旅は道連れ清めの儀式
「そういえば貴方達は皆さん顔見知りなんですか?」
「ええ、私達はこの先の神域と呼ばれる場で、清めの儀式をする為に各地の街や村から集められた者たちです」
「清めの儀式?」
ユガタは清めの儀式の為に集められた女性のリーダー的な人物と話を進める。
「はい、虹のかかる月が現れて以降、呪いや呪現獣の被害が大きくなると予言されていまして、呪いを遠ざける為にその身を乙女は清めよと言うことで……」
「いました! 皆さん無事ですか?」
「リザさん! みんな無事です! この方々のおかげで!」
やや遠くから何台もの馬車と、護衛の女騎士がやってきた。女騎士は清めの儀式に向かう皆の無事を確認すると胸を撫で下ろしていた。
「呪法とはいえ、皆さんを見失うなど不覚……大変申し訳ありません」
「全くだ。頼りない騎士な事だ」
「こらオレガ! こうしてみんな無事だったんだからいいじゃないですか!」
「オレガ……まさか! オレガ殿ですか? お久しぶりです! 覚えてませんか! 私! リザです!」
「リザ……そうか、おまえ……まだ生きていたんだな」
「オレガ殿こそ……ご健在のようで何よりです」
「えっと……おふたりはお知り合いなんですか?」
オレガに対し恭しく接するリザと呼ばれた女騎士にユガタは恐る恐る尋ねてみた。なにやら訳アリの仲みたいで詮索していいのか悩んだが年相応の好奇心に負けてしまったユガタであった。
「キミは……どちら様かな?」
「あ! リザさん! この方、ユガタさんのおかげで私達は呪人から助けて貰えたんです!」
「いえ! 結局僕は時間を稼いだだけで、オレガがいなければ……」
謙遜して自己評価を低く話すユガタに、ユガタを囲う女性達はワヤワヤ尊重して声をかける。その様子を見てから、リザはオレガに視線を移した。
「オレガ殿はやはり呪い喰いの旅を続けておられるのですか? しかも旅の伴を連れているとは……」
「いろいろあっての成り行きだ。魂繋ぎの儀式ってのが悪い」
「魂繋ぎ……それでは今、オレガ殿の命とこの子の命は……」
「そういうこった、めんどくせぇだろ」
「めんどくせぇとは酷いです! それで! おふたりのご関係は?」
ふたりの会話に割って入ってきたユガタ。なぜたがワクワクした表情をしている。
「ちっ、故郷が同じってだけの腐れ縁だ」
「そんな……腐れ縁などと……良縁と言ってもらいたいですオレガ殿」
やや照れ気味に答えるリザを見てユガタは、ははぁーんと何かを察したようであった。その察したユガタの脳内をオレガは察してさらに面倒くさそうに答えた。
「人のプライベートにつこっむなって言ったろユガタ」
「はいはい、分かってますよオレガ! にっしっし!」
「なにやら誤解をもってるなめんどくせぇ」
「誤解……んんっ! それはそうと皆さんが無事で何よりです。このまま皆さんを神域の泉までご案内します」
「よろしくお願いいたしますリザさん」
ユガタを囲う女性達はリザに促され各々馬車に乗り込んでいく。皆乗り終えると、リザは周囲を確認し、御者にゆっくり進んでいくよう促した。
「おい、リザ、一応気をつけていけよな。さっきの呪法の根源は喰らってやったが、何しろお前どこか頼りないからな」
「はい……あ、なら!」
リザが何やら妙案が浮かんだらしく、顔色が明るくなる。対してオレガはこれまた面倒くさそうだと表情が歪む。
「オレガ殿にも乙女達の清めの儀式に同行して頂けないでしょうか?」
「拒否する!」
「のを拒否します! オレガ! 人は助けてなんぼですよ!」
ユガタは真摯に笑顔でリザの提案を受け入れる。オレガは本当に心底面倒くさそうだと表情を歪める。
「結局守るのは俺じゃねえか! 俺に何の得がある!」
「それ相応の路銀や食料をお分けする事は出来ます」
「俺には必要ないってしってるだろリザ」
「僕には必要ですよ! オレガ!」
「それに、清めの儀式……もしかしたらユガタ殿との契約を解除できるかもしれませんよ」
「よし、仕方ねぇ、ついてくだけだぞ」
「ありがとうございます! オレガ殿!」
「そっか……もしかしたら魂繋ぎの契約を解除出来るかもしれないのか……そっか、そうだよね」
ユガタは本来の旅の目的である、魂繋ぎの儀式で繋がってしまったオレガとの契約を解除できるかもしれないという事に、やや憂いと寂しさを覚えてしまっている。オレガとの魂の繋がりが無くなれば、一緒に旅をする必要は無くなってしまうと。それは、自分のわがままだけれど、寂しい事だと。
「おら、ユガタ、行くぞ、てめぇは馬車に乗せてもらえ」
「……いえ! 僕も歩いてきます!」
こうして、ユガタとオレガはリザが護衛する乙女達の清めの儀式に同行する事になった。