第10話 守りたい
「全員で行け!」
敵のリーダーらしき男が叫ぶ。
その声を合図に、十人以上の男たちが一斉に襲いかかってきた。
「レオン!」
「ああ!」
ユーリとレオンがほぼ同時に動く。
レオンのレーザーブレードが閃き、
ユーリのレーザーガンが敵を射抜く。
完璧な連携。
次々と敵が倒れていく。
「くそ……!」
カイルも援護射撃に加わる。
セリナも、震える手でレーザーガンを構えた。
(私だって……足手まといにならない)
怖い。
それでも――引き金を引いた。
放たれたレーザーが、男の足に命中する。
「うわっ!」
男は悲鳴を上げ、倒れ込んだ。
「セリナ、よくやった!」
カイルの声が飛ぶ。
胸が、少しだけ軽くなった。
ソフィもレーザーナイフを構え、
敵の間をすり抜けてセリナのもとへ走る。
「セリナ様!」
「ソフィ!」
二人は背中合わせになり、身構えた。
男が襲いかかる。
ソフィがナイフで応戦し、相手の武器を弾き飛ばす。
「やった!」
セリナは倒れた男に、レーザーガンを向けた。
「動くな!」
男は観念したように、両手を上げる。
ソフィの無事な姿を確認し、
レオンは小さく、ほっとしたように笑った。
すぐに表情を引き締め、
再び敵の中心へと突っ込んでいく。
やがて――
敵は、次々と倒れていった。
急所は、あえて外している。
命に別状はない。
それでも、その場を切り抜けるには十分だった。
「……終わった」
ユーリが、長く息を吐く。
「みんな、無事か?」
「ああ」
レオンが頷いた。
腕に傷はあるが、浅い。
ソフィもセリナも無傷だ。
「よくやった、全員。特にセリナ、お前――」
その瞬間だった。
背後で倒れていた男が、最後の力を振り絞り、
小型の銃を取り出してユーリへ向けた。
暗殺用の毒針銃。
(ユーリ!)
セリナが真っ先に気づいた。
「ユーリ、危ない!!」
考えるより先に、身体が動いた。
毒針が放たれる。
セリナが――
ユーリの前に、割り込んだ。
「セリナ!?」
肩に、鋭い痛み。
「……っ!」
毒針が、深く刺さっていた。
「セリナ!!」
よろめく身体を、ユーリが抱き留める。
同時に、駆け寄ったレオンが男を蹴り飛ばし、完全に沈黙させた。
「セリナ……!」
顔色が、みるみる青ざめていく。
ユーリの手が、震えた。
(俺が守るはずだったのに……
なんで……なんでお前が……)
セリナは、かすかに笑った。
「ユーリ……
私も……あなたを守りたかったんです……」
そこまで言い切ると、
セリナは静かに意識を失った。
「セリナ!! セリナ!!」
カイルがユーリの肩を掴む。
「落ち着け、ユーリ! 船に戻るぞ!
毒だ、急げ!」
ユーリはセリナを抱き上げ、走り出した。
「セリナ様ぁ!!」
ショックで足が止まりかけたソフィの手を、
レオンが力強く引く。
・ ・ ・
【船内】
セリナはベッドに横たわり、呼吸は浅い。
「解毒剤……どこだ……!」
ユーリが必死に医療キットを漁る。
「これだ!」
レオンが一本のアンプルを差し出した。
「汎用型だが、効くはずだ」
ユーリはすぐに注射を打つ。
「……セリナ、頼む……起きてくれ……」
ソフィは、もう涙を止められなかった。
「セリナ様……」
レオンは、そっとソフィの肩に触れる。
「セリナは強い。きっと大丈夫だ。
ここはユーリに任せろ。まずは休め。
お前は……セリナが目を覚ましてから必要になる」
「……はい」
呆然としながら、ソフィは部屋を出た。
操縦席から、カイルの声が響く。
「最寄りの医療施設まで、あと六時間!」
「急げ。全速力だ」
・ ・ ・
【夜】
なんとか医者のもとへ辿り着き、治療を受けた。
命は取り留めたが、セリナの意識はまだ戻らない。
ユーリは一睡もせず、
セリナの手を、ずっと握り続けていた。
「……起きてくれ、セリナ……頼む……」
声が、掠れる。
(守るって言ったのに……
なのに、守れなかった……)
額を重ね、震える声で呟く。
「馬鹿か……
なんで、あんなこと……
お前が死んだら……俺は……」
・ ・ ・
【翌朝】
セリナの容体は、昨夜より明らかに良くなっていた。
「……もう大丈夫そうだな」
レオンが、安堵の息をつく。
ソフィは涙を流し、
ユーリは、まだ手を離さない。
「ユーリ、お前も休め」
「いや、離れない。
セリナが起きるまで」
昼過ぎ――
セリナの指が、わずかに動いた。
「……っ」
「セリナ!?」
ゆっくりと、瞼が開く。
「……ユーリ……?」
「セリナ!」
ユーリは、思わず抱きしめた。
「馬鹿か……なんで、あんな……!」
声が、震える。
「だって……
ユーリを、守りたかったから……」
その小さな声に、
ユーリはセリナを見つめ――
そっと、額にキスをした。
「……!」
セリナの顔が、一気に赤くなる。
「二度とするな」
口調は厳しい。
けれど、その瞳は優しかった。
「俺は……守ると言いながら……
できなかった。すまない」
セリナは、そっと手を握り返す。
「いいえ……
私こそ、ごめんなさい……」
「……もういい」
ユーリは、優しくセリナの頭を撫でた。
「無事でよかった。それだけだ」
視線が絡む。
(ユーリ……)
(セリナ……)
胸が、熱くなった。
・ ・ ・
【翌日】
セリナは、かなり回復していた。
「もう大丈夫です」
「無理するな」
ユーリは、すぐに駆け寄る。
「まだ毒が残っているかもしれない」
「でも……」
「座ってろ」
優しい声。
セリナの胸が、また鳴る。
ユーリが額に手を当てる。
「熱は……ないな」
「……っ」
(近い……!)
ユーリも気づき、少しだけ距離を取った。
「す、すまん」
気まずい沈黙。
それを、カイルが破る。
「いやぁ、ラブラブだねぇ」
「カイル、黙れ」
照れ隠しのように、ソフィに看病を任せる。
ユーリの耳は、わずかに赤い。
そして、全員を集めて言った。
「今回の件を少し調べてわかった。
リュシアンは裏社会に懸賞金を流している。
セリナに一千万ニャーラ。ソフィに五百万ニャーラだ」
「そんな……」
「安全な場所は、もうない」
二人は、静かに頷いた。
「それと、セリナ。
護身術の訓練を本格的にやる」
「え……」
「今回、お前は俺を守った。
だが次は――お前自身を守れ」
真剣な眼差し。
「……はい」
胸が、また熱くなる。
星々が流れていく。
辺境へ。
グレイヴ公爵のもとへ。
そして――
二人の距離は、確かに、少し縮まっていた。
看病回です。隠してる気持ちがこういう時にうっかり漏れるんですよね。
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