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第31話 未来への途のり

未来への(みち)のり です。

「……おはよう。明音、紡ちゃん」


 いつものように私と紡ちゃんより少し遅く教室へ入ってきた夕輝くんは教室の入口のすぐ隣の席で談笑する私と明音ちゃんに声をかける。


「おはよう、夕輝!」


 明音ちゃんが明るく挨拶を返す。なんてことない朝のやり取りが私にはとても嬉しかった。


「よかったね、明音ちゃん。」


「えー、いつも通りだよ?」


 そう言いながら明音ちゃんはとても嬉しそうにしていた。そんなやり取りをしている間に夕輝くんが自分の席に荷物を置いて戻ってきた。


「二人とも昨日はごめん。」


「いいよそれは。私と紡ちゃんも内緒の話できたしね。」


「それで結局昨日はどうなったの?」


 夕輝くんにあのあと進路指導室でどうなったのかを聞いた。曰く一週間後にもう一度ふたりで話す機会を作る。ただしそれはそうしろと言われただけで来途くんが本当に来るかは分からない、と。


「そっかー。来てくれるかな、ライトくん。」


「どうかな。俺の方から動いて来てもらうようにもできないし……来てくれると思うしかないよ。」


「……ねぇ、夕輝くん明音ちゃん。」


 私が発した声は震えていたかもしれない。私はこれまで誰かに引っ張られるばかりでそれは2人と出会ってからもそうだったから。だけど今私は自分から進もうとしている。


「どしたの紡ちゃん?」


 明音ちゃんが首を傾げる。二人は私の言葉を待ってくれている。私は二人と、そして来途くんの為になにかできるなら力になりたい。私もみんなの進む先を見たいから。


「あのね、来途くんのこと……私に任せてほしいの。きっと説得してみせるから。私も来途くんの力が必要だと思うし来途くんにも二人が必要だと思うから……!」


 二人の反応を待つのがこわくて勢い任せに言い切った。言い切ってから顔を上げると二人は優しく、そして嬉しそうに私を見ていた。その顔を見て私はなんとなく二人に近づけたような気がした。


「それでね……」


 続きを話し始めようとしたところで予鈴がなった。続きは放課後に持ち越しだ。自分の席に戻ってからもまだ心臓がバクバクと騒がしくじんわりと高揚感が湧いて1時間目の授業が始まるまでソワソワと落ち着かなかった。



*****



 紡ちゃんの提案は予想外ではなかった。だけど予想通りでもなかった。今物部と一番距離が近いのは紡ちゃんだし、もしその心を動かせる人がいるならそれは紡ちゃんだとは思っていた。


 だけど紡ちゃんはそれほど積極的な性格ではないと思っていたから自分からは行動を起こさないんじゃないかと考えていた。でも、それは悪いことではなくてストッパー役になっていてくれると感じていた。だからさっきの紡ちゃんの言葉は意外ではあった。


 慎重で控えめな紡ちゃんが自分に任せてほしいと言ったことが驚く以上に嬉しかった。どうして嬉しいと感じたのかはわからない。だけどそう思ったんだ。


 そういえば、明音は昨日紡ちゃんと内緒の話をしたと言っていた。

 だとしたら明音の行動が紡ちゃんの世界を変えたのかもしれない。こうやって身近な存在から少しずつ世界を変えて、いつか本当に世界を丸ごと変えてしまえるかもしれない。


 そんな遠い未来の皮算用をしているうちにあっという間に今日という日は流れていった。


 放課後、HRが終わると紡ちゃんがすぐにやってきた。


「あのね、来途くんのことでひとつ力を貸してほしいことがあるの。」


 そう言って紡ちゃんから提案されたことは自分では思いつかない、というより紡ちゃんがそういう行動をしようとするとは全く思わなかったから紡ちゃんにしかできない凄くいいアイデアだと思った。


 ただ、唯一不安があるとすれば……


(寝てる暇あるかな。)


 と思いつつも自分にそう告げてすぐに教室を出ていった紡ちゃんを見送り明音に声をかける。


「よし、今日からはしばらく紡ちゃんとは別行動をしよう。」


「紡ちゃんも二人の時間を邪魔されたくないだろうしね。」


 明音がニヤついた顔で紡ちゃんが出ていった方を見る。別にそういうつもりで言ったわけではないけど……。


「俺も明音にやってもらいたいこと、というか力が必要なことがある。久しぶりだけど俺の家に行こう。」


「もしかして、ようやく私の出番ってこと?」


「うん、明音の力を貸してほしい。」


 ここしばらくはいろいろあって結局拠点にしようと決めた自分の家を拠点として使ってもらうことはなかった。


 これからがどうなるかは分からない。だけど今日からはこうしてみんなの活動の中心にしていきたい。そういう意味でも明音の力を借りたかった。明音がそう認識することで本当にそうなる、というただの願掛けめいた妄想でもある。


 楽しそうに鼻歌を口ずさむ明音に下校の用意を促す。やらなきゃいけないことは多い。今は少しでも時間が惜しい。


「詳しいことは歩きながら話そう。」


 いまだ状況は変わっていないし今からやろうとしていることも全て紡ちゃん次第だ。もしダメなら全てやり直しだしこの先のことも一度白紙に戻す必要があるかもしれない。



 だけど不思議と予感がしていた。


紡ちゃんは物部を連れて来てくれる。


それから俺たちは同じ場所を目指して物部と共に進んでいける。


 それはただの都合のいい妄想かもしれない。だけど行動を起こすにはそれだけで十分だった。


「どうしたの夕輝、準備できたけど?」


 そんなことを考えているうちに下校の準備を終えて明音が戻ってきた。


「これからのこと考えてた。行こうか。」


 行こう、どこまでも一緒に。


もっともっと知らしめるんだ。


君の中にある世界を。言葉を。


未来(あす)に続く(みち)を切り開く物語(ノベル)を。


*****

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