ソフィ」
「お嬢様……! やりました……!」
「ソフィ、次の指示を。
全てのセキュリティを解除したいの」
セリナはソフィの指示通り操作する。
『セキュリティ解除中……
80%……90%……』
そして――
『100%』
『全システム開放完了』
隔壁が全て開く。
タレットが全て停止。
ロック全解除。
「……やった……!」
「お嬢様、やりました……!
全システムを掌握しました!」
「ソフィ、ありがとう……!」
セリナが微笑む。
オラクルを見る。
悔しげな顔。
「……まさか、あんな方法で……」
「ハッキングだけが戦いじゃないのよ」
「観念しなさい。あなた達の身柄は警察に引き渡す!」
オラクルは黙ったまま、薄く笑う。
(……この余裕。
警察もヴィオラが買収済みってことかしら。
彼女たちの身柄は、ヴィオラの悪事の生き証人になる……)
セリナは端末でメールを送る。
――宛先:赤毛猫海賊団・カタリナ
『黒幕ヴィオラの悪事を知る者を捕獲した。
反撃まで身柄を預かってほしい。
場所はXXXXX』
(赤毛猫海賊団は大組織。
この星にも団員はいるはず。
カタリナさんなら協力してくれる……
オラクルに自殺されても困るし、
油断させておく方がいい)
「警察が来るまで大人しくしてなさい」
「ふん、この恨み忘れないからな!
次は必ずお前達を殺す!」
セリナは負け犬の遠吠えを無視した。
「ソフィ、ユーリは?」
「はい、今……倉庫で戦闘中です……!」
「急いで、助けに行かないと……!」
セリナが駆け出す。
コントロールルームを出て――
ユーリのもとへ。
二人の友情と信頼の勝利です!セリナ……強くなりましたよね!
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