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転生したら俺が最強だったのに妹ばかりが権力を握ってしまうのだが  作者: 混凝土
第1章 スレイフィール王国編
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3話 狂描族

 

狂描族(ビーストキャット)D区、村長のガウラと申します。貴方様方の訪問を歓迎いたします。」


「ご、ご丁寧にどうも。私たちの方こそ、村長自らのご挨拶恐悦至極にございます。」


「ぷっ…」


 なんか村長さんがあんまり丁寧なんで、俺までつられてしまった。なんだよ「恐悦至極にございます」って…

 あとおかしいのは分かるが生稀(ふき)も笑うんじゃねぇよ!

 まぁそれはさておき、ビーストってどことなく物騒な感じだな。俺たちへの対応から見ると、脳筋な感じは一切無いが。


「よろしければお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「あ、失礼しました。俺は黒霧颯真(くろぎりそうま)です。それでこっちが…」


「妹の生稀。」


「ソウマ様にフキ様…でございますね。貴方様方のお世話は私の孫であるフゥがいたしますので、なんなりとお申し付けください。」


「フ、フゥです。よろしくお願いします。」


 今までガウラの後ろに隠れていた女の子が恐る恐るといった感じで挨拶をしてくる。

 いやちょっと待って!?なんで村に泊めてもらうだけでこんな可愛い娘をつけてくれるんだ?怪しすぎるだろ??


「よろしくね…!フゥ。」


「は、はい。」


 そんな俺の思いになど一切気づかない生稀はもう自分の世界でフゥをモフモフしている。


「ほほ…どうやら気に入ってもらえたようですな。それでは明日の朝になりましたら食事をお持ちしますので、それまでどうぞごゆっくり。」


「いや、ちょっ…待っ……」


 言いたいことだけ言ってガウラはスタスタと去って行ってしまった。


「ねぇあにぃ?家に入ろうよ??」


「はぁ…とりあえずそうするか。」


 そのまま俺達は家に入る。俺はさっき掛けていたソファーに腰掛けた。生稀はと言うと、なにやらフゥと会話しているようだ。

 俺はフゥに着替えが無いか聞く。さすがにこんな血まみれの服でいるわけにもいかないしな。フゥには怪訝な表情をされたが奥から狂描族の服装を持ってきてくれた。

 その服は基本は毛皮で出来ており、どことなく質素な感じだがこれが結構暖かく着心地も良い。ついでなんで生稀の分も用意してもらった。生稀は「このままでいい。」と俺に抗議してきたが一日中歩いたわけだし、流石に着替えさせた。最初こそ嫌々だったものの、途中から生稀の異世界センサーに引っかかったらしく、嬉しそうに着ていた。

 着替えた俺たちはフゥが持ってきてくれたパンを囓りながら思い思いにのことをしていた。ちなみにそのパンは日本人としてはお世辞にもおいしいとは言い難かったが、お金を出した訳でも無いのだし文句は言うまい。


 俺は二つあるベッドの内の一つに寝転び、先延ばしにしてきた疑問について思案する。

 今日一日で生まれた疑問は計り知れない。そこで俺はまずそれぞれの優先順位をつけてみる。

 まず最も重要な疑問は、此処がどこなのか?ということだと思う。まず間違いなく日本じゃないだろう。じゃなきゃ盗賊なんて居るわけもない。だとすると、生稀の言うとおり、これは転生か転移のいずれかなのだろう。まぁこの際転生か転移のどちらかなどどうでも良い。

 …いや結構重要かも知れないが………まぁいいだろう。

 とはいえ、そんなこと本当に起こりえるのだろうか?

 もしかしたら、今寝て次に起きたらいつもの平和な朝が!!みたいな可能性も…


 いや…ないか。今のこの疲れも盗賊と闘ったときの痛みも、明らかに夢のそれとは違う。

 …しかしだ。だとすればどうして俺は胸を貫かれても死ななかったのだろうか?

 これは二つ目に重要な疑問だと思う。あのときの異常な身体能力、そして異常な心境。あのときの俺は自分が自分じゃないみたいだった。どういうわけか、人を殺す事への葛藤などおろか、楽しささえ感じる始末だった。正直今でも罪悪感はそう感じていない。これはおかしいことだ。例え相手がどれほどの極悪人でも殺す事への躊躇いはあるはずだが…

 その点については生稀もそうだ。例え()()()()でも、人が死ぬ場面に出くわせば卒倒して然るべきだと思うのだが。

 これらのことも夢であるならば説明が付くが、夢だとしてしまうと今度は痛みや疲れに説明が付かなくなる。

 ふむ。これがジレンマという奴か。面倒くさいもんだ。

 普通に考えたら痛みや疲れを考えから外してでも、夢と考える方が現実的ではあるが…

 まぁ、あんまり考えてもどうしようもないか。もし仮に夢ならその内覚めるだろうし。

 …ないだろうが。

 俺はその辺りで思考を止める。この村の対応にも疑問があるが、正直もう眠くて仕方なかった。


 生稀は未だにフゥといろいろ会話しているようだ。まったく…あの体力には恐れ入る。


「なぁ。フゥ?俺はもう寝るから。ありがとうな。生稀もおやすみ。」


 最初はフゥに対して敬語を使っていた俺だったが、どういうわけか恐れ多いと却下された。生稀は初めからタメ口だったみたいだが。


「は、はい。かしこまりました…」


 そう言ったフゥは赤い顔をしながら俺の方へやってきて…





 おもむろに俺の唇を奪いに来る。


「!?~~っ!!?」


 俺は突然の出来事に狼狽する。っていうか俺のファースキッスがこんな幼い娘相手とか大丈夫か!?

 そんな俺の気など知らず、生稀は生稀で「あにぃはロリコン…?」とか言ってやがるし!ちょっと黙ってくれる!?


 そのまま俺の服を剥がそうとするフゥの手を止め、俺は叫ぶ。


「ちょっ!?フゥ!!?何してんの!!??」


 その俺の大声に驚いたフゥは本物の猫のように飛び上がって部屋の隅まで移動した。


「よ、…夜のご奉仕を…」


 フゥは聞こえるか聞こえないかのか細い声で呟く。しかも涙目になってしまった。

 そんなフゥに生稀が近寄り、更に聞き進める。


「どうして…?」


「ソウマ様が寝ると仰いましたので…」


 えぇー…《寝る=行為》と判断したと?どうしてそんな飛躍した考えになるんだ?

 それにそういう判断になっても、黙って従う必要も無いだろうに。

 自分で言うのも何だが、俺結構顔は悪いぞ?下の下とは言わずとも下の上くらいじゃ無いだろうか?そん他奴を相手とか絶対嫌だと思うんだが………なんか自分で自分が悲しくなってきたな。


「それはフゥの勘違い。童貞のあにぃにそんな要求する気概は無い。あるならとっくに卒業してる。」


 はいはいどうせ俺は臆病者ですよ…!なんだってそんなこと妹に言われなくちゃならんのだ。


「ま、まぁ生稀の言うとおり勘違いだぞ?単純に帰ってくれて構わないって意味だったんだからさ。」


 俺も今度は優しい優しい声で言ってやる。さっきはびっくりしたせいで大声になったが、別に俺自身怒ってるわけでも無い。寧ろフゥは可愛いしな。ちょっと年齢的に抱くのはアウトだが。うん?異世界なら年齢とか関係ないんじゃね?

 ってなんか本物のロリコンみたいじゃん。あんまり深堀りしないことにしよう。


「い、いえ。ソウマ様にフキ様を置いて帰るなんて出来ません。どうか私をここに置いておいてください…!」


 さっきの赤い顔はもう見る影も無く、今度は必死な表情へと移っている。


「そうは言ってもなぁ…フゥだって不安じゃないのか?こんな今日来た得体の知れない奴らと一緒なんて。」


「生稀の得体は知れてるから怪しいのはあにぃだけ。」


 生稀が何か言ってるが気にしない。いちいち反応していたら話も進まないのだ。


「と、とんでもございません。そうしないと…」


 何か最後の方は聞き取れなかったが食い下がってきていることは分かった。

 ううむ。フゥはわりと頑固なのか?


「それだとフゥは生稀と一緒に寝るけど良いか?」


「そ、そんな!私なんて床で結構ですからお気にせず…」


 いや待て!?床で寝るとかお前は奴隷か何かかっての??こんな小さな娘を床で寝させて俺たちだけベッドとか目覚め悪すぎだろう?


「ん。生稀と寝る。」


 生稀は生稀で、さも当然のごとく了承している。というかあいつはモフリながら寝る気なんだろうな。


「で、ですが…」


「駄目。生稀と寝るの。」


 そう言いながら生稀はもう一つのベッドへとフゥを連れて行く。俺はフゥが恐る恐る生稀の隣に入るのを確認し、今までどうにか堪えていた眠気に身を任せる。

 それから意識を手放すのに全く時間はかからなかった。

なんだかんだ主人公の名前が本文に登場するのって初めてですね…

これは構成が悪い証拠なんでしょうか…?

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