表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇太子妃に返り咲き ~冤罪令嬢、謎のイケメンに溺愛されて大逆転~  作者: ひろの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/21

第12話 黒曜の五影

帝都セレニャール。

ヴィオラ公爵邸。


執務室で、ヴィオラは端末を睨みつけていた。


「……くそ」


画面に表示されているのは、

セリナへの懸賞金情報。


『ターゲット:セリナ・フォンテーヌ

 懸賞金:一千万ニャーラ

 状態:未達成』


『ターゲット:ソフィ

 懸賞金:五百万ニャーラ

 状態:未達成』


「賞金稼ぎども……役立たず……」


舌打ちが、静かな部屋に響く。


「このままでは……

 セリナが生きて戻ってきたら……

 私のしてきたことが……明るみに出る……」


顔色が、みるみる青ざめていく。


(リュシアン様は……

 まだ、すべてをご存じではない……)


フォンテーヌ公が何かを掴んでいた。

その事実だけは、分かっている。


(もし、セリナが証拠を持って戻ってきたら――

 私は……終わり……)


指先が、かすかに震えた。


だが、ヴィオラはすぐに顔を上げる。


「……いいえ。まだだわ。

 あの者たちがいる」


書斎の本棚に手をかけ、

特定の一冊を傾ける。


ギギ……と低い音を立て、

隠し扉が開いた。


地下室。

闇と、静寂。


「――黒曜の五影

 (オブシディアン・ファイブ)」


名を呼ぶと、

遠隔投影機の上に、五つの人影が浮かび上がった。


闇に溶けるような、無言の姿。


五人は、静かに膝をつく。


「お呼びでしょうか」


声だけが響く。

顔は、闇の奥に隠れたまま。


「仕事よ」


ヴィオラは端末を掲げた。

そこに映る、セリナの写真。


「この女――

 セリナ・フォンテーヌを、始末しなさい」


「……承知しました」


五つの声が、重なる。


「失敗は許さないわ。

 我が公爵家が帝国で力を持てたのは、

 あなたたちのおかげ」


一瞬、間を置く。


「今回も……必ず」


「御意」


次の瞬間。

五人の影は、音もなく消えた。


地下室に残ったのは、ヴィオラ一人。


「セリナ……

 今度こそ……」


窓の外には、暗い夜空。

星々が、冷たく輝いていた。


・ ・ ・


一週間後。


補給のために立ち寄った惑星ニャリウム。


ユーリとセリナは、街を並んで歩いていた。


「セリナ」


ユーリが、自然な動作でセリナの手を取る。


「え……!?」


「仮にも新婚夫婦だ。

 もう少し近づけ。疑われる」


「は……はい……」


セリナの顔が、一気に熱くなる。


(ユーリ……近い……)


しばらく迷ってから、

セリナは小さく口を開いた。


「あの……ユーリ?」


「なんだ」


「夫婦なのはいいとして……

 新婚である必要は、ありますか?」


一瞬の沈黙。


「……いや。ダメだ」


即答。


「新婚だ」


少し離れた場所で、

カイル、レオン、ソフィが様子を見ていた。


「ぷっ……」


カイルが吹き出す。


「完全に楽しんでるな、ユーリ」


「……だな」


レオンは呆れ顔。

ソフィは、なぜか目を輝かせている。


「初心な令嬢をたぶらかすなよ」


その声は、ユーリには届かない。


「ん? カイル、何か言ったか?」


「いえいえ〜?

 なーんにも言ってません!」


三人が、揃ってニヤニヤする。


ユーリは真剣な顔で、セリナを見る。


「セリナ。

 お前は、嫌なのか?」


「え?

 いえ……嫌ではありません」


(こういう質問、

 面と向かって嫌って言えないよね。


 ……でも、

 本当に嫌ってわけでもないけど)


・ ・ ・


商店街。


カイルは補充パーツ探し。

レオンとソフィは日用品の買い出し。


暇になったユーリとセリナは、

出店が並ぶ広場を歩いていた。


「これ……可愛い」


職人が作った、透明なガラスの猫。

帝都では見かけない、素朴で、どこか温かみがある。


「買うか」


「え? あ、いえ……」


「買え」


有無を言わせず、ユーリが代金を払う。


「ほら」


差し出されたガラス細工を、

セリナは大事そうに受け取った。


「ありがとうございます……!」


心から嬉しそうな笑顔。


それを見て、

ユーリの胸が、ふっと高鳴る。


(こんな物で……

 ……次も、何か見つけたら買ってやるか)


「気に入ったか」


「はい。とても。

 宝飾品にはない、温かさがあります」


微笑んで、もう一度。


「ユーリ、ありがとう」


「……あぁ」


顔をそらすユーリ。

猫耳が、ぷるりと揺れ、少し赤くなった。


「追手に見つかると厄介だ。

 急ぐぞ」


歩調を早めるユーリ。

セリナは慌ててついていく。


「ねぇ、ユーリ」


「ん?」


「レオンさんって……

 とてもモテそうですよね」


ユーリの表情が、瞬時に固まる。


(……レオン?)


「ああ。

 剣も強いし、顔も性格も悪くない」


少し、語気が強い。


「女に囲まれてそうだが、

 本人はあまり興味なさそうだ」


聞かれてもいないのに、妙に詳しく返答する。


「そうですか……」


セリナは少し考え込み、


「でも……

 ソフィとレオンさん、いい感じですよね?」


「ソフィと?」


一瞬、戸惑い――理解する。


(あ、そういうことか)


「……確かに。いや、そういえば……

 気になっていたことがあったんだ」


ユーリは思い出したように言う。


「レオンが孤児だった頃、

 暴れん坊で有名だった」


「え……?」


「だが、一人だけ。

 優しくしてくれた人がいた」


静かな声。


「今のソフィと同じくらいの年で、

 雰囲気も……どこか似ている」


「それって……」


「レオンの、初恋の人だ」


少し、間を置いて。


「悪党に襲われて……

 孤児たちを守って、亡くなった」


セリナは、思わず口を覆った。


「……だから、ソフィに……」


「面影を重ねているのかもしれない」


セリナは、すっかり納得した顔になる。


(それって……脈ありどころか、大本命よっ!

 ソフィ!)


嬉しそうなセリナの表情に、ユーリが首を傾げる。


「どうした?」


「内緒です!」


満面の笑み。


猫耳が、またぷるりと揺れた。


「……行くぞ」


ソフィのことで頭がいっぱいなセリナは、

自分がユーリを翻弄していることに、まだ気づいていなかった。


・ ・ ・


【船内】


セリナとソフィは部屋で話していた。

ユーリとレオンは訓練室。

カイルは操縦席。


「ソフィ、この地図……

 すごく分かりやすいけど、作ったの?」


「はい」


少し照れた笑顔。


「昔から、情報を整理するのが好きで」


端末には、

街の構造、警備、通信状況まで整然とまとめられていた。


「実は……」


「?」


「旦那様は敵が多くて、

 情報攻撃を受けることが多かったんです」


「情報攻撃?」


「ハッキングや、噂、偽情報……

 いろいろありました」


淡々と語る。


「フォンテーヌ公爵家では、

 メイド長が対策部長だったんですが……」


ソフィが誇らしげに微笑んだ。


「私は、その次世代候補として

 鍛え上げられていて……」


「え?」


「ハッキングの仕方に対抗方法、分析、

 真偽判定、脆弱性の洗い出し……色々です」


指を折って数える。


「いやぁ……過酷な修行でしたよ。

 本当に厳しくて……」


思い出したように身震いする。


「でも、おかげで……

 こう見えても、公爵家を守ってたんですよ!」


胸を張る。


「……嘘だぁ?

 おっちょこちょいのソフィが?」


「ははは……バレました?」


ソフィも笑い出す。


「話、盛ってます。

 二百パーセントくらい」


「やっぱり!ソフィにはそんなの似合わないよ」


二人は笑い合う。


だが――


ソフィの端末の裏画面では、

賞金稼ぎネットワークに

セリナの“偽目撃情報”が、次々と投稿されていた。


・ ・ ・


翌日。


レオンとソフィは買い出しに出ていた。


「ソフィ、離れるな」


「はい」


平和な街。

子供の笑い声。


だが、レオンは油断しない。


(賞金稼ぎが……いつ襲ってくるか分からない)


・ ・ ・


「レオンさん、これ」


「いいな」


野菜や果物を二人で選ぶ、穏やかな時間。


(ソフィ……)


だが、レオンはすぐに気を引き締める。


(いや……油断するな)


「レオンさん」


そんな中、店員が声をかけてきた。


「奥に重い荷物があって取りに来てもらえますか?」


「分かった。

 ソフィ、ここで待て」


「はい」


ソフィは店の外で待つ。

レオンは店内へ入った。


人々が行き交う通り。


(平和だな……)


ふと微笑んだ、その瞬間。


「ソフィ」


声がした。


振り向くと――


セリナが立っていた。


「セリナ様!?」


セリナは急いできたのだろう。

肩で息をしている。


「どうして……?

 船に残っているはずでは……」


セリナの顔は、明らかに焦っている。


「彼が危ないの!」


「え?」


混乱するソフィ。


「今すぐ来て!」


「で、でも……レオンさんを――」


「今すぐ行かないと、間に合わないの!」


切迫した声。


真剣な目。


ソフィは迷う。


(セリナ様が……こんなに焦ってる……

 ユーリさんが危ない……?)


「……分かりました」


ソフィは頷いた。


「レオンさんに、メッセージだけ入れておきます」


端末を操作する。


『ユーリさんが危険。

 セリナ様と先に戻ります』


送信。


「行きましょう!」


セリナがソフィの手を引く。


・ ・ ・


人のいない路地裏。


「セリナ様……ここは……?」


「近道よ」


ソフィは後ろをついていく。


だが――


(……何か、おかしい……)


歩き方。


声のトーン。


(セリナ様……いつもと違う……)


「リックさんが、どうしたんですか?」


「ええ。リックは今、暗殺者に狙われてるの!」


(……リックに反応した……

 ヴィオラは、ユーリさんたちの詳細を知らないはず……)


ソフィが、はっとする。


「お前……誰だ!?」


叫んだ瞬間――

首筋に、何かが触れた。


麻酔銃。


「え……」


意識が急速に遠のく。


「セリナ……様……」


崩れ落ちる。


“セリナ様”が振り返った。


その顔が、溶けるように変化する。

別の女の顔。

仮面のような、無表情。


「……簡単だったわ」


冷たい笑み。


「侍女は、すぐに騙せる」


影の中から、黒服の男たちが現れる。

ソフィを抱き上げる。


「連れて行け」


男たちは、そのまま闇に消えた。


・ ・ ・


その頃。


レオンが店から出てくる。

重い荷物を抱えて。


「ソフィ」


……誰もいない。


「ソフィ!?」


周囲を見回す。


「ソフィ!」


叫ぶが、返事はない。


端末を確認する。


『ユーリさんが危険。

 セリナ様と先に戻ります』


「……!?」


顔色が変わる。


「まずい……!」


(セリナは船にいるはずだ。

 なら、これは――)


理解する。


「騙されている……!?」


レオンは荷物を放り出し、走り出した。

ちょっと悪の5人衆みたいなのをだしてみました!

意外とラスボスだったり?


ご感想やご意見、スタンプ、どんな些細なものでも大歓迎です。励みになります。

もしよろしければ、次の読者への道標に、評価やブクマをお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ