進化論からするとこの世界は滅ぶ
「アンナ、ちょっといいか」
衝撃の雪国体験から早3年。
これはトリップ物語ではないので色々と割愛するが、現代日本からよくわからないパラレルワールドにトリップした。
ここは魔法が発展した、いわゆる力任せの脳筋(いや魔法だから脳魔?)だらけの世界である。
なにかあれば魔法で勝負。困ったことがあれば魔法頼り。そんな魔法ごり押しの世界である。
魔力量が少ない人は窓際族に徹する。格差社会な世界である。
考えるな感じろ。そんな世界である。
この世界を知ったとき、あの有名な言葉が浮かんだものだ。
『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。』
わかりみが深い。
特にこの国は強い者が頂点の、言わば野生動物のヒエラルキー。
ヒエラルキーの大半は魔力頼りの野生動物。この国の経済活動を支えているのは数少ない窓際族である。
しかし、その窓際族も窓際族で野生からは抜け出せていないのかもしれない。
「おい、アンナ。聞こえてるか」
聞こえてはいる。答えたくないだけで。
と思いながら、目線を向けてあげる優しいわたし。
「今年も例の勉強会お願いしたいんだけど、どうかな」
「……どうせ拒否できないんでしょ」
「うん。陛下からの勅命」
ここに来て早3年。
いや、やっと3年。長かった3年。
そしてまた長い1年がやってくる。
「ありがとう!アンナのおかげで商売が対等に行えるようになったってお礼の手紙がたくさん届いてるよ!
今年もよろしくね、
簿記の先生!」
そう。わたしはこの国の商人組合でなぜか帳簿のつけ方を教えている。