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清めの儀式を乙女と共に

「オレガ殿は……あれからずっと呪い喰いの旅を続けておられるのですか?」


「まぁな。リザはどうにか仕事見つけて生きてけてるみたいだな」


「はい。オレガ殿にも鍛えていただけたお陰で雇われ用心棒のような事をしてあちこちをまわっています」


オレガとリザはのんびり進む馬車達の進行に合わせ歩みながらお互いの近況を語り合っていた。そんな中でユガタは。


「ねえねえユガタ様! こちらも是非召し上がってくださいな!」


「ありがとうございます! すみません。結局僕まで馬車に乗せてもらっちゃって……しかもこんな美味しい物まで……」


「これは私の街で人気のチョコレートなんですよ! ユガタ様にも気に入って頂けたら!」


「それにしても……ユガタ様は可愛らしいですね……こんな可愛い子見た事ないです!」


「ユガタ様こちらのクッキーもよければぜひ! ユガタ様はどうして旅をなさっているのですか?」


ユガタは清めの儀式に向かう乙女達に囲まれて馬車の中で止まらず差し出されるお菓子を頂きながら、身の上話に花を咲かせていた。


「……やけに口の中が甘いな……」


「どうかしましたか? オレガ殿」


オレガとリザが護衛する馬車は無事に神域と呼ばれる地に入ることが出来た。そこには木々に囲まれたいかにも神聖さが漂う澄んだ泉があった。馬車から乙女達とお菓子をまだ頬張っているユガタが降り、泉の元へ。


「皆さんこれからまじないと共にこの泉で身を清めて頂きます」


「わかりましたリザさん。よろしくお願いいたします」


「ほお、リザ、まじないの詠唱も出来るようになったのか」


「生きてくために役立つ術は身につけようと。それに……」


「それに?」


「いつかオレガ殿の呪いも解ければと」


「ふん、いらん世話だな」


ぶっきらぼうに言い放つオレガ。やや寂しげにリザは下を向く。


清めの儀式を行う準備をする為、一度馬車に戻る乙女達。


「ユガタ様! ユガタ様も清めの儀式を行うのですよね! ならこちらに!」


「え、はい! わかりました!」


乙女達に連れられ馬車へと入り込むユガタ。すると馬車の中には白い絹で作られた沐浴用の服が用意されていた。


「え、あ! これに着替えるんですか! なら僕は……!」


「いいじゃないですか! ユガタ様も一緒に着替えましょ!」


「へ? やっ! それは!」


「いいからいいから! 私達は気にしませんし! ささ! ユガタ様!」


「あーれー!」


乙女達に服を剥ぎ取られ強制的にお着替えを御一緒するユガタ。


「ユガタの肌綺麗……本当に男の子なのかしら?」


「ちょ! 下まで脱がさないでください!」


「いいじゃないですか減るもんじゃないですし!」


「さて、私達も着替えましょ!」


「やー! 僕には刺激が!」


ユガタは圧倒的に赤面しながら乙女になすがなされるまま流されていく。


「騒がしいな」


「騒がしいですね……して、ユガタ殿は本当に男の子なんですか?」


「ちっせえがな」


馬車から白い絹の沐浴着を着た乙女達と、赤面しながら消耗しているユガタが降りてきた。


「リザさんお待たせしました。よろしくお願いします」


「では、皆さん祈りを捧げながら泉に使ってください」


「おい、ユガタどうした」


「……僕は何かを得て何か大事なものを失った気分です……ふふふ……刺激が強い……」


「これだからお子ちゃまは。裸見られたり見ただけだろ」


「……オレガはデリカシーがなさそうですね」


どうでもいいと言わんばかりに呆れ顔をしているオレガを横目で恨めしそうに睨むユガタ。


「ユガタ殿も。祈りを捧げ泉に使ってください。神の加護を得られるはずです。その魂繋ぎのまじないも解けるかもしれませんよ」


「はい」


ユガタと乙女達は腰まで泉に浸かるとみな祈りを始めた。そこにリザはまじないの書物を取り出しそこに書かれている呪文を詠唱し始めた。言葉は具現化し宙を漂う紋様となり泉に吸い込まれて溶けていく。泉は薄白く発光し、その光がユガタや乙女達を包んでいく。


「ほう、ちゃんとできてるじゃねえか」


オレガは自分の弟子を見つめるような視線でリザを見つめている。たが腕を組んで少し硬い顔をした。


「これは呪い避けのまじないの一種だな。土地の性質を対象者にも付与するものか。これじゃあ魂繋ぎのまじないは解けねぇな」


オレガは腕を組みながら片手の甲に刻まれたハート型の紋様を見遣り何やら思い巡らせていた。ただ、必死に祈り清めの儀式をしているユガタの姿に、ややため息をつきながらも、その心意気を認め始めていた。


「まだまだ旅にお供はつきそうだぜ」



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