彗星
渚は歌う。
波が砂に当たり、辺り一面に潮騒の音が響き渡る。
流木に腰掛け、夜空を見た。
美しい紺色の空に。
彗星に目をちらりとやってはまた目をそらす。
両手で掴む。
あの夜の太陽を。
沈んだ夕日に儚さを抱き夢に落ちる。
眼の奥で彗星が流れた。
星空にポツンと現れ、流れる。
走馬灯のように目に焼き付いた。
彗星が空を舞う。長い長い尾を引きながら。
両手で掴む。
この夜の彗星を。
手を伸ばすが捕まらない事に気付き夢に落ちる。
夜空を掠めた感触が、まだ僅かに残っていた。
星空はやがて朝の輝きに染まる。
夜と朝の境で、あなたは何を思っただろう。
そして夜が明ける。
彗星の面影は、今夜に落ちていった。




