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プロローグ

語彙力乏しいマンなので誤字や間違った表現があったりしたら教えていただけると助かります…

 

 さて、この状況をどう理解すれば良いのだろうか?

 俺の前には愉悦に浸った表情を俺に向ける小綺麗な男。そして俺達の周りを三百六十度・上下十段に渡る観客席が覆い尽くし、そこからは目の前の男に対する歓声(主に女性だが)がこれでもかと言うほどに投げかけられている。

 それに対し、俺の扱いがまるで空気なのは言うまでもない。

 いや…空気は言い過ぎた。俺のことを応援している人物も確かにいるのだ。

 観客席からではなく、舞台の端。俺に向けて無言で微笑んでいる悪魔。

 もとい妹が。


 さて、理解できただろうか?要するに俺は今、現代日本には絶対に存在しないはずの闘技場と呼ばれる場所に居るわけだ。俺は辺りから僅かに漂う生臭い鉄の臭いを感じながら空を仰ぐ。


「どうしてこうなった………」


 そんな自分でもありきたりだと思う一言をぽつりと呟き、こうなった経緯を思い起こすのだった。



 ■ ■ ■



 朝。俺はいつものように起床する。

 …はずだった。俺は目の前の光景に困惑する。なんと!周りには立派な大森林が!!


「ってんな訳あるかぁ!!?」


 そんなことを一人で騒いでいると俺の後ろから誰かが俺の首を腕で挟む形で抱きついてくる。


「…………」


 俺は黙って振り向く。そこに居るのは見慣れた顔。正真正銘俺の妹、生稀(ふき)である。


「あにぃ。やっと起きた。折角可愛い妹が目覚め一番に抱きついてあげてるのに無言はひどい。」


 抱きついたままぽつりぽつりと俺に抗議してくる生稀。そんな生稀は抗議こそすれいつも通りの表情だった。それに対し俺は困惑を極めていた。何故って?さっき生稀に抱きつかれたときの感覚・暖かさが、ここが夢の中ではないことを表していることに気がついてしまったからだ。未だに俺に抱きついている生稀の手をどけながら落ち着き払った生稀に聞いてみる。


「なぁ…此処ってどこなんだ?」


「……あにぃ。生稀のこと完全に無視して勝手に話変えないで欲しい。」


 俺から離れた生稀は頬袋を作ってみせる。だがそれも実際はどうでも良いのかすぐに表情を戻して応えてくれる。


「此処がどこかなんて生稀にも分かるわけない。」


 ですよねー。じゃあどうしてこんなに落ち着いていつのかって話だが、生稀なんだから仕方ない。俺の妹はこういうやつなのだ。


「それよりも。」


「ん…どうした?」


「あにぃの服どろどろでボロボロ。何してたの?」


 生稀は小首を傾げながら不思議そうに俺を見つめている。そう言われ俺も自分の服を見ると確かにひどい有様だった。泥やら水やらで赤黒く汚れている。とはいえ今そんなことを気にしている余裕は無い。それよりも大切なのは…


「あにぃ?これからどうするの??」


 そう!そこなのだ!!というか見事に考えが被ってるな。

 …とはいえこんな状況じゃそれ以外考えることもないか。


「うーん。そうだなぁ…」


 そう呟きながら見るときらきらした目で楽しそうな様子の生稀の姿。ちょっと生稀さん!?どうしてそんなに楽しそうなんですかね?そんな俺の心中に気づいたのか生稀がぽつりぽつりと呟く。


「これ絶対転生か転移。ふふ…まるでラノベかゲームみたい…」


 語気は相変わらず平坦で抑揚がまるでないが普段では考えられないほど楽しそうだ。いかん。妹に変なスイッチが入ってる気がする。とはいえそんなこと十三年一緒に生活した俺にとっては今更だ。こんな状況でも相変わらずなのはびっくりだが。……なんてことを考えてられる俺も異常なのかもな。普通なら現実逃避しても良いのかも知れない。


「あにぃ?」


「ん?いや…何でもない。とりあえず移動するか?ずっとここに居ても仕方ないし。」


「ん。そうする。」


 そう言うとすぐひょこひょこと歩き始める生稀。どっちに行くか決めなくて良いのかとも思ったがどうせ勘に頼るほかないのだ。ならばどっちに行こうと一緒だと割り切り、俺は相変わらず楽しそうな生稀の後を追うのだった。



 ■ ■ ■



 それからどの程度歩いたのか…そんなこと考えたくもなかった。とりあえず生まれて初めて一日の間にこれほど歩いたとだけ言っておこう。

 もちろん生稀はとっくの前に脱落してしまい今は俺が背負っている。生稀が小さくて軽いとはいえ正直地獄である。しかも気持ちよさそうに寝てる始末だ。くそ!俺だって寝たいのに!!

 ちなみに歩きに歩き続け一応最初の森は抜けたらしく、申し訳程度に舗装された道をたどっている。このまま進めばまず間違いなく街か村に行けるとは思うのだが如何せん距離が分からない。明らかに太陽も傾き始めている。これでは最悪野宿になりそうな勢いで、俺はより憂鬱になっていた。

 そのせいだろう。何も考えずに前からやってきた馬車に声を掛けてしまったのは。


「おうおう?なんだ兄ちゃん?盗賊に声をかけるたぁそんなに死にたいのか?」


 中から厳つい男達が数名出てくる。よくよく見れば御者も完全に盗賊のなりをしていた。


「あにぃ。盗賊だよ。この人達盗賊だよ。」


 俺の顔の横からいつも間にか起きた生稀が顔を出し、嬉しそうな声をあげる。

 今まで俺の背中にいた生稀が見えてなかった盗賊は、その姿を確認すると下卑た笑みを浮かべてくる。

 明らかに危険な様子の盗賊と、これまた違う意味で危険な様子の生稀に挟まれた俺は、これから起こるであろう事態を思い浮かべ、一人静かに涙をこぼす。…がそれに気づいてくれる者は誰も居なかった。

基本は一週間に一話投稿。最悪でも二週間に一度は投稿きるよう頑張ります。

一話の長さは追々調節できたらなぁと思います…


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