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第24話 驟雨

 来途くんがHiKaRi novel。


 私の中ではもう気づいていたはずなのに見ないふりをしていた。あと少しだけと先延ばしにして二人に言えずにいた。来途くんにも聞けずにいた。


 だから私は今どうすればいいのかわからなかった。

 

 このまま黙っていて2人が来途くんを見つけるまで知らないふりをしているのか、二人が見つけるまでに私が見つけたふりをして来途くんにも二人にも隠し通すのか。

いろいろな考えが頭の中を巡っては消えていくけど、大切な友達に嘘はつきたくないと思うことだけは消えることはなかった。


 震える声で切り出す。


「二人とも、聞いてくれる?」


 怖くて二人の顔が見られない。なんで早く言わなかったのって二人とも怒るかな。怒られたっていいけど友達じゃなくなったらいやだな。なんだか泣きそうな気分になってきた。自分が隠してたのに無責任だな。


「私、知ってるの、来途くんのこと。きっと来途くんがHiKaRi novelなんだってことも。」


 言ってしまった。一瞬で貧血のときのように顔が冷たくなって頭が痛む。


「でも二人に言えなくて……」


隠していてごめんなさい。


「そっか、よかった。紡ちゃんがもう見つけてくれてたんだ。」


「すごいよ紡ちゃん!私も夕輝も見つけられなかったのに……。まだまだだね、夕輝は。」


 私の言葉が音になる前に2人に遮られてしまう。2人は怒るどころか私を褒め始める。

 わけがわからなかった。


「2人とも、怒らないの?私はわざと2人に本当のこと言わないでいたのに……。」


「誰だって友達に言えないことや言いたくないこともあるよ、きっと。」


 夕輝くんがそう言うと明音ちゃんがすかさず口を挟んだ。


「私も夕輝も最近まで友達ほとんどいなかったけどね。」


 うるさいな、と夕輝くんが悪態をついて明音ちゃんが笑う。ただそれだけのことで私の中の罪悪感は少し軽くなっていた。


 そんな僅かなやり取りで私の不安はあっという間に片付いてしまった。


 だけどそんなやり取りから次の不安が生まれる。依然私の頭の中には重みのあるずっしりとした黒い雲が浮かんでいた。


友達にも言えないことがある。


言いたくないことがある。



 ……じゃあ、来途くんもそうなの?

 

 来途くんがHiKaRi novelだと私たちが気づいたことを知ったら来途くんはどう思うのだろう。


 そんな新たな疑問が少し軽くなった不安の軽くなった分を埋めるようにまた心を重くする。


 私の尽きない悩みは今日の空模様によく似ていた。



 すっきりとしない心とは裏腹に計画は最終段階に向けて進んでいく。


 お友達大作戦は今後も継続はするとして優先度を下げて正体を突き止めたHiKaRi novelとまずは話してみよう、ということで今後の方針が決まった。


 いろいろ来途くんに聞きたいことや確かめたいこともあるけどまずは話してみないと始まらないと思ったのと、来途くんが本当にHiKaRi novelなら来途くんもまた舞台の上にいるべき人だから二人と仲良くする方がいい。

 そう思って特に異議は唱えなかった。二人のことだからいつもみたいに来途くんともすぐに仲良くなってしまうだろう。そのことに複雑な気持ちはあるけど、私とじゃ役者が違う。だから仕方がない。


 でも、二人と仲良くなってもまだ私と友達でいてくれたら嬉しいな……。


 来途くんはきっと今日も屋上にいる。

 二人を来途くんと会わせるために屋上へ誘う階段を上る度にトゲを踏んだみたいに見えない痛みがどこか私の奥深くを刺激する。


 大丈夫、慣れているから。


 昔からよく知っている痛みだからいつも通り我慢するだけ。あの日あの舞台を見てから時々はしる痛み。笑って覆い隠せばいいだけの痛みだ。


 私たちは屋上へと向かった。いつものことだけど駆け上がるには少し長すぎる階段を登り追えると押しても引いても開かないんじゃないかと思うくらい分厚いドアが待ち構えている。この先に来途くんがいるはず。


 二人を案内していた私が必然的に一番最初にドアの元まで辿り着く。


「……。」


「紡ちゃん、開けないの?」


 ドアノブに手をかけたままの私に追いついてきた明音ちゃんが声を掛ける。


「えっと……。あ、二人が先に開けた方がいいかなって。ほら、ようやく会えるんだから……!」


 そう言って二人に先を譲ると不思議そうな顔をしながら夕輝くんが、まぁそういうことなら……とドアノブを握る。


 遂に掴んだ光の尾を引くように重たいドアが開かれる。夕輝くんがドアの向こう側へ踏み出して続こうとした明音ちゃんが立ち竦む私に気づく。


「どうしたの、紡ちゃん?行こ?」


 不思議そうに覗き込む明音ちゃんの笑顔が眩しくて舞台の輝きが眩しくて……。


「あ、うん。ごめんね、すぐ行くから先に行ってていいよ。ほら、夕輝くんも待ってるよ。」


「そう?じゃあ、待ってるからすぐ来てね!」


 そう言うと明音ちゃんはドアの向こう側に駆け出した。その先ではもう夕輝くんと来途くんが顔を合わせている。


 来途くんの物語がここから始まるんだね。嬉しいような悲しいような、切なさでいっぱいの雲が私の心を覆い込んだ。



 ……だけど少し雲行きが怪しい。

 来途くんは私と話す時とは別人みたいに冷たい顔をしていて夕輝くんは表情に焦りが滲んでいる。明音ちゃんが夕輝くんの手助けをしようと踏み出すけど来途くんは一層表情を固く冷ややかにさせてしまう。


 そんな時だった。


 私の視界に一筋の線が落ちていくのが見えた。何かと思って下を見ると小さな染みがひとつできていた。


 雨が降ってきたんだ。


 そう思った時には少しずつ床に落ちる染みが増え始めていた。ぐらぐらと不安そうだったここ数日の空がついに限界を迎えたみたい。


 雨に気を取られて空に意識を向けていた間に来途くんがこちらに近づいてきていた。そしてドアのそばに控える私に気づく。


「紡ちゃん。」


「あ、来途くん……。」


 なぜだかわからないけど私は上手く言葉が出てこなかった。前に二人で話していた時はあんなにも自然に会話が続いたのに。


「……この雨だと、しばらく夕日は見られなさそうだね。」


 寂しそうに呟くと来途くんはするりとすり抜けるみたいに私の横を通り抜けて足早に去ってしまった。立ち竦む私は来途くんを追えなかった。


 来途くんの後を追うように慌てた様子の二人が戻ってきた。雨は勢いを増し始めて少しだけ二人の肩を濡らしていた。


「あれ、紡ちゃんも降られちゃった?」


 私を見た明音ちゃんが尋ねる。


「え?」


 そう言われて初めて私の瞳から頬までを一筋雨が伝っていたのに気が付いた。


 降り始めた雨は一向に収まる気配はなくて、じめついた空気が漂い始めていた。


 まだしばらく雨は降り続きそうだ。

こっから先7話分サブタイトル考えてない!!!やばい!やばい!!!

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