なんで、いつもとコスモスの色がちゃうん?
「今年も持ってくるんやろか…。」
9月14日。今年もこの日がやってきた。眠たい目をこすりながら、カーテンを開ける。
「うわっ、太陽、元気すぎるやろ。...あかん、眩しすぎて、全然、目開けられへん。」
なんとか起きて、急いで朝食を済まし、身支度を整える。早くしないと、あいつが来ちまう。
「幸太、いくちゃんが来たわよ!」
「...今年も持って来とるん?」
「うん、満面の笑みでね。」
「...ふーん。じゃあ、行ってくるわ。」
「あら、嬉しそうね。」
「ばっ、違うわ!!」
「ふふっ、気をつけて行くのよ。」
「べ、別に、楽しみとちゃうからな。......いってきます。」
「いってらっしゃい。」
玄関のドアを開けると、あいつがいた。
「おはよう、こうくん!」
「…おはよう、郁。」
「はい!これ!今年もあげる!」
「おお!」
郁は、毎年、ピンクと赤のコスモスをくれる。最初にもらったのは、確か、あいつが東京から転校してきた、小学5年のときやったと思う。ほんで、今は、中学3年やから......もう、かれこれ5年もらっとるんか。意外と長いなぁ。
...まあ、別に楽しみにしてるわけちゃうけど、今年もありがたくいただこうではないか、って、――
「あれ?今年は、黄色と茶色のコスモスやんか。なんでや?」
いつもは、ピンクと赤やのに。
「...今年は言おうと思って。」
「?」
理由を聞いた瞬間から、郁の顔が曇っている。なんでやろ。
「...こうくんは、気付いてないだろうけど、実は、ずっと、こうくんのことが好き、なの。だから、つっ、付き合ってほしいっ!」
ああ、なんや、告白かいな。良かったぁ、変な理由やなくて。
「ええで。」
「えっ、そんな軽く決めて良いの?」
「...俺もずっと好きやったから。」
....ほんまは、卒業式の日に言おうと思ってたけど、まあ、結果オーライや。
「えぇ!そうなん?気付かんかった!!」
「やろなぁ。まあ、俺は、郁が俺のこと好きなん、ずっと前から気づいとったけど。」
ていうか、ピンクと赤のコスモスを渡してくる時点でわかってまうわ。
「えっ!?そうなの!.........あっ、『そんなバナナ』!!!」
「...前から思とったけど、別に大阪やからって、無理してウケ狙わんでええで。」
「そうかな?」
「うん........まあ、ありのままでおってくれたら、それで十分やし。」
「...もしや、ちょっと照れてる?」
「は、はぁ!?べ、別に照れてへんわ!!」