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とある悲劇の裏側で

 「もしも」なんてことを想像しても仕方ない。

 これはボク自身が選んだ結末なのだから。

 そう思いながらも思い出してしまうのは未練があるからなのだろうか。




 「わたしはエリー。あなたの名前は?」

 そう君に言われたときボクは困ってしまった。

 だってボクには名前なんて無いから。

 物心ついた頃からボクは「スペア」もしくは「忌み子」と呼ばれてきたから。

 だけどそんなことを初対面だった君に言えるわけも無くて。

 押し黙ったままのボクを見て、君は何かを察したようにこう言ったんだ。

 「それじゃあ、あなたの名前はカイル、あなたはカイルね。」

 それから君はボクの手を引いて、

 「いっしょに遊ぼ、カイル。」

 とにっこり笑って言ったんだ。

 その鮮やかな笑顔にボクは恋に落ちたんだ。


 その日からボク達は毎日一緒に遊んだね。

 たった一夏の間だったけど、ボクは生まれて初めて生きることの素晴らしさを感じたんだ。




 あの時のままでいられればどんなに良かったか。

 だけど時はもう戻らない、戻せない。



 ボクの手が初めて血に染まったのはその直後。


 君の最愛の兄を直接手にかけて暗殺したのもボクだ。

 暗殺といっても正義感が強く優秀な彼を妬んだエドワルド・シュライデンと同じく彼を邪魔に思ったシュライデン家の差し金だというのは周知の事実だ。

 周知の事実であってもシュライデン家の地位が強大な事もあり、また確実な証拠と言えるモノもないから未だ誰も裁かれていないのが現状だけど。


 そしてその後もボクの手は血に染まり続けた。

 シュライデン家当主の命に従い昔は裏で、馬鹿息子が女と逃げた後はエドワルド・シュライデンとして表からも裏からも多くシュライデン家の政敵を殺し続けた。


 


 今日、エドワルド・シュライデンとエリザベス・ガントの結婚式が行われた。


 社交界の紅薔薇とよばれるエリザベスに、ガント家の借金を盾にシュライデン家の馬鹿息子が婚姻を迫った。

 困窮しているガント家に断るすべはなかった。

 例え優秀な跡取り息子を殺した家であっても明確な証拠もなしに断る事なんてできなかった。


 君はボクを憎んでいるよね。

ボクのことも、シュライデン家のこともどちらも同じくらい激しく憎んでいる。

 

 君がボクとの結婚から逃げなかったのは実家の事もあるけれど、それ以上にシュライデン家を滅ぼすためでしょう。

 ボクをその手で破滅へと導くためでしょう。


 …それでもボクは嬉しいんだ。

 初恋の君と仮初めとはいえ、決して仲良く出来ないとはいえ、夫婦になることができたんだから。



 …ねえエリー、君は「カイル」のことを覚えているかな?

 覚えていてくれたら嬉しいな。

 ボクという人間が生きていた証だから。


 …ねぇエリー、ごめんね。

 謝って済む話ではないけど、離婚した後は幸せになってね。



 シュライデン家は近々滅びる。

 頭の足りない嫡男が残した数々の家ぐるみで行われた悪事の証拠を、彼を憎むその妻によって突きつけられて滅びる。


 その時にボクもシュライデン家の嫡男、唯一人の跡取り息子として断罪される。

 こんなことで許されるなんてこれっぽっちも思っていないけれど、

これがボクに出来る唯一の償い。

 本物のエドワルド・シュライデンはとっくの昔に馬鹿な女にのぼせ上がって自滅した。

 馬鹿なあいつを唆すのは簡単だった。

今頃どこかで身ぐるみ剥がされて息絶えているだろう。

 双子のボクは身代わりだ。

 身代わりであっても本物よりも多くの血を流してきた。

 もしも地獄が存在するならばボクは迷うことなく地獄行きだろうね。







 ねえエリー、最後にもう1度だけ君の笑顔を見たかったな。

 



 悪名高い侯爵家の放蕩息子として処刑された彼の思いを知る人はいない。

 彼ははじめから「存在していない」のだから。

いろいろ時系列やら文章やらがおかしな事になっている...。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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