第一章「故―ユエ―」 2
≪姫神side≫
「帝は一体いつになったら来るんだよ!!」
あぁ、妹思いの兄はほぼ毎日同じことを言ってる。
妹思い?? 違うなぁ。
ただのシスコンかロリコンだって姫は思うよ。
「お兄ちゃん、何度も言うけど帝って誰なの?」
今年の春位にパパもママも
『クリスマスまでに帝の人が迎えに来る』
って言ってるの。
でもそれ以外何も言わない。
帝が誰なのか、どんな性格なのか分からない。
だけどずっと昔仲良かったって言われた。
でも姫、今9歳だよ?
昔って言ってもたった9年の内の昔ってたかが知れてない?
仲良かった人忘れるほど歳とって無いよ・・。
***
月日がたち今日はクリスマス。
言うまでもなく帝っていう人、来なかった。
でも、そんな事どうでもいい!!
今日はクリスマスだもん。
ママとパパと遊びに行くのー!!
「姫神〜! おもちゃ屋さん行くよー。」
ママの声!!
姫はママに向かって走り出す。
「姫野は一体何が欲しいんだ?」
パパが笑顔で聞いてくる。
何?何にしよう!!
おもちゃ屋さんって元気が出るんだ。
*
さんざん選んだ挙句おおきい熊のぬいぐるみにした。
一緒に寝るんだ〜♪
「じゃぁ次はケーキ会に行こう。そのぬいぐるみ車に置いておこうな」
パパがぬいぐるみを持って行こうとする。
「嫌だー!!!」
姫、この子離さないから!!
ずっと持ってるもん。
「嫌だってなぁ・・・お前」
パパは呆れ気味に言う。
だけどママは味方についてくれた。
「いいじゃない。あたしが姫神と一緒に居るわ。あそこの公園で」
指をさした方を見るとそこには少し大きな公園があった。
雪が降ってきてカップルも帰り始めているので少ない。
それほど減ってはいないが公園でいいからぬいぐるみから離れたくなかった。
だから
「そうしよう!! パパ、サンタさんのってる奴がいい!!」
「・・・しょーがねぇなぁ。」
「やった!! パパありがとう〜」
そのあと公園でママがココアを買ってくれた。
あったかくて甘くておいしかった。
姫がココア熱すぎて飲めないって言ってたらママが
「ちょ、ちょっとお母さんお手洗い行ってくるね」
「? ママ、手汚れたの??」
「・・・うん。そうなの」
「ふ〜ん。分かった!」
そう言ってママは走って行った。
ママ、そんなに手洗いたかったのかな・・・。
ふーっとココアを冷ます。
ちょっと舐めてみるけど、やっぱり熱い。
はぁーと冷たくなった手に息で温めて
なんとなく空を見た。
月。
あ、満月かな?
少しかけてる?
「今日満月なんだよぉ〜」
どこかのカップルの彼女の方の声。
今日、満月なんだ・・・。
結構の間見ていた所為でココアは丁度よく冷めた。
少し暖かいココアを飲み干し、自販機の近くのゴミ箱に
缶を捨てに行く。
すると、
「あ。」
目があった瞬間思わず思ってしまった。
この人だ。