異世界転移が始まらない
ある日の午後、俺は車に轢かれそうな男の子を助けた
「危ない!」
そうして突き飛ばした男の子は、歩道の方に入り
ドッンッ!!!
俺は車にひかれた
◆◆◆
目を開けるとそこは真っ白な空間だった
(俺は、死んだんじゃないのか?)
「貴方は死んではいません」
いきなり聞こえてきた声に驚く
「いえ、正確に言えば一度死んで生き返りました」
そう言いながら現れたのは綺麗だけでは言い表せない女性だった
「私は女神アレカ、とある世界で主神をやっております」
そんな言葉、普通は信じられないが彼女は本物だと本能が告げている
「生き返った?どういうことですか?」
狼狽える俺に女神様は微笑む
「貴方は車に轢かれ一度死にました。ですが私の願いを叶えていただく為、生き返っていただいたのです」
女神様の願いを叶えられる程の力など俺にはない
「願いごとの内容となんで俺なのかを聞いてもよろしいでしょうか?」
「ええもちろんです」
女神様は語り出す、願いと俺を選んだ理由を
「まず私の願いとは、私が主神を務めている世界を救っていただくことです。その世界では邪悪な魔王が悪さをしていて、人々の平安を脅かしています。その魔王を倒して欲しいのです」
そんな願いに俺は驚く
「俺には魔王を倒す力なんてありません!」
女神様は驚く俺をあやすように優しく語る
「そして貴方を選んだ理由です。魔王を倒す力を貴方は持っていますよ。私の世界で、貴方は勇者だったのですから。貴方は勇者の転生者なのです」
女神はこちらにより、俺の頭に手を乗せる
その瞬間、身体の内から力が溢れ出す
「なっ!これは?」
内から溢れ出す力に俺は驚く
「これが貴方の本来の力です。やってくれますか?勇者よ」
そう尋ねる女神様に俺は答える
「もちろんです!」
そう答えた後、女神様が微笑み視界が暗転した
◆◆◆
目を開くとそこは白い空間だった
「へっ?」
先程、女神様と別れた場所に似ているそこに俺は混乱する
「申し訳ありません、勇者よ」
そうして現れたのは女神様だった
「女神様?何故もう一度ここに呼ばれたのですか?」
女神様は微笑みながら答える
「間違えて海の底に転移させてしまったのです」
その言葉に更に混乱する俺
「えっ?どういうことですか?」
女神様はその言葉に微笑みを引き攣らせた
「私も知らなかったのです。なにせ私の知っている地形と変わってますし、あんな海面は高く無かったのです」
その言葉に俺も口を引攣らせて喋る
「そ、そうですか。それはしょうがないことですね」
「申し訳ありません、勇者よ。次は大陸の中心部に転移させます」
女神様は申し訳なさそうに謝るので、俺は萎縮してしまう
「いえ!誰にでも失敗はあると思います。次は大丈夫ですよ」
そんな俺に女神様は微笑む
「ありがとうございます、勇者よ。それでは貴方に幸あらんことを」
そうして俺の視界は暗転する
◆◆◆
目を開いたらまた白い空間だった
「なんでだよ!」
叫ぶ俺に女神様は涙目で出てくる
「いやだって、山ができてると思わないじゃないですか」
そんな言い訳をする女神様
「ちゃんと確認してくださいよ」
「うっ!」
女神様は痛いところを突かれたみたいな顔をする
一度女神様は消え、数分後戻ってくる
「確認してきました、次は街の裏通りです」
「わかりました、早く次行きましょう」
また視界が暗転する
◆◆◆
目を開くとやっぱり白かった
「わかってたけどね!」
もう女神はその場にいた
「だって!いくら時間の流れがココとは違うとはいえ、まさか新しい建物が立ってると思わないじゃないですか!」
女神は逆ギレして怒鳴り散らす
「次はどこっすか?」
頬を膨らませながら女神は答える
「もういいです、魔王城の前に転移させます」
そうして視界がが暗転する
◆◆◆
目を開くとそこは異世界だった
「やっと成功か!」
そして目の前の城を見る
「これが魔王の城!」
そうして見上げた城はほぼ半壊していた
「ん?」
一人首を傾げる俺の前を一人の男が通り過ぎた
「あの!ちょっとすいません」
男は振り向く
「なんだい?」
その男に俺は城が半壊の理由を聞く
「ここって魔王の城ですよね?なんでこんなボロボロなんですか?」
男は心底不思議そうに答える
「魔王の城?何言ってんだ兄ちゃん、魔王がいたのなんてどんぐらい昔だと思ってんだ?」
そう答える男にお礼を言い女神の言葉を思い出す
「だって!いくら時間の流れがココとは違うとはいえ、まさか新しい建物が立ってると思わないじゃないですか! 」
「あんのクソ女神!」
そんな絶叫が城の前で響いた