私とノアの婚約
ここまでが短編までとお話の流れが同じです。(結構加筆してますが)
「ミランダ!!無事か!!」
やって来たのは騎士団長と、じい様達で、私は嫌がるノアに構わずまたがり、汗だくのシャツを脱がしながらじい様に手を振った。
「じい様、よく分かりましたね。流石です。探知ですか?ナイスタイミングです。二人共無事ですよ。でも、ちょっとノアがきつそうです、汗が凄いですね」
ノアにまたがり、えいっとシャツを全部脱がして半裸にしている私を見て、皆一瞬口があんぐり開いたけど、じい様は頷き、ノアの側に駆け寄った。
「ノア、きついかもしれんがこのまま王宮薬師迄連れて行く。そこで治療をして貰う。証拠になるからな。何を盛られたかはすぐに分かる。もう少しの辛抱だ。ほら、水を飲め。よく我慢した。偉いぞ」
じい様はノアに話し掛け、ノアに水を飲ませた。
ノアは赤い顔で頷き大きな布でくるまれ、じい様は、よっこらしょと言うと、大きなノアを抱きかかえた。
ノアはじい様に抱えられ、私は騎士団長に護衛され王宮へと一緒に向かう事となった。
「それにしても、私の隠密もまだまだですね。サブロウ先生に鍛えて貰わないといけません」
私は埃だらけのジャケットを着ると、騎士団長に着いて行った。騎士団長は流石はリンツ様のお孫様です。と、私を見てニコリと微笑まれた。
王宮薬師で治療をされたノアはしっかりと護衛され、王宮に泊まる事になった。薬が完全に抜けるまで絶対安静らしい。
じい様は薬の治療中、「ノアは男だな。よくぞ我慢した。流石だ。ミランダ、ノアを褒めてやれ」と言い、ノアを褒めていた。
ノアに薬を盛った犯人はやはり第三王女で、ノアに薬を盛った上で既成事実を無理やり作り婚約まで進めようとしたらしい。私の事も部下に拉致させ、中々ひどい事を企んでいたとじい様がこめかみをピクピクさせながら教えてくれた。
第三王女はこの件が国王陛下に全てバレ、国外にも出せず王族の地位もはく奪され監視付きで辺境の厳しい修道院に送られる事になった。流石に第二妃も庇う事は出来ず、王太子殿下もホッとしているらしい。
ノアと私が狙われた事もあって第三王女の個人資産からパーラメント家とリンツ家に慰謝料が払わられた。
おかげで我が家の借金は綺麗に無くなった。国王陛下からもお詫びとして、第二妃と国王陛下から両家にお見舞金が届けられた。
そしてお金が入った事を知ったのか、逃亡していた厚顔無恥の大叔父が我が家にやって来た。じい様のいない時を狙う所が大叔父らしい。
私がボコボコに追いだしてやろうかと素振りをしながら部屋を出たら、家の前で父様がにこやかに絶縁の書類を大叔父に見せ、母様が血濡れのエプロンのまま門の外に叩きだした。
今度来たら警備隊に通報すると父が言い終わると「失礼致します」と言って、爺やがガチャンと、目の前で門を閉めた。
無事に借金が無くなり、大叔父の心配も無くなったが、母様は仕事を辞めなかった。臨時だが、ギルドで今も働いている。母が解体すると味や革の出来上がりが違うと、レストランのシェフや、皮をなめす人が言うらしい。
そこでギルド長と話し合い、母様は指名制にして貰って働きに出ている。
働く母様は楽しそうだ。母様のお使いでギルドに行ったら、裏の解体場で母様は優雅にナイフを振り回し、華麗に解体をしていた。
「指名料も入るし、貴女のウエディングドレス代は母様が稼いであげるわ」と言う母様は頼もしい。
第三王女の件も片付き、私とノアの婚約は速やかに調った。そして私とノアの婚約は大々的に発表された。第三王女のやらかしもあり、王室がお詫びもかねて王太子殿下が祝福していると発表したがったらしい。
王室の人気が下がるのは嫌だろうしね。
婚約を発表する事をアイリーンに言うとすごく心配していた。
ノアは人気があるから、私がいじめられないかとか、嫌がらせを受けて辛い目に合わないかとか言っていたが、そんな事は無かった。
何故なら。
「ミラ、今日も可愛いよ。ほら、こっちのビスケットを食べて?」
「ノア、もうお腹いっぱい。これ以上食べたら、お腹がはちきれる」
「ふふ、ぷくぷくしたミラもきっと可愛いよ?」
私の頬を優しく触りながらビスケットを差し出すノア。婚約を発表してから、ノアは私の事をミラと呼び、人目を気にせずいつも私の側にいる。
ノア曰く、恋人はこういう距離が普通らしい。
私は本当か疑ってアイリーンに一度聞いたが、「人それぞれですが、そういう恋人同士もいますわ。私はミランダが愛されているのを見るのは好きですわ」と言って、ノアが「ほらね」と自慢気に頷いていた。
昼食の時はアイリーンも側にいるが、アイリーンもノアもいつもにこにこしている。
「ミランダが愛されていて良かったですわ。パーラメント様、ミランダの頬はこの下の方も気持ちが良いのですのよ?」
「こんなに可愛いんだもの、愛さない人っているのかな?ポーレット嬢、いつもそんなにミラを触っているの?嫉妬しちゃうな」
ぷくっと頬を膨らませ、ノアはアイリーンを見た。
「ふふ。ミランダの頬は世界一ですわ」
「うん、そのとおりだね。ずっと触っていたいよ」
アイリーンとノアが話しているのをこっそり皆が聞き、私は世界一の頬を持つ女として認知された。
ノアは私の頬を優しく触り、蕩ける笑顔で私を見つめる。
私の手を取ると自分の方に寄せ、私の指にチュッとキスをした。ノアは隙あらばどこでもキスをしようとする。
頭が一番される事が多い。背が高いノアは私の頭にキスするのがしやすいんだと思う。
私はキスされすぎて禿げないかちょっと心配で、やはりアイリーンに相談したら、「聞いた事ありませんわ。大丈夫ですわ」と言われ、またノアが自慢気に「ほらね」と言っていた。
また、第三王女の魔の手からノアを救ったのも私といつの間にか噂が広まっていた。その為、ノアのファンの子達からは勇者の様に扱われた。
一度、ファンの子と話す事があり、「私がノアの婚約者で嫌じゃないの?」と聞いた。
第三王女とノアが婚約を結ぶかも、と言う時に皆が泣いていたからだ。
「ノア様の幸せは私達の幸せです。我々のファンクラブの総意として、ノア様がミランダ様お選びになった事が重要なのです。そして、悪の第三王女の魔の手から麗しいノア様を守られた勇者ミランダ様は大変勇ましく皆の憧れですわ。そこらの変な令嬢ではなく幼馴染との初恋を実らせ、愛を一途に貫くノア様。流石でございます。ノア様ファンクラブ会長としてお二人の幸せをお祈りしております」
一息にファンクラブ会長から言われ、礼をされた。
なんだかよく分からないが、皆が幸せなら良かった。
そして、今日も。
「ミラ。ほら、僕汗かいちゃった、ねえ汗拭いて?」
コテンと首を傾けて、私の肩に頭を乗せる。
「ノア、自分で拭けるよね?」
私がハンカチを取り出し、額の汗を拭いてあげると、遠くから、あのハンカチ欲しい、と不遜な声が聞こえたが気にしない。
「だって、ミラが汗を拭いたりして僕を助けてくれたんだよ?」
「あの時は、しょうがなかったでしょ。もう、今は自分で拭けるでしょ?」
私はそう言いながらも優しくノアの汗を拭く。
「ミラ。大好き」
私の手をぎゅっと握り、ノアは優しく私を見つめる。
「うん。私もノアが好き」
私が言うと、ノアはにっこりと微笑み、僕の方が好きだよ。と言ってチュッと私の頬にキスをした。
次回からが連載版のお話です。
宜しければ他の作品も読んでみて下さい。