図書室での作戦会議
私とノアとアイリーンは平穏に学園生活をすごしていた。
その合間でも、ノアファンクラブ兼アイリーンの影の部隊になった皆さんは色々動いていたようだ。
私達がいつものように昼食を取っていると、ノアファンクラブ会長のキャサリンさんと、副会長のエリーさんがやって来た。私が二人の名前を呼んだ時に、是非家名ではなく名前の方で読んで欲しい、と言われ、それからはキャサリンさん、エリーさんと呼んでいる。
私の事も普通に名前で呼んで欲しい、何なら爵位が下の家だから呼び捨てでも良いと二人に言ったのに、麗しの勇者ミランダ様が良いと言われ、結局お願いしてミランダさんと呼んで貰っている。
ノアは、二人が私を大事にする事が嬉しいらしく、二人に「ミラを宜しくね」と言ったら、二人は「あーーーざーーーっす!!!」と言い、綺麗なカーテシーをして、キャサリンさんは鼻血を噴いた。
エリーさんは急いでタオルを準備しに走り、私が手当をする為に膝枕をして、鼻血を拭いていると、キャサリンさんが「推しの推しは、いわば最推し。ならばこの状況は天国?ミランダ様は天使?否、神?勇者兼神?最早最強」と、ぶつぶつ言っていたが気にしないでいた。
ノアは「ミラが天使で女神なのは間違いないけど。ミラ、今度僕にも膝枕してね」と言ってちょっと拗ねていた。
鼻血も拭き終わり、キャサリンさんとエリーさんが落ち着いた所で昼休みが終わってしまった。
二人から話があるので、放課後時間が欲しいと言われ私達は放課後図書室に集合となった。
放課後になるとノアが私のクラスにやって来た。
「ミラ。迎えに来たよ」
ノアが言葉を発すると、皆がキャーっと言うが、ノアは気にせずにっこり笑って私の側により手を繋ぎ頭にキスをする。
又、キャーっと言う声が聞こえる。
皆飽きないのかな。凄いな。
私はクラスメイトに挨拶をすると教室を出てノアと図書室にむかった。ノアは私のバッグを持ち機嫌よく歩く。
「バッグだけじゃなくて、ミラも抱きかかえてあげようか?」
「私がノアを抱っこしてあげるよ。最近サブロウ先生から身体強化を習っているから、今度練習させてね」
「うーん。ミラから抱きしめられる魅力的なお誘いだから、断りたくないけど。ミラがどんどん強くなっちゃうね?」
ノアと話していると図書室に付き、図書司書さんと先生に挨拶をする。図書の先生にはすでにキャサリンさんとエリーさんが話をしていて、奥の自習室の使用許可が出ている事を教えて貰った。
自習室を開けると三人はもう来ていて、私達が入ると挨拶をされた。
「私達も今来た所ですわ。早速話をしましょう」
アイリーンがそう言うとノアは椅子を私の横にぺったりと付け、私の横に座った。
近い、と文句を言っても一緒なので何も言わない。
「では、お昼はご迷惑をお掛けしました。お時間がもったいないので早速本題に入ります。この間、アイリーン様からお話を頂いた事をファンクラブの定例会で話をさせて頂きました。そこで早速情報が入りました。皆さんリリアさんを覚えておいでですか?」
アイリーンが頷く。
「ミランダの元婚約者の浮気相手その一でしょう?学園を辞められたのではなかったかしら?」
ノアは私の手を握っていたが、元婚約者と言う言葉でピクリとした。
「そうです、彼女は家の都合で学園を辞めた事になっていますが、ファンクラブナンバー二十三がお腹の大きな彼女を見たそうです。妊娠が原因で辞められたのですね。婚約者がいれば学園でも報告して辞める事は間々ありますが、本人同士が浮気ですので学園にも報告は出来なかったのでしょう。」
アイリーンが私を見る。私は頷く。
「まあ、ここまでは良いのです。ただ、ファンクラブナンバー二十三の話を聞き、ファンクラブナンバー十八、これからは番号だけで話させて頂きます。がリリアさんの周辺を調べたそうです。何故そうしたのかは勘だそうです。十八がリリアさんを調べるとリリアさんは定期的に教会に訪れていたそうです」
キャサリンさんがエリーさんを見るとエリーさんが頷き、この資料を見て下さい、と地図を私達に渡す。
「二十三がリリアさんが見た場所はここ、十八がリリアさんを見た場所がここ、教会がここ、お腹の大きな人が動くには少し不自然です。で、昨日三十六から新しい情報が入りました。一人のシスターとリリアさんはここで会っていたと言うのです」
私は地図を見て驚く。
「これは、噂があった場所だね。酒場にマリアンヌヒゲコさん、それにおタキさん、教会は隣町で新しく作り直す所だね。うん、私のバイト先が中心だよ」
「ええ、まだ憶測ですがノア様の噂にリリアさんが絡んでる可能性は高いかと。リリアさんの御実家は男爵家ですが商店もいくつかお持ちです。噂を流す事も出来ると思います」
キャサリンさんの言葉にアイリーンが頷く。
「成程ね、私もお母様に聞いてみたの。そうしたら高位貴族の集まりのお茶会等では噂は聞かないと言うのよ。パーラメント様とミランダの婚約を高位貴族は皆喜んでいるわ。パーラメント様が高位貴族の令嬢と結婚されると波風が立つようね。優秀ですし、容姿も整っているし、ご実家の力もある、ただし三男でしょう?婿入りや持っている爵位を無理に分けたりするのも皆、困るようね。パーラメント様が幼馴染の子爵家のミランダの家に婿入り。高位貴族にとって一番望ましい結婚よ。でも、平民や男爵家からは噂は広がっているのね。愚かね。そんな事をして何をしたいのかしら」
私の手を撫でながら、ノアも頷く。
「ミラとクズとの婚約はもう破棄されて、クズはその女の子と結婚するんでしょう?じゃあ、わざわざ僕の悪い噂を流す必要はないんじゃないかな?」
エリーさんが頷かれながら口を開いた。
「僭越ながら。もしかするとなんですが、ノア様とミランダ様の婚約を破棄したい者の仕業ではないのでしょうか?」
ノアがピクンっと体を震わす。
「どういう事かしら?」
アイリーンがエリーさんに聞く。
「この噂が立って困るのはノア様です。何故かと言うと、ミランダ様にご迷惑が掛かるからです。そしてもし、ノア様の事をミランダ様が疑い、二人が不和になれば婚約は破棄されます。噂もノア様の色恋に関する事が中心でした。恐れながら、この婚約はノア様が望まれてミランダ様にお願いをされたと聞いております。ミランダ様が望めば婚約は破棄になる可能性もあるのではないのでしょうか?」
ノアがすがる目線で私を見る。私はノアをよしよしと頭を撫でて落ち着かせる。
「あと、ノア様の一部のファンにはノア様の婚約を良しと思っていない者もいます。我々ファンクラブの者では無い者ですね。絶対にノア様の結婚を認めたくない。それが例えノア様が望まれ、女神や天使であったとしても許せないという者が一部います。その者達も噂を広めているようです」
アイリーンは頷き、エリーさんとキャサリンさんを見る。
「皆が同じ気持ちではないのはしょうがないわね。でも、成程ね、参考になるわ」
私はノアをよしよしとしながら、ノアに話しかけた。
「ノア、大丈夫だよ。街の皆にもノアは良い奴ってちゃんと言ったしね。キャサリンさん達のファンクラブの子達も皆ノアを信じてくれてるよ。皆、良い子だね。大丈夫だよ」
「ミラ・・・」
ノアは私にぎゅっと抱き着くとぐりぐり頭をうずめた。ちょっとボディにくる。
ぱんぱんっと私がノアの背中を叩いていると、キャサリンさんとエリーさんがハンカチで目元を拭いていた。
「ミランダ様に私達を認めて頂いて嬉しい限りです。そこで、私達はリリアさんが接触したというシスターを調べてみる事にしましたが、詳細がまだ分かりません」
キャサリンさんが話されると、エリーさんが頷かれ、アイリーンは口元に手を置いた。
「キャサリンさん達が調べてすぐ分からないと言う事は少し厄介ね。パーラメント様、お兄様にお願い出来まして?第三王女様は辺境の修道院にちゃんといらっしゃるか調べて頂くことは出来るかしら?」
「第三王女?見張り付きで送られているはずだよ。王族から籍も抜かれ力はないはずだ」
ノアは私のお腹から顔をあげ私に抱き着いたままアイリーンに答えた。
「ええ。でも念の為。パーラメント様と一番結婚したかったのは第三王女様ですわ。そして婚約破棄を望んでいるかも。破棄になったパーラメント様となら傷者同士結婚出来ると思うかもしれませんわ」
ノアはぶるりと震える。
「わかった、兄上に聞いてみるよ」
私は二人にお礼を言い、危ない事はファンクラブの皆もしないで欲しい事を伝えると、「有難いお言葉、皆に伝えます」と言われた。
アイリーンは、来月の王宮舞踏会が勝負かしら。と言った。




