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王宮での舞踏会 

私達の家に王宮から舞踏会の招待状が届いた。


今度の王宮舞踏会は伯爵家までの貴族に招待状が届く。我が家は子爵家で本来参加はしないのだが、侯爵家のノアと私が婚約をしている事で保護者付きでどうぞ、と言う事で招待状が届いた。


我が家の保護者付は、王太子殿下の特別の計らいだろう。



私達はこの約一ヵ月、シルバーシャドウ(変な名前だがノアのファンクラブの別名らしい、ノアの髪色とノアを影から支えると言う意味らしいが、私は悪の組織の様だなと思った)の皆からの情報を吟味したり、ブロンに情報を流したり、街の噂を聞きに行ったりした。


アイリーンはお茶会に参加したり、教会を訪問し寄付をしたりしたそうだ。


情報はどんどん集まり、私達はノアのお兄様経由で王太子殿下とも情報を共有した。



そして本日、私は久しぶりのドレスを纏いノアにエスコートされ王宮へとやって来た。



「ミラ、可愛い。凄く可愛い。天使。妖精かな?大好き、女神だね。あー、可愛い・・・」



私のドレス姿を見たノアは語彙力が崩壊し、同じ言葉ばかり繰り返してキスばかりしている。



「ノアも素敵だよ。格好良いね」



私がノアを見上げ言うと、「!!!ミラ!!!」と言い、口元に手を当て固まったので、放って置いた。


しばらくして、復活したノアは心配そうに私を見た。



「ミラ、今日は大丈夫かな。ミラの事が心配だよ」


「ノア、私の心配しなくても大丈夫だよ」



私はノアの手をぎゅっと握るとノアの顔をじっと見た。



「ノア、好き。私はノアの方が心配だよ」



ノアは真っ赤な顔をして頷くと、「ミラ、威力が凄いよ・・・。もう可愛すぎる・・・」と顔を隠していた。


さあ、行くぞ!と私はノアに呆れた顔を見せている保護者のじい様と婚約者のノアにエスコートされ王宮へ足を踏み入れた。




煌びやかなホール。


見た事もない世界がそこにはあった。


光り輝くシャンデリア。美しく着飾った婦人、令嬢。


貴族の令息が美しい所作で令嬢に話しかけていた。



凄い世界だな。


私には縁がない世界だ。


でも、ノアは今までこの世界にいたのに、子爵家になれば王宮での舞踏会なんて一年に一度しか呼ばれなくなる。それだって、毎年呼ばれるか分からない。王家の都合で規模が縮小されれば男爵家から順に呼ばれない年もある。


大体王宮での舞踏会は伯爵家以上の貴族が中心だが、年に一度の新年のパーティには準男爵家や騎士爵の家でも王族からの招待状が届く事がある。


騎士であれば、大会で優勝した者や、準男爵であれば新たに爵位を授与された者。また大きな貢献を働いた者。


なので、例え下位貴族であってもここにいると言う事は王族から声が掛かった者。上位貴族も無下には扱わない。


今回のパーティは伯爵家から上の貴族が中心の舞踏会。子爵家の私は参加するのは初めてだ。私達はパーラメントのお兄様の後に名前が呼ばれ、ノアと私、じい様はホールに入った。


入った瞬間に皆が注目をするのが分かった。


私は背筋を伸ばし進んだ。


サブロウ先生にも褒めて貰った、体幹の良さで頭を少しもぶれなく進む事が出来る。母様も驚いた私の美しい歩き方。シノビの技のおかげと思う。


パーラメントのおじ様達、お兄様が国王陛下に挨拶をし、私達も進み礼をした。王太子殿下も側にいる、後ろにはノアの一番上のお兄様もいる。


そこで普通は陛下が頷くだけなのだが、私達に声を掛けた。



「二人に会えて嬉しいよ。二人は似合いだな。今日は楽しんでくれ」



国王陛下はじい様にも何か話し掛けられ、私達は礼を返し、挨拶は終わった。国王陛下に話し掛けられるのは高位貴族でも少ない。


私達は一気に注目されたが、パーラメントのおじ様達がいるからか何もなかった。


暫くしてダンスが始まり、王族が踊られ、高位の貴族が踊ると私達も踊る事になった。



「ミラ、僕と踊ってくれますか?」


「ふふ。ノア、駄目って言っても踊るんだよね?」



私がノアの手に自分の手を乗せると、ノアは、「そこは喜んでって言ってくれなきゃ」と言って私の腰に手を回した。



「ずっとミラと踊りたかった。ミラは軽いね。羽が生えてるからかな」



ノアは上機嫌で私を抱え回し、踊る。この踊り方は多分私じゃないと無理だな。



「ノア、目が回るよ、ゆっくり踊ろう」



私がノアの頬に手を置き踊りながら話し掛けると、ノアはニコリと微笑んで、ゆっくりと私を持ち上げ回した。


そういう事じゃないけど。私はまあいいか、と思い、ダンスを楽しんだ。


視界の端にアイリーンを見つけ、ノアに告げると、ダンスの曲が変わる所で私達は輪を抜け、アイリーンの側に移動した。



「素敵なダンスでしたわ。パーラメント様、ミランダ。ご機嫌よう」


「アイリーン、綺麗だね。ドレスも素敵。氷の妖精みたいだよ」と、私が話しかけると、アイリーンは私の頬に手を当てて微笑んだ。


「ミランダもとても素敵ですわ。ミランダはパーラメント様の独占欲丸出しドレスですが、可愛いですわ。濃い緑ではなく、薄い緑にしたのは良いですわね。ミランダにとっても似合ってましてよ。お二人のダンスは皆見とれていましたわ。あんな風に踊れるのはお二人しか無理ですもの。今日は私の婚約者もやっと紹介出来ますわね」



アイリーンがそう言うと、後ろからシャンパングラスを二つ持った男性が現れた。



「ミランダ、パーラメント様。私の婚約者のレオナルド・セントバンク公爵令息ですわ」


「初めまして、お二人の事はよくアイリーンから聞いてますよ。これからもアイリーンを宜しくお願いします」



アイリーンの婚約者は私達よりも十歳程年上で、穏やかなイケメンさんだった。


ノアが挨拶をし、私も「ミランダ・リンツです。宜しくお願い致します」と挨拶をすると優しく微笑んで、小さな声で「今日の事は聞いてるよ」と言われた。


私はアイリーンに目配せをして頷くと、アイリーンが小さな声で「やはり、事は起こりそうよ。パーラメント様、しっかりね」と言われた。


私達はその後話をして、じい様と合流をし、また知り合いに挨拶をしている所で、一人の令嬢から話かけられた。



「あ、あの、すみません、この手紙をミランダ様にと言われて」



震える手で私に手紙を渡すと令嬢は去って行った。


副会長がすっと私の横に立ち、「姉が後を付けています。大丈夫ですわ」と言った。流石シルバーシャドウ。


今日は会長はこの舞踏会には来てないのでノアのファンクラブの子達で高位貴族の子達は会場のあらゆる所に潜み、副会長が取りまとめているらしい。


皆、凄いな。


私が手紙を開けると差出人はリリアさんだった。私にどうしても謝りたいので中庭に一人で来て欲しい、と書いてあった。


私は頷くと、ノアに「言ってくるね」と言った。


ノアは心配そうに私を見るが、私は頷き中庭へむかった。


私が振り返りノアを見ると、ノアは男性に話しかけられ、どこかへ行く所だった。


私が中庭に進むとそこにはお腹の大きなリリアさんがいた。


ここまでどうやって入ったのかな。



「ミランダ様!」



私を見つけるとリリアさんはウルウルと目を潤ませ、目元にハンカチを持って行った。



「私・・・。ミランダ様に謝りたくって・・・。私のせいでアレックスと結婚できなくなって、悪い噂があるパーラメント様と婚約を結ばれたって聞きました。申し訳なくって。でも、今ならまだ婚約も破棄出来ますし。ミランダ様なら他にも良い人いると思いますよ?」


「えっと、初めましてかな?」



私が口を開くとリリアさんはまた目元にハンカチを持っていった。



「私の事が憎いですよね。だから知らないふりをするんでしょう?アレックスの事あんなに愛してたのに、アレックスは私を選んだから。私がアレックスを愛したのがいけなかったんです。でも、アレックスから求められたら私も拒めなくて・・・。自分の気持ちには嘘はつけませんもの。悲しい思いをさせてごめんなさい」


「うん、分かった。お幸せにね」



やっと謝罪をされ、私が話は終わったと中庭を去ろうとすると、リリアさんは慌てて喋り出す。



「アレックスとは学園を卒業したら結婚するんです。愛があれば子爵家よりも平民になっても私が良いっていって。二人の家ももう準備してるんですよ。街でのパーラメント様の噂、聞きました?酷いですよね。あんな人と一緒にならなくちゃいけないなんて可哀そう。我が家の知り合いの子爵家の方がとても優しくて後妻を探していらっしゃるの。パーラメント様よりもミランダ様にはそちらの方が宜しいと思うの」



私はリリアさんに礼をした。



「間に合ってるよ。では、御機嫌よう」



私が去ろうとすると急いで私の手首をつかもうとした。



「待って。まだよ!話は終わってないわ!」



私が体をひねると体勢を崩したリリアさんがこけそうになるので、身体を支える。


ゆっくり体を離し、私は「じゃ」と言って歩き出す。



「ちょっと!待ちなさいよ!」


「自分に嘘はつけない、ね?嘘を纏ってるのは大変だね」



私がそう言うと、リリアさんはまだ何か言ってるが私はアイリーンの側に戻った。



「大丈夫ですの?」



アイリーンが聞いて来る。



「うん、なんか色々言ってたよ、そっちは?」


「そうね、そろそろかしらね」



私達が話していると「キャー!!!」と言う声が聞こえた。



「離しなさいよ!!私を誰だと思ってるのよ!!」



近衛兵に囲まれ国王陛下の前まで連れてこられたのは第三王女だ。


じい様がいつの間にか私の後ろにいる。



「ミランダ、大丈夫か?」


「はい、じい様。私の方は時間稼ぎだけでした。ノアは?」



じい様は顎に手をやり、「今、ちょっと服を直しておる。大丈夫だ、体には誰も触れておらん」と言った。


ほう。



「こら、気を押さえろ。まだだ。もう少し待て」



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