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学園での平和な日々

そこからの流れは速かった。


まずはドルトン家に婚約解消の書類を我がリンツ子爵家から送る事となった。


突き返されたり借金返済の催促が来る事は予想されたので、書類には、婚約解消の見届け人としてパーラメント家が入り、王太子殿下も間に入ってくれる準備がある事を付け加えた。


今後の借金返済もパーラメント家が間に入ってくれる事になった。


王太子殿下も第三王女にはほとほと困り果てているらしく、優秀な側近がこの件で自分から離れていき、優秀な弟子を大量に持つ我がじい様を敵に回したくはないらしい。


騎士団の団長始め、多くの騎士や優秀な冒険者がじい様の弟子らしく、じい様は影の支配者とも呼ばれているらしい。


何それ、かっこいい。


ど貧乏でも、関係なく役に立つ事があるのだ。



ドルトン家は我が家からの婚約解消に渋っていたらしいけど、アレックスの浮気の証拠の数々を発表すると言ってみたり、王太子殿下の名前を出すと、無理な借金返済の催促も無く渋々だが了承した。


しかし、ドルトン家は我が家に解消ではなく婚約破棄の慰謝料を取ろうとした。我が家に慰謝料請求の書類が来た所で、アレックスの浮気相手の一人の妊娠が判明しその話は止まった。



我が家はこちらに借金もあり、爵位も下である事から穏便に解消しようとしていたのに、ドルトン家が婚約解消ではなく婚約破棄の慰謝料を我が家から取ろうとした。じゃあ、遠慮しないで良いよね?と、逆に我が家から各浮気相手の家と、ドルトン家にも慰謝料を請求したら我が家の方が裁判所から認められた。


ドルトン家の借金は慰謝料と相殺という形になったが、他の家からも慰謝料を貰える事になり借金は大きく減った。


アレックスも私と婚約解消出来て嬉しいんじゃないかな。チビガキは嫌だって、会う度に言われたからね。


私は婚約が無事に解消されホッとしていた。



学園でもアレックスを見かける事は減り、婚約破棄騒動からぶちゅー現場に遭遇する事も無くなった。



さあ、次はノアの番だ、と、私とノアの婚約を両家で進めていると、待ったがかかった。


婚約の書類を王宮に提出した所で、書類が止まっているらしい。ノアのお兄さんと我が家の父様が調べると原因はすぐに分かった。



第三王女が陛下にノアとの婚約をお願いしたとの事だ。


書類を提出してすぐにその話があり、本当に危ない所だったみたいで、陛下も婚約の書類が提出されてなかったらどうしていたか分からない。


ただし、現に婚約の書類は両家から出ており、第三王女のお願いを陛下も聞いておらず、保留との事だ。



何故保留になっているのかと言うと、第三王女は国王陛下に、「まともな縁等無理で、これが最後のチャンスかもしれない」と、泣き落としをしているらしい。


国王陛下も第三王女の気持ちは分かるが、パーラメント家の嫡男は王太子の側近。パーラメント家も侯爵家として優秀な家。そして、貧乏とは言え多くの弟子を持つじい様の事や、王宮で真面目に働いている父様の事、大叔父のやらかしを自分達で解決しようとしているリンツ家の事も評価して下さってるらしい。


その両家が縁を結ぶのを邪魔をするのは駄目だと、第三王女に撥ねつけようとしたが第三王女の母親、第二妃も一緒になってお願いをしだした。



そこで王太子殿下から、「婚約は調うだろうが、二人を納得させるのに少し時間がかかるだろう。しばし待って欲しい」と言われた、と、ノアのお母様から説明された。



我が家は借金返済の目途も着いてほっとしてるが、ノアは第三王女から狙われびくびくしているだろうな、と思うと、私はノアが心配だった。




説明を受けてから数日が経ち、学園での昼食の時間にアイリーンに最近の出来事としてこの話をした。



アイリーンはアレックスとの婚約破棄の話に「まあ!良かったですわ!」と、喜び、第三王女が話に出てくると「なんですって?」と、眉間に皺をよせ、その相手が幼馴染のノアで狙われていると知ると「え?」と、口元に手を置き、私とノアが婚約する事を話すと口がぱかっと開いた。


今なら何かこっそり口に入れてもいいかな?と思っていると、アイリーンが口を閉じ、現実に戻って来た。



「ミランダ。ちょっと確認したいのだけれど、ドルトン様と婚約を無事に解消出来たのね?」


「うん、解消でいいのかな?むこうが破棄だ!って言いだしたから破棄になるのかな。慰謝料請求されて、逆にうちが貰える事になったから。借金が減ったよ」



アイリーンが頷く。



「裁判所に提出された書類を見ないとどういった判断されたかは分からないわね。でも、とにかく婚約は無くなったのね。良かったわ。少しもミランダを大切にしないのですもの。ホッとしましたわ。で、第三王女様はあの第三王女様よね?」


「私達の十歳程上の国外に留学されてた第三王女様だよ。帰国なさって、ノアに一目ぼれしたんだって」


アイリーンは、あららら、と口元を隠して眉間に皺を寄せた。


「そして、ミランダの新しい婚約者候補のノア、って、あの、ミランダの幼馴染っておっしゃってた、皆がキャーキャー言う、侯爵家のノア・パーラメント様よね?」


私は最近少しだけ豪華になったサンドイッチをもぐもぐしながら首を縦に振った。


「そうだよ。そのキャーキャー言われているノアだよ、なんだか色々あって、婚約する事になったの。びっくり」


アイリーンはおやつを私に渡すとキョロキョロとあたりを見回し、声を潜めて私に綺麗な顔を寄せた。


「ミランダ、この事はまだ誰も知らないの?」



私はまた首を縦にふり、アイリーンから貰ったクッキーをもぐもぐ食べだした。



「うん、王宮で書類が止まってるから。ちゃんと受理されたら皆に言うんじゃない?ノアはアレックスとの婚約が解消されたら恋人になりたいって言ってたけど、相手が第三王女だからとりあえずいつも通りだよ」



アイリーンも首を縦に振り、私から顔を離した。



「そう、それが良いと思うわ。ミランダの新しい婚約者がパーラメント様なんて知られたら、可愛いミランダは何されるか分からないわ。ミランダが強い事を私は知っているけど、見た目だけは小さくて可愛らしいんですもの。この頬。最高に愛おしいわ。明日はジャムビスケットを持ってくるわね」



私はアイリーンに頬をぷにぷにと触られ、ジャムビスケットの言葉に喜び、わーいと手を上げた。



「アイリーンの家のお菓子、どれも美味しいよね。シェフに弟子入り出来ないかな?」


「ミランダ、作る人になってしまうと食べれないわよ。ミランダは美味しく食べる人のままでいいと思うわ」



私はもぐもぐと食べながら頷く。



「そうだね、食べるのが一番だね。母様にいつもアイリーンにお菓子を貰ってるって言ったら、今度お礼にレッドボアかジャイアントブルをアイリーンの家に持って行くって言ってたよ。執事さんかシェフさんに伝えておいて欲しいな。新鮮な時に届けたいみたいだから、母様急に行くかもしれない」


アイリーンは口元を引きつらせながら、有難う、言っておくわ、と言った。



それから暫く平和な日が続いたが、ある日学園が騒がしくなった。





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