朝の出来事
「う~~~、ふ~~~、うっ・・・頭が痛い」
どうやら、昨日は飲み過ぎたのだろう。
あれ、ここはどこだと辺りを見回す。
見覚えのある机、机の上には、学校行事の資料が所狭しと、乱雑に置かれている。
「俺の部屋?どうやって帰ってきたんだ?・・・店を出たことは覚えている。それから、誰かと話をしたような覚えがあるのだが・・・・・どんな人と話をしたっけ」
ふらつきながら、ソファーから起き上がる。
服の匂いを嗅ぐと、酒の香りとタバコの香りがこびりつき、かなりどぎつい。
「臭い・・・服に匂いってこんなに付くもんなんだな・・・昨日に夜は、優しい香りが漂っていたと思えたが?・・・なんでそんな風に思えたのだろう」
家には誰も上げたことはない、受け持ちの受け持ちの生徒の情報などもあるし、コンプライアンス的にどうなのだろうと考えてしまうからだ。
母の存在を教えてくれる人は周りにはいなかったし、親戚の集まりでも、叔母が話すのを遮っていたからだ。
成人するまでは、そのことも気が付かず、叔母を母だと思っていたのも事実である。
成人し、書類の記入等をする中、叔母が実の母ではないことを知ってしまった。
そのために実の母は、雄也を捨てたことを知る。
一人部屋で、実母を、叔母を責めることもあった。
大学の教育学部を卒業後、叔母に高校の教師になったことを話しはしたが、疎遠に今はなっている。
大人の事情があったのかも知れないが、幼い赤子を捨て、消えてしまった母のこと、それを、黙秘し黙っていた叔母のことにより、心が閉ざしてしまったのだろう。
女性の同僚や友人とは、話すこともできるのだが、その先の恋人となると、女性に不信感を持つようになってしまった。
その為か、新しい友人を作ることもできない、生徒位の年ならば普通に話すことは出来る。
実母が捨てたであろう年齢の20代前半に近ずくと体から拒否反応が出てしまう。
今の状態だと、20歳になる女性には、拒否反応が出てしまうのだ。
こりゃ、学校に行く前には、シャワーを浴びないと・・
朝練のある部活の指導と違い、多少の時間は余裕がある。
まずは、水でも飲んでと台所に向かうとき、洗面所の方から、シャワーの音が聞こえる。
俺、昨日シャワー浴びたっけ?そんなわけはない。
浴びたのであれば、こんなに臭い服を着ているわけがないからだ。
慌てて、洗面所の扉に手を掛ける。
[カチャッ]
[ギーーーィ]
扉を開け始めた瞬間にお風呂場の中から声がする。
「誰!?」
雄也は叫び
「え・・ええええ誰か入ってるぅぅぅぅって言うか俺の家なんだが?」
中からも驚きの声がする
「えっ・・あっ・・もしかして、あまみやさんですか?」
「・・・・・・・女性?」
「てんぐう・・・さん?昨日の夜に酔いつぶれていたので・・」
そうだ、酔いつぶれる前に話をした人が、お風呂場のガラス越しにいることを理解するには、時間は掛
からなかった。
「えっ、それより昨日、道で寝てました?」慌てて問う。
やばい、こんなことが、学校にばれたら、大変なことになってしまう。
シャワーの音が消える。
「いいえ、学校にバレることはないと思いますよ。脇道をそれて、路地裏にいましたから。それと昨日、送り届けたときに表札を見たのですが天宮と書いてあったので、あまみやと読むのかと思いましたが、てんぐうで良かったのですね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
思考が停止していた。
「えっと、あまみやであってます」
「あまみやさんで、良かったのですね」
「送ってもらったのは、ありがたいのですが・・・すみませんが、名前ききました?記憶がすみません」
「酩酊状態でしたから・・・って言ってませんね、優里亜です」
「・・え、優里亜?やっぱり、女性だよな・・普通に話せている・・」
子供と認識出来るのであれば、拒否反応は出ないのだが、顔も覚えていないのに。
「クチュン・・くちゅん・・・すみませんが、バスタオルをくれませんか?でないと、風邪をひいて、それと、そこに居られると出るに出られないのですが」
「あっ・・すぐに・・・」
シャワー室の扉を少し開け、一番デカいと思われるバスタオルを手渡す。
「ありがとうございます、あと失礼ですが、なんか羽織るものを貸してもらえませんか?
「Tシャツでよければ、横の棚へ置いときます」
「それでお願いします」
話の途中で、洗面所を飛び出す。
普通に話せている・・・未成年を連れ込んでしまったのか?それならば納得がいく。
そうじゃなければ、納得のいく説明が出来ないからだ。
考えがまとまらず、壁を背にうずくまって、これからのことを考え始めた。
警察?それとも、教育委員会?それと、辞表とか出さないといけないとか・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なにやってんだ俺」
[カチャ]
Tシャツを着て、優里亜は洗面所から出てくる。
やはり、女性・・・・・・・・・・・・・出ているところは出ていて、はっきり言って、スタイルはモデルのような・・・・しかし、年は、25歳くらい?・・・ありえない。
大人の女性を見たのに、拒否反応がでない。
ハーフなのかクォーターなのか、外国の血が入っているのだろう。
金髪、いや明るいアッシュグレイなのか?亜麻色というのが正しいのか、髪は長く、優しい顔立ちで・・・誰かを思い出させる。
それが誰なのかは、思い出せないのだが。
「すみません、勝手にシャワーをお借りして、タバコの臭いがどうしても気になって」
いやいや無防備すぎるだろ、若い女性が、男の部屋に・・普通の人なら、襲ってくれと言わんばかりの事だぞ。
台所に立ち、ポットに入ったコーヒーをカップに入れ、優里亜に手渡す。
「安い豆だから、うまくないかもしれないけど」
「いい香りですよ」
コーヒーの香りをかいだあと、ゆっくりとコーヒーを飲む。
雄也は、聞きたいことを問うために話をはじめた。
「少し話がしたいんだ」
言葉に出したが、いったい何から話せば良いのだろう。
聞きたいことは、いっぱいある。
例えば、なぜあの場所にいたのか?。
どうして面倒を見てくれたのか?。
男とわかっているはずなのに、家まで送る、危険は考えなかったのか?
考え出したらきりがない。
聞いてばかりも、申し訳が立たない。
ここまで、いろいろな迷惑もかけてしまったのだ。
ひとつずつ、話しあうことにした。
優里亜の正体を、少しずつ明かしていくストーリーにしようと考えています。
明かされることにより、雄也と・・・・・・・みたいな感じで進められたらと思います。
考えがまとまらなかったからと、変な方向に行かないように頑張ります。